エピローグ〜まだ終わらない〜
「ねぇ。アレ、なんだろう?」
植木が示した先には光があった。
どうやら、どこかの部屋の電気がついているらしい。
教師の記憶によると、あそこは図書室だという。
「なんであんなとこ――」
キーン コーン
カーン コーン
教師がそう言いかけたところでチャイムが鳴った。
松本は時計を見た。
ちょうど0時だった。松本はなんだか言いしれぬ恐怖に襲われた。
「とにかく俺は図書室に行ってくるからお前たちはさっさと帰れ。」
「いや、俺らもお供しますよ。」
「バカ言うな。もう深夜だぞ。」
「でもぉ、もしかしたら幽霊とかいるかもしれないし。」
尾崎と内免はおもしろそうに言った。
教師は渋々ついて行かせる事にした。
図書室は今いる階と同じ階にあるので、そんなに時間はかからなかった。
その証拠に、松本が時計をみると、それは未だに0時ちょうどをさしていた。
図書室に入ると、一冊の本が落ちていた。
緑色の表紙だが、そこには題名も著者も書かれていない。
「ホラホラ何もないから今度こそ帰れ。」
教師は無理矢理に六人を押し出した。
「ちぇ、つまんねーの。」
尾崎は両手を頭の後ろで組んで歩いた。
教師はみんなの姿が見えなくなるのを確認し、本を片付けようとした。
(つったく誰だ?今日の――いや、昨日の図書委員は…)
などと考えつつ、本に手を伸ばした時。
パラ……パラ…
風は吹いていないばずなのに、本はめくれだした。
辺りを確認しても窓は開いていない。
教師はついさっき自分が話した事を思い出した。
『風もないのにパラパラとめくれる』
(あんなのただのうわさ話だ)
教師は自分にそう言い聞かせて本に手を伸ばした。
パラ
本はあるページで止まった。そのページも白紙だった。
『何も書かれていない本』
教師の不安はどんどんふくらんでいった。
それでも勇気を振り絞って手を伸ばした。
それが間違いだった。
ガバッ!!
そんな音を立て、本のページから口のようなものが飛び出してきた。
「ヒッ……」
教師は悲鳴をあげる間もなく、吸い込まれ――というより、喰われてしまった。
少したった後に、そのページが血のように赤く染まっていくのを誰も見ていなかった。
パラ……パラ…
その本はまた、図書室という静寂の中でめくれていった。
いつのまにか電気は消えていた。