追跡?
夜11時
そろそろかな
トレスはベッドから起き上がり気配を消してドアの向こう側を確かめる。気配はない。少しだけドアを開けて目でも確かめるが誰もいない。
「・・・よし」
少し息をついて静かに扉を閉めて廊下を歩き出す。
とりあえずあいつの家に行くしかないか
トレスは闇に溶け込むように学校の門を出て行った。それは、意識してない人では決して気づかないほどに完璧に気配が消えていた。
しかし、今夜はその動きを見ているものがいた。黒い布を頭に巻いてサングラスを掛けている。服も黒を基調にしていて片方は赤、片方は黄色のスカーフをそれぞれ巻いていた。
「標的動きました」
「よし、追跡するぞ」
「はい」
門を出た影を追ってまた2つの影が出て行った。
めんどくさい
トレスは夜の街中を歩いている。夜の11時とはいえ人がいなくなったわけではないが昼と比べると10分の1くらいだろう。そんなに人が少ないのだからトレスにはすぐにつけられている事に気がついた。それもつけてきているのは2人いる。
これってあの2人だよな
後ろの2人はトレスに気づかれていないと思っているらしい。というか、明らかに浮いている。2人の半径3メートルに人が近寄っていないことに気づいているのだろうか?
とにかくあんな格好をしている人間に声は掛けたくない。そして掛けられたくない。ならばやることは決まっている。
「撒くか」
そして近くの路地裏に入る。
2人が慌ててその路地に入った時、そこにトレスの姿はなかった。