切り取ってやる!
駄馬・・・
あれから4年が経ちました。・・・・・・納得出来ないかも知れませんが特に此れといった話なんか無い4年間だったんだよ。少し大きくなった村と落ち着きだした住民に家の子達の成長・・・後はポチがやたらと頑張った成果が沢山現われた事かな。
『俺のハーレム凄いだろ勇者様!だけど最近俺の子供が威張りだしてよ。しばいて来たんだけど、』
こいつは本当にムカつくし俺は馬とは認めていなかったのに、産まれて来たのは立派な馬ばかり・・・
母親の遺伝子が優秀だったのだろう。
「お前の子供等は買い手が見つかったら売るんだからな!傷なんか付けんなよ。」
『舐めた態度を取ったから蹴り飛ばして噛み付いただけなんだから怒んなよ。』
こんな駄馬を相手にしている俺の苦労を誰かわかってくれ!
此処数年で大分落ち着いた為に村の名前と領主の派遣をお願いする手紙を王妃様に出した。俺の事は忘れてはいないだろうが最近付き合いは無かったから少し心配しつつ返事を待つ事にした。
俺も19歳になり体格もしっかりして来たからかよく声を掛けられる。一度だけ村の娘さんにそのまま付いていったら家の子達に見付かって家まで引き摺られたのは良い思いで?
その家も大工さん達が無理したのか中々の屋敷になっているが何だか申し訳ない。人も揃いだして俺が無理しなくても良くなったら何時の間にか領主の仕事をさせられたりと大変で王妃様に手紙を書いたんだ。
俺は領主じゃないからこんな仕事をしたく無いと思いつつ毎日コツコツと仕事の日々を繰り返して・・・
「領主様!また国境から魔物が大量に侵攻して来ました!砦の騎士達から応援要請が!」
兵士の一人が慌てて俺の仕事部屋に駆け込んで来たのを目で確認して、
「領主じゃない。俺は騎士崩れなんだよ。」
コツコツと自分の評判を下げる事を続けているのだ。塵も積もれば山となる・・・俺の好きな言葉だよ!
だが内容はかなり重要な内容だった為に冗談を其処までにして装備を確認する。二年程くらい前から砦にも食料を運び込んだお陰か砦に居る貴族とも少しは打ち解けたのだ。其のお陰で向こうも協力してくれるから此方も出来るだけ協力する。
この関係が続くと良いよね。お互いに助け合えれば効率も良くなるんだし、楽も出来る!・・・俺は仕事が増えたけどな。
始めの内は砦の貴族は王妃様とは仲が良くない為に俺の事も敵視していた。だから魔物が領内に侵入しても見ない振りをしていたんだが、2年前から食料も何とかなって来たので渡しに行った。
それまでは砦の貴族が自分の領地から運んだり近くの街で買っていたりと大変苦労していた中で俺が食料を少ないとは言え持って来たから驚いていた。
其処から徐々に交流をする様になり村に休暇中の騎士や兵士が来る様になると村にお金を落としてくれて更に村は発展していく!貴族達の食料を運ぶ輸送隊もこの村で一泊していく様になり交流が更に深まる。
ただ砦が魔物の進入を防いでくれる様になって問題も出て来た。魔物の素材が不足しだしたんだよね。こっちにも事情が有るけど向こうも善意の行動じゃん・・・だから魔物の侵攻時には協力する取り決めをしたんだ。
砦の責任者には凄く感謝されたね!涙流してたもん。・・・勘違いとかしてないよな?
