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試作3

 今回で作風が元に戻ります。多分……

 不死者の発見から始まった今回の事件は、片付きだした頃に現れたオセーンの神官達によって掻き回されました。正直、嫌いなタイプの人達ですが、権力を持っているので逆らえません。……ゾンビにでもしてやりたい。


「レオン、早く支度をしなさい。村に行きますよ。」


「私は、責任者なので動けません。(俺は、お前の子守じゃない!)」


「……勘違いをしないで頂きたい。私達は、神殿の命令で動いているんですよ? 意味がわかりますね。」


「私は、神官では有りませんからね。そんな理由では動けないんですよ。(後、邪魔だからその辺で大人しくしてくれ!)」


 神殿の勇者様が、俺に道案内をさせたがって困る。 この本陣から、見えている村まで行くのに迷うなら、お前は一人旅をしない方が良いよ。睨んでくる神官達も迫力に欠けるな。エイミが、怒った時の方が迫力が有るぞ。最近は、拗ねると呪いを掛けてくるから、困っているんだけどさ。


 そんな事を考えながら、セルジ達の相手をしていると、


「……助けて下さい。」


「なんだ、リュウ?」


 思い詰めたリュウが、顔を蒼白にして俺の前で膝をついて頭を地面につけた。土下座ですか!!


「お願いです。助けて下さい! レオンさんなら助けられるんでしょう? 皆が、言ってました『最強』だって……だから、助けて下さい……」


 なんて勘違いをしてるんだ! それから、この場合は強さなんて関係ない。リュウの家族は、既に不死者だから問題外としても、他は出来る限りの事はしたんだぞ。


「助けたじゃないか? 不死者以外なら保護をさせているしな。」


「……その後の事です。俺は助かっても、村の皆が異端者認定をされたら、生きていけないんです! だからお願いします!」


 まあ、確かに生きてはいけないな……このままなら、議会制を目指した連中として、王妃様に消される。 領主も税を納め無いばかりか、金を要求した村なんか助けないだろうしな。本当は、社会的に死んで貰ってから引き取る積もりだったけど……


「俺では助けられない。だけどな……王妃様には、話だけはしてやる。」


「そ、そんな! それだけですか。」


 顔を上げたリュウは、落胆していた。


「ただ、ここからはお前次第だよ。お前が手柄立てて、国に忠誠を誓うなら、王妃様も悪い様にはしないさ。」


 多分な。……あの人は笑いながら裁きそうだけど……頼んでみるかな。


「バッシポを倒せば良いんですね?」


「違う! 邪魔をしないで協力すれば良い。それだけで良いんだよ。もう勝つ事が決まってるんだからな。」


「どう言う事ですか?」


 立ち上がって、弓を取り出したリュウが訊ねてくる。


「知らないのか? 不死者ってのは昔から出てるんだよ。だから対策も有るんだけどさ。……もう、対処になるんだけど、火を使って焼くんだよ。囲んで逃がさない様にしてるんだから、後はひたすら数で攻めれば良い。弓矢や魔法で遠距離から袋叩きにするんだ。」


「……わかりました。」


 納得した顔をしていないリュウを見ながら、エンテに声をかけた。村からは、バッシポが現れて本性を現している。叫びながら腕が伸び、耳がでかくなる。毛むくじゃらの身体には神官服が食い込んで、こんな状況じゃなければ笑えていただろうに……


「コウモリか……思っていたよりもでかいけど、大丈夫かな。エンテ!」


「はい?」


「勇者様方を護衛して村に行け。ここは大丈夫そうだからな。」







 本陣から護衛達が居なくなる中で、俺は少し離れた人の居ない場所まで歩いた。バッシポを囲んだギルドメンバーは、精鋭だから心配も無い。離れた俺の所までバッシポの悲鳴が聞こえて来ている。


「……こんな所が、妥当だろ神官さん?」


 木々が生い茂る場所から気配なく現われたのは、セルジの護衛の一人だった。能力の『才能発見』が無かったら気付かなかったよ。……でかい組織には居るんだよね『化け物』ってさ。


