イベントフラグは、向こうからやって来る。
少し書き方を変えてみました。こんな駄文に日間ランキング1位を取らせて頂いて、本当に有難う御座います!
5/6 少し訂正しました。
魔王の進攻の為、砦に俺の住んでいる村から兵士やギルドメンバーを引き連れて向かった俺は、今は砦の門の前で貴族と神官のやり取りを見ていた。大変な時に何をしているのか、と俺でも思うんだが・・・・・・
これは酷い! この世界は、回復魔法は聖属性に属している。だから戦争でも、聖属性を持っている者は重要に扱われるんだ。しかし! 聖属性は神官になる必須条件の一つとされているから・・・・・・そんな才能を持って産まれれば当然のごとく、その道を進められる訳で、
戦場でも活躍している神官を、見かけるのは当たり前と言って良いんだが問題はそこでは無く、
「増援や派遣できる神官が一人もいない? 可笑しいでしょ! 魔王討伐の為に、どれだけ神殿が無理を言ってきたか、お忘れでは無いでしょうな!」
砦での門では、身なりの良い騎士が数名の女性神官と、その護衛だろうか? 白い鎧を装備した男達と険悪な雰囲気を出している。
「そのように言われましても、派遣できる者が居ないのですから仕方ないかと・・・・・・」
丁寧に受け答えている女性神官だが、その後ろの神殿側の連中は、明らかに馬鹿にした顔をしていた。ニヤニヤと笑って対応すれば、相手がどう思うかなどわかりきっている。
「また、お前等の派閥争いで我々だけに血を流させるのか! いい加減にしろ!」
また? ああ、長い歴史があれば、その分だけ黒い話もたくさん有るよな。
「どうやら、勇者様のご到着みたいですね。我々はここで帰るとしましょうか。」
俺を見て、帰る連中がお辞儀をして去って行く・・・・・・俺を、睨んでいた奴もいたから恨んでいる連中だろうか? そうしていたら、先程の身なりの良い騎士が、近付いてきて挨拶をしてくる。
「大変お見苦しい所を、お見せした様で・・・・・・しかし、短期間でよくこれだけの人数を揃えられましたな! 流石は勇者様、ですかな?」
ここで訂正しておく事が有る。俺は、騎士としての地位が上がっていない。だからこの状況を説明すると、会社の部長や課長が平社員を会社前でお出迎え・・・・・・可笑しいよな。
「準備はしていましたからね・・・・・・神官は期待できませんね。」
「騎士の中で、聖属性を使える者達は少数ですからな。期待していただけに、困り果てております。」
仕事しろよ神官! ただでさえ少ない信用が更に急降下とか笑えないだろう。まあ、いない者には頼れないから他の手段を探すかね。
「ギルドメンバーで、聖属性を使える者が数名います。少ないですが、治療専門の者達ですからお役に立てるかと、」
その治療専門の連中を手招きして、身なりの良い騎士に紹介し、俺は他の連中と共に砦の門を潜った。喜んでいた身なりの良い騎士が、これ以上に勘違いをさせない為だ。・・・・・・幾ら何でも、本人が居なければ勘違いを誘発する『魅力』の能力は働かないだろう。
俺は、今まで流され過ぎていたと思うんだ! これからは重要な場面では、出ない、口を出さない、前に出ない、を実践するべきだ! イベントを起こさない様に、裏方に回れば良いんだ。
村を発展させた時に気付いた。俺が、頑張っていたらいけない! その行動を見ていた連中は、見事に勘違いをして俺を領主として扱っているのが証拠だ! これからの方針は、
『人の後ろで、こっそりと支援する!』
これに決めた!
