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授業

バレイス国は戦争ばかりしているような国だった。しかし3年前にフィロア帝国と休戦協定を結んでからは平和になった。治安は良いとは言えないが、いつ戦争で殺されるか、いつ家族が連れて行かれるかという恐怖からは開放された。

しかし休戦中とはいえ、また戦争が始まっても良いように軍には力を入れている。軍に入るのが一番経済的にも安定しているし、戦争孤児たちには唯一出世できる場所なのだ。だが、出世するには強さを持たなくてはいけない。また、それを示さなければいけない。その為にバレイス軍事学園はあるのだ。


そんなバレイス軍事学園の訓練場では組み手が行われていた。

そこで壁に背中を預けて周りを眺めている男がいる。肩のラインを少し越える赤い髪は手ぐししたくらいで結んでもいない。180より少し高い長身だ。だがそれよりも彼を見てまず思う事は、ダルそうだということだろう。呼吸する事もめんどくさそうな雰囲気だ。

彼は青い空を眺めていたが、


「くたばれぇ!」

「てめぇがな!」


怒鳴り声が聞こえてそっちを見ると、筋肉が自慢なんだなぁと一目見て分かる男2人が組み手をしていた。


「目障りなんだよ!」

「こっちの台詞だ!」

「くっ、こうなったらあれをやるしかないか」

「面白い。それではわしもあれで迎え撃つしかないな」


一瞬の静寂


「奥義!スーパースパーニングキーック!」

「奥義!ウルトラブリザードパーンチ!」


2人同時に膝から崩れ落ちた。


「ふ、やるな」

「てめぇこそ・・・見直したぞ」


ふたりは互いに笑いあい、がっちりと握手をかわ・・・


「「甘いわぁ!」」


そんな光景から空へと視線を移し


「・・・平和だなぁ」

「いい加減にしろ!」

「いだっ」


いきなり頭を叩いてきた人物は腰に手を当てて眉を吊り上げたきれいな顔で睨んでいる。

その顔と青い髪のボブが良く似合っていて、密かにファンが多い。本人は気づいていないが。


「先生、乱暴は良くないと思います」

「その前に今は組み手の時間なんだからやろうよ」

「断る!」

「このままだったら私もあなたも評価が下がるんだよ。特にトレスは!勉強も駄目、運動駄目、何をやっても最下位のトレスは!このままだったら軍に入る事も出来ないんだよ!」

「コーディリアには関係ないじゃん。他の奴と組んで良いよ。」


最後に手を振ってみる。とたんにコーディリアは悲しそうな顔をする。


「コーディって呼んでって言ってるのに。・・・関係なくないよ。だって私は」

「えっ?何?」

「っっっ何でもない!!とにかく組み手やるよ!良い?」

「断る!」

「うるさい!」


コーディはこぶしを作って右半身を引いて構える。トレスは壁から離れてそれをあきらめたように、めんどくさそうに眺めている。コーディが動いてトレスの顔めがけて殴ってくる。学園の中でも上位に入る攻撃だ。そのこぶしがトレスの顔に近づいて


ドゴッ

「ぎゃああ!」

ズササササササー


派手に飛び5メートル程滑った後、ピクリとも動かなくなった。その様子を見てコーディリアは焦ってトレスのそばに駆け寄る。


「ちょっと!そんなに強かった?ごめん。大丈夫?ねえ、っへ、返事してよ!」

「気絶してるから揺らさないで」

「さっさと起きろ!」


それにトレスは嫌そうに座る。


「ねぇトレス。軍に入れなかったら私達戦争孤児は生きていけないんだよ?」

「心配しなくても大丈夫だよ。それよりもさっきからサムがコーディのこと見てるからそっちに行ったら?気づいてるんでしょ?サムとやったほうが評価上がるじゃん」

「嫌。私はトレスをどうにかしてやる気を出させたいの!」

「大きなお世話です」

「このっ」


その時訓練場の反対側のほうで歓声が上がった。


「えっ?何?・・・ああ、レイか」

「レイ?」

「知らないの?この学園の有名人だよ?成績優秀。容姿端麗。性格温厚。入学時から変わらず首席で皆のリーダー、レイ=ホープネスだよ」

「ふーん」

「ほんとに知らなかったの?」

「興味ない」

「まぁトレスだからそういうこともあるか」

「そうそう」

「レイは5対1で勝ったみたいだね。さすがねぇ」

「首席なんだろ?」

「そうだけど、あの5人も弱いわけじゃないんだよ?」

「へぇ」

「じゃあ私たちももう一回組み手を・・・あっ」

「・・・授業終わったよ」

「っっっもう!」


終了の合図のベルがなって生徒たちは校舎の中に入っていく。トレスは怒ったコーディリアに引きずられて校舎の中に入っていった。




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