「レオン様は、話が早くて助かりますよ。セルジやその他の糞ガキ共ときたら……」


 神官服を着た冴えない男は、笑いながら近寄ってくる。暗殺に特化した化け物みたいな奴に、近寄られたくないんだけどな。髪は少し整えた程度で、神官服も着崩しているその神官は、俺の間合いには入って来なかった。


「手柄を分ければ良いんだよな? その為にわざわざオセーンから来たんだろう。……バッシポは『魔王』だったんだな。」


 少しも表情が動かない神官は、両手を上げて降参だと言った様なポーズをした。時々、戦闘での魔法の爆発音や怒声が聞こえて来るこの場には、不釣合いに感じる。


「流石に気付きますよね。こちらも事情が有るんですよ。……大きな組織は維持するのも楽じゃない。あなたなら理解出来ますよね?」


「どうかな? 気付いたのも今だしさ……お前自身の目的もわかってない。俺を殺すつもりなら、今が好機なんだが?」


 腰のベルトに装備してある短剣に手を掛けると、


「冗談でしょう! あなたに手を出す訳にはいきませんよ! 姿を晒したら勝てそうもない。」


 なら姿を隠していたら殺せるのか? とは聞けなかった。


「……大きな組織は維持するのも楽じゃない。それは、でかい木の下で悪さをする連中が多いって話ですよ。今回の事件はこちらに責任が有りますしね。……神官長とその取り巻きの方々は、少々やり過ぎました。」


 神殿の内部調査でもしているのか? ハースレイを調べ上げろ、と言いたいな。


「神官長までなった人材を消すのかい? それで、俺に納得しろって言うのか?」


「心苦しいのですが、その通りですね。最近は自分の地位以上の物を求める神官が多くて困りますよ。……この都市の神官長の財産はお譲りします。元々、私の物でも有りませんしね。人材について言わせて貰えば、あの程度の無能は幾らでも替えが居ます。」


 今回の神殿の対応は、あの女性神官長の独断だと言いたいんだろうか? その為に派遣されたのが『暗殺者』って訳か……怖いよね。財産については……今回の件で、ギルドには無理をさせたから、その穴埋めになると良いな!

 それにしても、何の行動について無能と判断したのか気になるな。それ以上に、そんな奴を神官長になんかするなよ。


「俺が納得しても、遅いと思うけどね。話はそれだけかな?」


「……今回の件で、神殿の総本山も内部の引き締めに入ります。それから、オセーン帝国へ領内の魔物討伐を、進言する事になるので……出来ればご協力を、と言う話が有りますね。」


「かなりの数が、アルトリアにも流れて来ているからな。そんなに酷いのか?」


「最悪です! 神殿の神聖騎士団って言う戦闘集団が、音を上げてしまうくらい。」


「俺にどうしろと? そんなもんは国の騎士団でも引き摺りだせよ! お前らが育てた、生意気な勇者を使えばそこそこやれるんだろう。」


「……戦が、長引きましたからね。その分だけ疲弊していたんですよ。レオン様、お願いしますよ。それにセルジ達を生意気にしたのは、上の指示でしてね。……まあ、あの性格の方が、何かと都合が良いんですよ。」


 顔の前で手を合わせ片目を瞑り、憎めない顔でお願いしてくる神官……そんな軽い話じゃ無いだろうが!!それに個人でどうしろと? ギルドに金を払ったら、考えてやるがな。

 それにしても、セルジ達も微妙な立場だな。わざわざあんな性格にさせたって事は、何かしらの理由が有る筈だけど、俺の想像だと碌な理由では無さそうだな。


「因みに、王妃様には大賛成して頂きました。大変喜んで頂けて私も嬉しかったな。……オセーン領を、切り取るお積りの様ですよ。レオン様は、アルトリアの騎士でも有りましたよね?」


「……お前は嫌いだ。」


 逃げ道を塞がれた感じがする。この神官は、敵にしたら厄介な奴だな。……味方でも嫌だけどさ。でも、なんで疲弊した土地なんかを欲しがるんだ?