バーンズ・オルセス
わしは、続々とこの砦に集まる増援の騎士や兵士達の責任者達との軍議をおこなっている。だが、軍議は難航していた。問題は、誰が全体の指揮を採るかと言う事なのだが・・・・・・この戦いは、歴史に残るであろう戦いだからか騎士団の連中が指揮権を主張しておる。
今、この砦には二つの騎士団が王都から増援として送られて来ている。それだけなら、わしが裏からでも手を回して黙らせる事が出来た。・・・・・・問題はアステア王国の騎士団の連中だ! ハッキリ言って迷惑な連中だ。わしの時代では、敵同士だったのだぞ・・・・・・それを増援として受け入れた雌狐め! 一体、何の取引をした?
「アルトリアの騎士の命令などに従えと言うのか? 我々はアステア最強の『赤竜騎士団』なのだぞ!」
まだ若い騎士団長が、赤で統一された鎧に身を包み、顔まで赤くして吠えておる。
「そちらからの書類には、指揮権はこちらにと書いてあるが? 嫌ならば、国に帰ると良いぞ。アルトリアは貴様等など必要とはせん!」
やれやれ、こちら側の若い騎士達も血の気が多い事だな。こんな所で争っても仕方がないが、多少言い争えば気持ちも落ち着くかもしれんが・・・・・・
「バーンズ様、レオン様が到着なさいました。今、使いの者を出して、こちらにお呼び致しました。」
わしの部下が、気を効かせてくれた。この部屋で騒いでいた連中も、レオン殿の名前を出されれば大人しくなるだろう。
「勇者様の登場ですか・・・・・・ゴブリン相手だと巣穴から出て来る様ですね。」
一人の、この場で特に若い赤竜騎士の一言が引き金となり、アルトリアの騎士団の連中が殺気立った。その殺気を受けて尚、笑みを崩さないだけの実力は有りそうだが・・・・・・長生きは、できんタイプの騎士だな。
「口を出すなと言った筈だぞ『テオ』! 貴様は今回だけ特別に同行を許された事を忘れたのか!」
先程のテオ? ま、まさか『テオ・ルセルド』を連れて来たのか!
「貴様等アステアは、アルトリアを滅ぼす気か! この大事に『味方殺し』を連れてくるとは、すぐに国に連れて帰れ!」
「・・・」
赤竜騎士団の団長が、何かを言い掛けたが口を閉じて、奥歯を噛み締めているのか顔が歪んでおる。しかし、味方殺しまで連れてくる程にアステアは何を焦っている?
「少し黙んなよオッサン、俺はレオンとは喧嘩なんかする気はないんだ。姫様を救って、国に帰れればそれで良いんだよ。」
「っ!」
成程、オセーンに外交で出向いていたという話は聞いていたが、まさか捕まっているとわな。魔王は人質を捕るだけの頭があるという事か、ならば余計にアステアには出て行って貰わんといかんな。
「何か事情がお有りの様だが・・・・・・いかんな。非常に不味い事だ。アステアには我々と協力する積もりは無いらしい。」
わしの言葉に反応した赤竜騎士団の団長は慌て出した。何故に、この様な騎士を送り出したのか理解に苦しむ。人手不足か、切り捨てる目的か、両方か? わし等の立場と同じだな。
「爺さん、あんまり怒らせるなよ? 俺達は助けに来てやってんだ。舐めた態度は後悔する事になるぜ。」
若気の至りか、だがこの場では許す訳には・・・・・・そう考えていたら、この部屋に白い鎧に身を包んだレオン殿が現れた。純白の鎧に赤いマントをしたその姿はまさに英雄・・・・・・いや、勇者だったな。