バーンズ・オルセス
わしが辺境に飛ばされて2年が経った頃だ今まで虐げて来た勇者が此方に食料の援助をしてきた。あの雌狐が重用した勇者・・・其れだけでわしは好かん!王を蔑ろにして権力を握る雌狐に協力していた勇者とそう思っていた。
反対勢力を無理矢理辺境に飛ばした時は此れで雌狐も終わりだと思った。・・・勇者が神託を受けた時は反対勢力の貴族は絶望した。もう此処から巻き返すなど不可能だと、わしの孫も勇者の神託を受けたがレオンほどの神託を受けてはおらん。
然もレオンがこの辺境に来ると聞いて腹立たしくて魔物の進入をわざと許していた。其れでも流石勇者と言うべきか、誰もが滅ぶと思っていた村を再建し発展までこの短い期間で遣って退けた。わしは自分の孫と比べた時に其の力の差を見せ付けられた様に感じた。
幼き頃より『神童』と騒がれ、国の発展に貢献し、地位や財産を捨ててまでこの辺境を守り抜こうとする其の姿はこの国を護る騎士だった。
さぞ怨んでいるだろうと思ったがレオンは其れでも此方に強力を申し出て来てくれた。面子に拘る我等貴族に此れがどれだけ嬉しかったか・・・頭を下げて頼む者を見捨てる事は出来ないと言う理由を与えてくれたのだ。
どうやればこれ程の人物になる?其れが無性に知りたくなり部下をレオンの再建した村に行かせ報告を聞いて驚いた。
『最早村ではありません!立派な街が出来ています。後数年もすれば更に大きくなるかもしれません。其れに多くの者達があの村に支援しています。アステアの国王すら支援していたんです!』
この報告を聞いて理解した。レオンと言う人物は其の力だけでなく多くの勢力を使いこなす事が出来るのだと、これ程の器を持つ人物はそうは居ない。わしの孫では太刀打ち出来んと理解した。
「わしはこの歳になって初めて尊敬できる者を見付けた様だ。」
近くに居た長い付き合いの部下が其れに頷いて答える。
「功績を誇る事も無いようです。此処数年の勇者が行った事は多くの者に理解されないでしょうが間違い無く偉大な功績です。」
白髪交じりのこの部下はとても優秀で長年頼りにしているが其の部下が此処まで褒めるのも珍しい。
「・・・どう報いればよいかな?」
「難しいと思われます。此方が渡せる物など勇者には興味が無いでしょう。」
其れが困っている。非礼を詫びたいが此方が用意出来る物など地位や財産を捨てる事が出来る勇者には大した物ではないだろう・・・酒や女で喜ぶ俗物とも思えん。
「ただ行動で示すのが宜しいかと考えます。」
「行動?」
「勇者は神託時に世界に協力を求めています。来るべき魔王との戦いに協力するべきなのは当然ですがその後の勇者による乱世が現実となりそうな今こそ『行動』で示すべきです。」
長い付き合いだから言いたい事はわかる。我々貴族が抱える勇者達を戦争で担がないと宣言でもしろと言っているのだろう。其れは当然行う・・・レオンが相手に回れば何人勇者が居ようと勝てんだろう。だから其れだけでは足りんのだ!
「雌狐が後ろに居るのだぞ?あやつならレオンを使い不要な者を乱世で処分し国を更に大きくする為に動く筈だ。」
「・・・雌狐に勇者を使う事は出来ません。私は彼を近くで見て来ました。村でどのような者にも身分など関係無く慕われている。其れはこの国の最大の弱点でも有り強力な武器でも有ります。」
何が言いたいか直ぐにわかった。国の最高権力者は一人で十分、それ以外は邪魔でしかない。そうか・・・レオンは雌狐と争う運命か・・・
「レオンの後ろ盾になれば良いと言う事か・・・まあ、国を護る『最強の盾』たる勇者を護るのだ他の貴族も文句は有るまい。」
「其れからヘンリー様と顔合わせを行えませんか?」
「ヘンリーをか?構わんが・・・何か理由があるのか?」
「『レオンは未来を見通す』、この噂を聞いた事が有ります。当時は嘘だと思っておりましたが、其の人物の向き不向きがわかるのは確かな様なのです。各地でも最近特に優秀な者達は幼き時にレオンに才能を教えられていた様で・・・。」