「……ゼタの村の生き残りについては、俺に任せてくれるんだろうな? ついでに、今回の件は貸しにしておくからな!」


「構いませんよ。直ぐに返せそうですしね。」


「?」






 暗殺専門の神官との話を終える頃には、バッシポの最後の悲鳴と『眩しい光』に包まれた。……セルジの魔法だな。走って本陣に戻ると、破壊された村の広場に横たわるバッシポに兵士達が群がる。命乞いをする声が聞こえる中で、俺は今後の事を考えた。


 リュウとセルジが活躍はしたが、インパクトには欠けるよな? これくらいでは、俺より目立つとも考え難い。この後の後始末なんかに、数週間は掛かると考えて……その後は、結婚の話かな? ……嫌な事を思い出した。


 それに、あの神官の事も考えないとな。無能ばかりが居るわけじゃないと、思ってはいたんだが……あそこまでの化け物が居るなんて考えていなかった。あいつも魔王と戦えるんじゃないだろうか? まあ、だからセルジの護衛なんてしているんだろうけどさ。

 それと、セルジ達が暴走した時の為の始末なんかも、あいつの仕事なのかもしれないな。考えながら空を見ていたら、誰かが駆け寄って来た。


「レオン様! この度の勝利、おめでとうございます! 我々神官も、協力した甲斐が有ったと言うものです。」


 俺に近付いて来た女性神官長が、自分達の功績を強調してくる。その近くで領主が、顔を赤くして睨みつけているのにも気付いているだろうに……まあ、最後なんだし適当に褒めておくかな?


「神官の皆さんの協力のお陰ですよ。」


 その言葉を聞いて、領主に向き直り勝ち誇った顔をしているのを、暗殺者の神官はニコニコと見ていた。……お前は本当に怖いよ。俺の発言に、肩を落とす領主にも教えてやったら、さぞ喜んでこの神官長にお世辞を言って見送るんだろうけどさ。


 その後は、暗殺者の神官の言う通りに居なくなった神官長と取り巻き達……噂では、病気で仕方なく隠居したと適当な噂が流れた。誰が聞いても不自然に感じるし、神官達からの抗議も確かに有ったが、抗議を理由に遠くの辺境に飛ばされていった。……普段からこうしていれば良いのに!






 数週間の片付けを終えて帰る頃には、旅に出てから二ヶ月も経っており、皆が疲れ切っていた。馬車ではゼタの村の住人が、不安になりながら今後の事を考えているだろうし、空元気を出しているリュウなんかは、痛々しくて見ていられない。……帰ったら帰ったで、俺には山積みの書類が、待ち構えている事だろう。


『……俺のメス達は元気にしているかな? 浮気とかしてないかな? どう思うよ『勇者様』?』


 わざとらしく聞いてくる駄馬の言葉にイライラしながら答える。


「少しは空気を読めよ駄馬! 大体、馬に浮気とかあるのかよ?」


 空気を読まずに俺に絡む駄馬の目的は、今回の件で連れて帰る事になった女性の事が原因だ。それを理由に、普段の仕返しがしたいのだろうか? この駄馬が!!


「う、浮気はいけません! 先輩からよく聞いたんです。最後はドロドロだって……ドロドロの内容までは聞いていませんけど、」


 ……神官の『ミーナ』さんだ。抗議に参加はしなかったが、俺の神官派遣要請を覚えていたあの暗殺者が、わざわざそれに応えてくれたのだ。ハースレイへの嫌がらせだったのに……片付けを手伝ってくれた、数少ない神官の一人でも有るから文句は無い。ただ、問題は有る!!!


『……だってよ『勇者様』! しかしアレだよな。散々悩んでいるかと思えば、勢いに任せて手を出すなんて……最低だな。』


「黙ってろ駄馬!!! 俺だって、あの時は疲れてて気付いたら……普段だったら絶対にあんなミスなんかしなかったのに……」


「……羨ましいな。俺にも紹介してくださいよ! 結婚前に酷い事をしているレオンさん!」


 追い討ちをかけてくる駄馬とリュウが憎い! その上、モジモジとしているミーナ……美人だよ! 神官服に隠れていたけど物凄い身体してたんだよ! 金髪のストレートが綺麗な美人の神官さんだよ! だけど……


「俺は、何もしてないからな! この女の勘違いなんだよ! 褒めただけで『告白』って思い込むとか、可笑しいだろうが!」


 遊び惚けた神官だと思い込んで、片付け後の宴会で落ち込んでいたから慰めたらこんな結果に……最近は能力が控えていた感じだから、安心していたのか油断した。気付いたらもう手遅れだったよ。