純白の鎧には控え目に金細工がされ、鎧自体が精巧に作られてはいたが、実戦向きの鎧の様だ。赤いマントには幻獣たる『獅子』が、これまた丁寧に縫われている。
「遅れて申し訳有りません。」
その姿に、この場の全員が驚いていた。勇者が頭を下げ軍議の席で末席に言われる事なく座る。なんとも落ち着いて頼もしい事だ。
「そんな末席で宜しいのですかな?」
少しからかう様に声を掛け、場の雰囲気を和らげ様としたわしの発言に
「私は、戦の経験が有りません。素人が口を挟んで戦の邪魔はしたくないんです。」
流石は勇者、と言った所か、控える所では控える・・・・・・その上でアステアの連中に皮肉まで言うとは、味方として頼もしい限りだ。
「邪魔などと誰も言ってはおりませんが、確かに下手な口出しは邪魔ですな。そうは思いませんかアステアの方々?」
「・・・・・・誰に向かって言ってんだよ糞ジジイ! てめぇもだレオン! 久しぶりの再会で挨拶無しなんて、偉くなったもんだよな!」
味方殺しとレオン殿が知り合いだと! そんな情報は効いた事が無いが・・・・・・レオン殿も少し驚いた後は、落ち着いたのか冷静に対処した。
「・・・・・・誰かは知らないが私はあなたとは初対面の筈だが?」
「気持ち悪りぃ態度してんじゃ「もう止せ!」っ、」
ようやく団長が無礼者を止めたか、だがこれで我々は一緒には戦えない事がハッキリしたな。前線に送り磨り潰すか? それとも送り返して不名誉を背負って貰うか・・・・・・
レオン・アーキス
軍議中に俺は、先程の事を考えていた。あ、なんか勝手に知り合い扱いをしてきた騎士の事じゃなくてね。今、俺が着ているこの純白の鎧の事なんだよ。
ここに来る前に砦に入り、責任者に報告と指示を受け様とした時だ。俺の跡を追って来たセイレーンとラミアが馬に乗り、馬車を引き連れて現われた。急いで来たのか馬が疲れている様だったな。
「ついて来るなと言っただろう。何があった?」
気まずそうな二人は、革製の鎧を着て戦う準備を済ませていたが、緊急の用では無い感じだった。馬車を指差したラミアが、
「父に、二つもお届け物が入れ替わりで来たから・・・・・・届けに来たんです。」
俺の出発後に荷物が届いたから護衛がてらについて来たのか? 怒りにくいな・・・・・・
そう考えていたら、実家の使用人が大きな木箱の荷物を馬車から二つ降ろしていた。一体、何なのかと木箱を開けると、そこには純白の鎧と鍛冶屋に頼んでいた『ハルバード』が入っていた! それと一緒に入っていた手紙には俺の父からは、
『自慢の息子の晴舞台にあわせて武具を用意した。使ってくれるなら嬉しく思う。』
そして母からは、
『無事を祈り皆でマントに、あなたが興味を示していた幻獣『獅子』を縫いました。活躍よりも生還を願っています。』
なんて事をしてくれたんだ!!! こんな手紙を読んで、更に実家の使用人が目を輝かせて見ていたら、この派手な鎧を着なくてはいけないじゃないか! いや、嬉しいよ。でも、俺の目立たないコツコツライフの目的には合わないだろ?
しかも、ハルバードも頑丈に作られているのは良いんだが、地味に装飾までしてある。何処か気品のあるその武器は職人の力作なのかもしれない・・・・・・が! これも目立つよな!
