エピローグ〜まだ終わらない〜
そいつの名前は有沢 武。
有沢は無口でおとなしいが、松本には心を開いて接していた。
「ずっと友達でいようね。」
と言われた事もある。松本はそんな有沢を親友だと思っていた。
しかし中二になってから、有沢は尾崎たちにイジメられるようになった。
最初はくつを隠されるなどのイタズラ程度だったが、反抗しないのをいい事に、イジメはエスカレートしていった。
その事を松本はもちろん知っていた。
別に有沢から相談されたわけではない。
たまたまイジメ現場を目撃してしまったのだ。
けど松本はそれに対し見て見ぬフリをし続けた。
自分なりに、有沢に優しくしてあげた。
しかしそれは有沢の助けにはならなかった。
有沢は教室内で自殺した。
そんな事があってからもうすぐ一年。そう、明日が有沢の命日なのだ。
それなのに怪談話をしようとする尾崎たちの気が知れない。
しかし逆らうわけにもいかないので、松本は渋々行く用意をした。
十一時。
松本が着くころには内免と植木以外全員来ていた。
「他の二人は?」
「まだ来てねー。」
松本は二人が来ない事を祈った。
そうすればきっと、今夜は中止になるはずだから。
待つ事15分。
「お待たせ〜♪」
「ごめんごめん。遅くなっちゃった。」
来てしまった。松本は誰にもバレないようにため息をついた。
「さ、行こうぜ。」
高村を先頭にして、昼間カギを開けておいた所を通り、自分たちの教室へと向かった。