此処まで来ると生きた伝説だな。・・・いや、もう既に伝説となっている。
「わかった。直ぐに息子に言って呼んでこさせよう。」
・・・わしは運が良いな、伝説と言われるであろう時代で生きていられるのだから・・・この時代に名を残す事はオルセス家の宝になるかもしれん。ヘンリーには頑張って貰う積りだったが、わしも動くとしよう。
アルトリア王妃 セシリー・アルトリア
「アステア王やバーンズ達貴族は私と勇者をぶつける積りの様だな。・・・浅はかな連中よな。」
私の発言に集まった信用の置ける者達は不安そうにしている。勇者と言えば今では『レオン・アーキス』の事を指す言葉となってから4年・・・私が何も考えていないと想っている輩のなんと多い事か、
「しかし危険ではありませんか?レオン殿が反乱でも起こせば民衆は必ずレオン殿を支持します。」
「私も危険だと考えます。もしもその様に考えているなら今の内に・・・」
此処にも愚かな連中が居るのか?まあ、忠臣であるから気にはしないが、そうでなければ今この場には呼ばないだけだがな。
「問題無いのよ。・・・レオン殿が反乱を起こす事は無い。それ以上に他の勇者を気を付ける様に指示を出していたけど報告は?」
大臣の一人が資料を私に渡してくる。其の報告に危険と判断されたのは3人、
「ヘンリー・オルセスは危険だけどもう除外しなさい。バーンズもヘンリーを担いで動こうとはしないでしょう。残る『デイジー・キャンベル』、『タークス・アバンデ』は要注意のままで・・・この平民は?」
「はっ、『リュウ』と名乗っている勇者のようです。其の行動は周りに影響を与えているので危険と判断しました。」
報告を読む私の顔が歪むのは自分でもわかる。周りも其の様子に緊張している様だ。・・・顔に出るなんて私もまだまだね。
「平民の教育に農業改革・・・細かい物も何処か違和感が有る内容ね。レオン殿が言った改革案とも被っている物も多いわ。」
「はい。この者の居る村はレオン殿が立ち寄っていませんがこのリュウと言う勇者・・・勇者が多くて困りますな。」
どうでもいい内容だが確かに困る。この所為で報告に不備が出たら笑えないわね。
「勇者は個人を指す時は止めよ。それで?」
「・・・この村はレオン殿よりもリュウに心酔しています。この村だけ子供等の学力が異常でして・・・読み書きや計算と道徳はレオン殿の改革案と同じですがそれ以上に『議会制』を広めているのです。」
私は一瞬緊張した。いや、恐怖した!この子の年齢は8・9歳程だろうに其処まで考えているなんて・・・レオン殿以外で此処までの天才が現れるなんて考えも付かなかった。
「信用出来る者を選りすぐり監視を強化しなさい!其れからこの情報を直ぐにレオン殿に知らせよ!」
何時もの口調が崩れてきているが気にしていられなかった。この勇者をどうにかしなければこの国は滅ぶ!折角此処まで順調に来ていたと言うのに・・・
「しかしレオン殿は!」
「問題無いと言ったでしょう!・・・ごめんなさい。少し言い過ぎたわ。」
「い、いいえ。」
周りが私の叫ぶ声に驚いているが其処までレオン殿の事を気にする必要は無い。皆がレオン殿を『勘違い』している。あのお方が・・・レオンがその気なら既にアルトリアは彼の物なのよ。
「気にしている様だから教えよう。レオン殿が本気なら私達は今頃彼の前で跪いている筈。・・・神託でレオン殿は『我の遣わし』と言われた。此れは『神の使い』を意味する言葉よな?」
「「「・・・」」」
「神殿側も故意にこの情報を広めていない。そして本人すら其の事実を利用すらしない。この事実を利用すれば直ぐにでも神殿を利用して世界を手に出来た。命令するだけでいいのに其れをあえてしない・・・この国を狙うならもう既に奪っているであろうな。」
皆が其の事に気付くと震えたり興奮したりと様々な反応を示した。そして将軍の側近が口を挟む。