「父、もう一つは神殿のハースレイからです。こっちも武具です。」
セイレーンに、言われてもう一つの木箱を見たら少しだけ実家の使用人が嫌な顔をした。気持ちはわかる、神殿の送ってきた武具を着けて欲しく無いのだろう。
セイレーンが、ハースレイからの手紙を渡してくる。
『こたびの戦の為に、神殿の総本山から『歴代勇者の使用した伝説の武具』をお送りいたします。魔王との戦いに勝利できるよう祈っております。』
「かぶってるんだよダメ神官! 伝説の武具よりも魔法の使える神官を寄越せや!」
そう、言いながら木箱に近付くと実家の使用人が何かを言いたそうにして、セイレーンとラミアは俺から離れた。
「レオン様、その木箱はレオン様の村まで神官様が届けた物をついでに運んだんですが・・・・・・開けますか?」
「一応な、見てみたいってのも有るんだが、何か問題でも有るのか?」
大した事だと思わずに喋りながら勢い良く木箱の蓋を開けて後悔した。
不思議な光沢を放ち、輝く鎧や盾には傷すらなく、剣を納める鞘には豪華な装飾に宝石が使われていた。俺が、見ただけでも普通の武具とは違うとわかる。先程の純白の鎧と比べれば、目立たないかもしれない。
だが、この鎧だけは絶対に使わない! 何故なら、
「ちょっ! く、臭いんだけど! 何なんだよこの臭いは? あ、なんか目にしみてきた。」
鼻を押さえたセイレーンとラミアが離れた所からそれに答えた。鼻声の二人はそれを気にしなかった。いや、それ以上に臭いのが嫌だったのだろう。
「「それを着たら嫌いになります。」」
「領主様がご用意なさった物がお似合いだと思います。」
実家の使用人が目を逸らし、鼻を押さえながら答えてくれた。
え? もしかして二つの内から選ぶの? 二択? 今までの鎧でよくね?
『流石に、そんな臭い鎧で背中に乗られるのは勘弁だな。』
駄馬が発言すると、それに続く様に周りが思った事を言ってくる。
「レオン様は白が似合いますよ!」
「赤いマントなんて最高です!」
「流石にその臭いにはたえら、いえ、敵にばれるかと・・・・・・」
「両親の気持ちには応えてあげるべきです。」
選ぶしかないじゃないか! 腹が立ったから、伝説の武具は実家の使用人に持って帰らせて、
「そんな使えない鎧は、砕いて、溶かしてくれ。」
・・・・・・冗談のつもりだった。だって、神殿が保管していた物だったから返すものだとばかり、俺はその後、とんでもない苦労をする事になるこの発言を後悔する事となる。
そうして現在に至るんだ。目立ちたくないのに!
軍議は俺が来てからは早々に決まり、役割分担・・・・・・配置が決定した。俺とかいらんだろ。発言を求められても大した返答なんかしない俺を、みんなして見てくる。
軍議終了後にルーゲルさんと話したら、立派になったとか、アルゴが頭が・・・・・・とか、少し話しただけだった。そのまま部屋から出ると俺の持ち場に向かう。
砦はここ数年で補強され、増築までされた。俺から見たら要塞にも見える。周りを山に囲まれて、国境には川・・・・・・結構でかくて深い川が流れ、砦の前には昔に造られた頑丈な橋が掛かっている。
大軍が通るには、橋を使った方がいい。橋の破壊も考えられたが、その場合何処を目指すかわからなくなるからと、見送られた。
橋を再建する金が、勿体ないのと交通の要所でもあるから躊躇ったのだろう。それ以上に、魔物共にそれだけの頭が有るのか? そんな事を考えて仕方なかった。
魔王がこの国を目指す理由が有るんだろうか? 俺がその目的なら魔王すら勘違いさせた俺の能力は本当に恐ろしい! そんな冗談を考えていたら持ち場に着いた。
川の向こうには、魔物の大軍が通る時の人とは違う足音が聞こえ、土煙が見えていた。・・・・・・セイレーンとラミアを帰したかったのに、動こうとしないから後方任務をするギルドメンバーの下に無理矢理置いてきた。
橋を目指す魔物の大軍を相手に、その橋の前で迎え撃つのが作戦らしい。突破は避けたいから無理なら橋を破壊する、とバーンズの爺さんが言っていた。
そして俺の配置場所、持ち場は橋を渡らずにその橋の前で突破した敵を倒すのが俺達やギルドメンバーの仕事らしい。動き回って戦うには連携もとれないしちょうど良いのかな?
