エピローグ〜まだ終わらない〜
そのころ内免は校舎のはずれの方を歩いていた。
理性はとうに吹っ飛んでいた。
足取りは重く、自分でもどこを歩いているかが分からなかった。
そんな時、前に大きな鏡があった。とてもきれいに輝いている。
(…ボサボサ)
走りまわったせいで、髪の毛はボサボサだった。
内免はポケットからくしをとりだして鏡を使いながら髪を直していた。
「整えなきゃ……整えなきゃ……」
内免は笑いながら髪をとかし始めた。
その姿はいろんな意味で恐ろしかった。
だいたい整え終わった時、その鏡に自分以外の誰かが映った。
「?」
どこかで見たような顔だった。
内免は後ろをふり向こうとしたが、なかなかそいつから目が離せない。
ヌウッ
じっと見ているとそれはまるで水から手を出すように、鏡から手を伸ばしてきた。
その手は内免の頭へと伸びていった。
「やめて…いや…」
その場から逃げようとしたが、かなしばりにあったかのように動けない。
それどころか目すら閉じれない。
手が内免の頭をつかんだ時、鏡に映っていたそいつの顔がハッキリと見えた。
内免はそいつの事をよく知っていた。
なぜならそいつは、自分がイジメていた相手だったのだから。
「あ…りさ……」
バリン
鏡は派手に割れて、内免は鏡をつたうようにたおれた。
床に血がしみわたった。
鏡の破片は窓から入ってくるわずかな光を反射してキラキラと光っていた。赤く光っていた。
そのすぐ後、どこをどう走ったのか松本と高村がたどり着いた。
二人が見た光景は今まで見たのに匹敵するぐらいにヒドイものだった。
鏡の破片で首が多少切れていて血が飛び出していたり、パックリ割れた頭からは脳みそみたいなものもはみ出していた。
二人とも、もう声を出さなかった。ただ、
「こいつも死んだのか」
という気持ちしか出てこなかった。
二人は無言でその場を立ち去った。
二人が去った後、鏡の破片はビデオのまき戻しを見ているかのように鏡本体に戻り、元の大きな鏡になった。
鏡は今でも妖しく光っている。