「本人が気付いていないとか其の事実を隠し頃合を見計らっていると考えないのですか?」
笑ってしまう。頃合?其れは一体何時から何時までを指す言葉なのかしら?あの方が表に出てから9年・・・これ程慕われた者がこの国に居ただろうか、王族ですら居ないだろう。
「其の頃合は神託を受けた時では無いのか?それ以外に有るとそなたは考えているのだな?」
挑発的に言う私にうろたえながら答える。
「魔王討伐後に他の邪魔な勇者や国が弱っている所を・・・」
「無いな!其れなら4年前に最高の権力を利用してまだ幼い勇者を掻き集めて自らの駒にすればよい。・・・神託時が最大の好機だったのだ。其れが思い付かぬ『神童』とでも思っているのか?」
「・・・」
其の好機を捨てて辺境でその役目を果たしているレオン殿・・・後から私もレオン殿と戦う事を考えて恐怖に夜も眠れなかったが、それ以上に目立つ事の無い重要任務に進んで向かう理由を考えた。
「最近はレオン殿の噂は聞こえてこないな・・・まるでそうしているかの様に動いている。此れの意味を考えた事があるか?」
「この国の為ですかな?」
「いや、世界の為であろうな。神殿の愚か者共を遠ざけ辺境でただ其の役目を果たす。・・・そして見極めているのだろう。この事実に気付く者を・・・辺境にも其の職務を果たす為に来る気概のある神官をな。我々も試しているのだろうが、相手が悪かったな『レオン坊や』私が其の事に気付く事も考えているだろうが私はその上を目指す事にしよう。」
其の言葉に集まった者達が緊張を解く。恐ろしい者だな勇者とは・・・レオン殿が魔王討伐の為に動いているなら我々も其れに従い動けばよい。幸いな事に周辺の国々はこの国を攻撃できんしな。アステアの狸が切り札を切ってきた事ぐらいかな?其れだけ恐れているとも言える。
・・・この国は恵まれたな。最高の盾を手に入れたのだから・・・だからこそ不安要素は徹底的に排除しなければ!
「この駄馬!!!てめえ何で逃げやがる!!!」
『ざけんな!!!デカイはさみ持って『切り落とす』とか言う勇者様から逃げるなんて普通だろうが!!!俺はハーレム築く為に勇者様の馬になったんだからな!!!』
走りながら叫ぶ俺とポチは村中を走り回っている!
「本音が出たなこの駄馬が!大体なんでそんなに何処でも盛ってんだよ!其の所為でエイミが最近はぐらかしても誤魔化せないだろうが!」
『興味が出てきたんだろうが!其れなら教えてやるのが親の役目だ!俺の所為にすんなや!』
「教えられるか!!!」
名も無き村は今日も平和だった。村人が俺とポチを対象に賭け事をして爆走する俺達に声援を送っている。其の声援に応えて俺はポチの〇〇〇を切り落としてやる!
今朝の事だが訓練をしている時にエイミの手が止まり何かを見ていたので注意をしたら・・・
「レオン様、ポチは何をしているんですか?前からよくしているんですけど・・・私にはわからなくて・・・誰も教えてくれないんです。」
俯いてしょんぼりとするエイミになんと言えと?俺が困って周りを見れば目を逸らす一緒に訓練している兵士やセイレーン・・・ラミアだけは俺を見て微笑んで
「エイミ!其れは〇〇〇でポチは〇〇〇が!」
急いでラミアの口を押さえてそれ以上言わせなかったが、
「なんで私だけ教えてくれないんです!」
怒りながら泣き出すエイミから逃げる様に俺は得物を持ち替えて駄馬の方に逃げ出して今に至る。
『もう許してくれよ!てか速ーよ!お前が人間か本当に疑うわ!』
「今お前って言ったなこの駄馬!!!息の根止めてやる!!!」
・・・今日も平和だ。
魔物で一番厄介なのって他の作品とか見ていても『ゴブリン』だと思っているんですけど、あいつ等多分ゴキ並みに厄介ですよね?
退治している主人公の評価は多くの人からしたら低いのに、わかる人には好評価!
そんな勘違いを書けたかどうか不安です。