橋を渡った連中はアステアの騎士団、赤竜なんとかさん達だ。他国の為によく働くな、と思っていたら理由があった。アステアで神託が有ったとかで内容が、
『美しき姫は、魔王の手の中にて眠る。救い出したくば魔王を倒せ』
あの短い事で有名な神託が、ここまで長いとなると重要な事なのだろうか? 『奴』が、楽しむ目的でしたんだと思った俺は捻くれているのかな。
配置に着いた味方を、確認しながら橋を渡った連中を見る。
「潰されるんじゃないか? 無理しないで、皆で戦えないものかね。」
「無理ですよ! あいつらはプライドだけ高い連中何ですから・・・・・・命令を無視して動くなら被害は少ない方が良いって、家の親父が言ってました。」
「ルーゲルさんが? 随分と過激だな。・・・・・・それよりも、なんでアルゴがここに居るんだ?」
いつの間にか隣に来て居たアルゴ、周りを見ていたから気付いてはいたけど、お前の持ち場はここじゃないだろう!
「親父にレオン様の戦い振りを見ておけって、言われたんです! まさか、一緒に戦えるなんて俺、光栄です!」
あ〜あ、アルゴも勘違いしてるよ。俺なんか、こんな規模の戦争した事ないよ。そんな奴が、役に立つわけ無いんだからルーゲルさんの所に居た方が勉強になるのに・・・・・・俺も、教わっておきたいくらいだよ。
味方は数万の規模で、敵はその倍は居ると、報告してきたギルドメンバーを、鍛え直す面子に加えて置く事を考えながら、アルゴに聞いてみた。
「なあアルゴ、味方の正確な数はわかるか?」
聞かれたアルゴは、自信満々に、
「アルトリアの騎士団が五千に、砦の守備兵が増員されて一万二千、後方支援は含みません。アステアは騎士団含めて八千で、レオン様が二百人程を連れて来てくれ・・・・・・」
「わ、わかった! ありがとう、もう良いよ。」
予想以上に、まともな答えが返ってきて驚いたが、敵は五万に近いって、事がわかった。そんなやり取りをしていたら、前方で動きが有った様で橋を渡ったアステアの騎士団が騒いでいた。
その先には、魔物の大軍が整列をして並んでいる異様な光景と、その中から一台の馬車がオークに引かれて俺達、人間の前に引き出された。豪華な作りをした馬車だから神託のお姫様だろうか? そう思い、『遠見の魔法』で確認すると馬車の中に、確かに人が居るのを確認した。
「噂のお姫様ですか? 美人って有名ですけど・・・・・・見えますかレオン様!」
アルゴ、お前も興味が有るのはわかるが、そんなに必死に俺に詰め寄るな! ・・・・・・確かに美人かもしれないが、ここ数週間を囚われて過ごしたお姫様だぞ。あんまり人に、見られたくない状態なのは確かだな。
「ん? 馬車の近くから、馬に乗った・・・・・・鎧を着ている何かが、こっちに来ているな。」
「鎧? 人、じゃないですから、『魔騎士』かも知れませんね!」
何で、嬉しそうなんだよ! 魔騎士って言ったら上級の魔物じゃないか! 人の形をした魔物で、人の使う鎧や武器を好んで使用し、その武器で人を襲う連中だ。知能は高いし、腕も確かな厄介な連中じゃないか!