 真面目な神官で、遊んだりもしない箱入り娘? に近い感じのお嬢さんだからか、異性との接する機会が少なかった様だ。また、仕えていた神殿の神官長が女性で、男性神官はあまり強引な事が出来なかったらしい。


「私、あんなに優しくされたのは、初めてです。『君となら頑張れる』だなんて……」


 その所為か、時々発言が意味深げに聞こえてしまうんだよ。これを聞いたら、周りがなんて想うか考えろ!大体だ! 俺は『皆で頑張ろう』って言ったんだ! 神殿の今回の対応に悩んで、無償で手伝ってくれる今時珍しい神官達だから、酒の席で孤立気味な神官達と交流できればと考えたら……


「……知りませんよレオン様。あの姉妹は、絶対に認めないし、この大事な時期に『浮気』とか……」


 エンテが、訳のわからない事を言っているが無視しよう。今考えなくてはいけない事は、如何にして『他国の姫』との結婚を破談にするか、と言う事だ! 仕事に逃げるのも、問題の先送りにしかならない。

 この際は、ミーナの事は下手に関わらない。それが、正しい選択だと信じよう。何を言っても、俺が愛を囁いている様に聞こえるとか……病気だと思うよ。


「逃げたら駄目なんだ。……立ち向かわないと……でも、逃げないだけでも良いよね?」


 俺の呟きに、駄馬が反応する。


『格好付けてるけどよ……問題が浮気だからな! ウジウジ悩んでないで、全員押し倒す方が格好良いと思うぞ。』


「凄いよツックン! 外道な事をサラッと言っているのに、自信満々で言い切ったから、格好良く聞こえたよ!」


 好き勝手に騒いでいる連中は無視だ! 俺だって、問題が無いなら直ぐにでもそうするさ! だけど、一応は勇者だから、気を付けているんじゃないか……それに結婚とかは、身分違いだと大変なんだぞ!

 しかも相手が、自国の王子の想い人……最悪だとしか思えない。このまま結婚したら魔王が居なくなると同時に怨まれて暗殺されてしまう!


「えっ! レオン様は、結婚をするのに私にあんな事を……」


 世間知らずの神官は黙っていて欲しい。もし喋るなら、最後まで確り喋れよ! 誤解され過ぎて、説明するのが疲れるんだよ。しかも、下手に美人だから、周りが同情して俺の言う事を信じてくれない。


「レオンさん……幾ら何でも最低ですよ。」


 リュウの鋭い一言に涙が出そうになる。俺だって問題さえなければ手を出すさ! 責任も取るよ! だけどその相手が、意思の疎通が出来ないと躊躇うだろうが!


「何でだよ! 最低な駄馬が高評価で、俺が最低な扱いを受けなきゃならないんだよ!」


 早く帰って対策を練らなくては……




 その城は、まるで長い時を使う者が居なかったかの様な感じを受ける。辺りは曇りで、部屋には蝋燭の光だけが頼りだ。

 その薄暗い部屋の主人は、蝋燭に照らされた書類を見ていた。


「バッシポが、失敗するとは計算外だったよ。」


 その部屋の影から、出て来る女性に向けて、放たれた言葉は返ってこない。ただ、無言で頷くだけだ。


「……少しは喋れよ。何でこいつは、変な拘りなんかに目覚めたんだ? それよりも、これでこちらは2体の魔王が脱落したな。」


 書類に興味を無くしたのか、投げ捨てると書類が空中で炎に包まれ、床に落ちる事はなかった。


「まだ始まったばかりだし、慌てる必要も無いが……その前に!」


 立ち上がった部屋の主人は、割れた窓から吹いてくる風に苛立ち、埃だらけの自分の部屋が気に入らなかった。


「掃除と修繕が先だな。」


 その言葉に頷ずいた女性は、道具を取りに部屋を出て行った。その部屋には主人が1人で掃除を開始しだした。本棚の埃と格闘しながら部屋の主人は呟く、





「待って居ろよ……レオン・アーキス! あ、マスクしないと……」

 後半で無理矢理に、黒幕を登場させてみました。

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