疑惑
授業が終わって体の熱を風で冷ましていく。何気なく周りを見渡すと赤髪の男が学園のアイドルに引きずられていくのが見えた。その男の顔を見て少し違和感を感じた。
「おい、サム」
「何ですか?」
「コーディリアに引きずられていった男は誰だ?」
「トレスですか?あいつなんでこの学園にいるのか皆が不思議に思ってるんですよ。とにかくやる気のない奴で授業とかもよくいないし、下手したら部屋からも出ない。ほっといたら飯も食わないんじゃないかと思うくらいですよ。だから筆記は最下位。聞いたうわさでは常に白紙らしいですよ。もちろんこういう組み手でも最下位」
「最下位?」
「やる気ないですからね。まあ、あったとしても弱いでしょうね。普段からどんくさいし。どうしてあんな奴のこと聞くんですか?」
「なんとなくだ。物知りだな。驚いたぞ」
「ああ。あいついつも僕らのコーディと一緒にいますからね。コーディを陰から見ていると嫌でも目に入るんですよ。いつもいつもいつもいつも隣にいますからね」
「僕らのコーディ?」
「知らないんですか?俺は『コーディファンクラブ』会員561番です」
ファンクラブがあるのはきいた事があったが、その番号に少しあきれる。そんなにいるのか。
「ちなみに『レイファンクラブ』会員208番でもあります」
「ははっ、光栄だな」
「いやいや。もちろんレイの方が会員人数は多いんですよ」
「ほら、次の授業が始まるぞ」
「うわっ!本当だ。それじゃいきます!」
「ああ」
笑顔で手を振りながら頭は別のことを考えていた。
あいつが最下位?俺が五人を相手にしていた時偶然視界に入った時は、コーディリアに殴られて吹っ飛び5メートルほど滑っていた。最下位の人間だったらそのまま気絶していてもおかしくないものだ。しかし引きずられていくのを見たら、めんどくさそうにはしていたが体のほうはなんとも無いようだった。顔は殴られた痣が出来ているだろう。しかし痣どころか赤くもなっていなかった。
「自分で跳んだ?」
そんなことあるはずがない。成績最下位の人間にそんな事出来るはずがない。しかし、もしそうだとしたら・・・すこしあのトレスって奴を観察しておこう。
「あっ。授業・・・」
開始のベルが鳴り出してレイは慌てて教室の方へ走り出した。