遠見の魔法から、その魔騎士が前方のアステアの騎士達と何かやり取りをしているのが見て取れた。交渉をしているのか? 魔物と話せる事に違和感を感じないのは『ポチ』を普段から見慣れているからだろう。
「何か話しているな。ここからじゃわから無いが・・・・・・馬の方も魔物みたいだな。角が着いてる。」
「ユニコーンは聖獣ですから、魔物となると『ナイトメア』ですかね。」
『おい、二人とも・・・・・・それは本当か?』
何時もの軽い感じでは無い真剣なポチが俺達に確認を取ってくる。何か因縁でもあるのか? 寧ろお前が自分は魔物だと告白しても驚かない自信があるぞ。
「・・・・・・黒い身体に赤いラインが入っている。全体的に毛が長い馬だが?」
アルゴに俺の見た情報を伝えると、アルゴは頷いて答えた。
「間違いありませんね。ナイトメアです。赤いラインは・・・・・・」
『牝馬だろ! よしゃあああ!!! 遂に、俺もナイトメアと関係を持てる様なチャンスが来たぜ!』
「「・・・・・・」」
急に興奮する『駄馬』が何かを叫んでいるがアルゴと二人で無視をした。少しでも、こいつを信じた俺が恥かしい。
『おっ! 俺の新しいメスが近付いてくるみたいだぜ。勇者様、上に乗ってる置物を切り落として、あのメスを開放してくれ!』
「黙っていないと先に、お前の下にぶら下がっている物を切り落とすからな?」
脅しても、効果の無い家の駄馬が言う様に、魔騎士を乗せたナイトメアが橋の方に近付いて来る。その姿は鎧を着ているのに何処か細く感じた。
「アステアは、何してるんですかね? こんな事を勝手にして・・・・・・だから、あいつ等となんか協力したくなかったんだ!」
珍しく、魔騎士を連れたアステアの騎士を睨みつけるアルゴは、確かに怒っていた。周りからも野次の様なものが聞こえてくる中で、ルーゲルさんがその魔騎士とアステア騎士に、油断無く近付いて理由を聞き出していた。
『おお!! なんて良い身体してんだ! 見たかよ勇者様、あのメスは俺にこそ相応しいと思うんだよ。』
BGMの様に聞き流している、駄馬の声とは関係無い話をアルゴとしていた俺は、ルーゲルさんが砦に向かうのを確認してその魔騎士と前方の魔物の大軍を見ていた。
「なんか、嫌な感じがするんだよな。」
「嫌な感じですか?」
別に相手が何か仕掛けているとか、そう言う話ではなくて、こう、なんて言うか・・・・・・勘違いが起きそうな予感? 的な前触れというか・・・・・・
「あっ!親父が戻ってきましたよ。なんかこっちを見ていますね?」
当たらないで欲しいと、心の中で何度も祈っていたら・・・・・・魔騎士が声を張り上げてとんでもない事を言ってきた!
『これより、魔王様との一騎討ちを行う! 最強の戦士は前に出て魔王様と戦え! 貴様等が勝利すれば我々は貴様等の姫を返してこの場を引いてやる。しかし!』
まだ続くのかよ? それより声から判断すると、あの魔騎士は女だったんだな。・・・・・・魔物にも性別って有るんだよな? 駄馬がナイトメアにメスがいるって、知っているんだから当然なのかな?
『我等が勝った時には『勇者レオン』の首を貰う!』
今の言葉に一瞬、反応出来なかった。だが、周りの馬鹿共は乗り気の様で・・・・・・
『チャンス来たーーー!!! 頑張ってあのナイトメアを助けようぜ、勇者様!』
「身の程知らずって、言葉を教えてやりましょうよレオン様! 俺もこの間、親父から聞いたんですけど・・・」
お前らの中の俺は、どんだけ強い事になってんだよ! 無理だからな! 魔王と一騎討ちなんかゲームですらそうそう無いぞ! 大体、俺は強くないんだよ! 最近では、セイレーンやラミア、それにエイミにまで、ぎりぎり勝てる位の実力しかないんだぞ!
『場所は、この橋を越えて我等の陣地で執り行う! 逃げたければ逃げても良い! その時は、我等十万の軍勢に貴様等の故郷ごと蹂躙されると理解せよ!』
言いたい事を言って、帰る魔騎士を見送る俺は、その一騎討ちを仕掛けた魔王を心の中で罵声を浴びせつつ、現実逃避を行っていた。
「今日も良い天気だ。」
「流石に余裕ですね、レオン様!」
『早く行こうぜ! 待ってろよ俺の愛しのナイトメア!!!』
ここ数日の事が、信じられません。ご指摘も受けているので、それを考えながら書いていこうと思っています。
感想やコメント、お気に入り登録に評価と大変有難う御座います。
なるべく期待に応えられる様にしたいですね。