覚悟
じっとりと汗ばんできた。手に持っているナイフが滑って落ちそうになる。これからやろうとしていることを考えたら体が緊張で動かなくなる。
トニーはもう一度ナイフを握り締めて頭を睨む。
「あなた達が関心を持つような事をすればいいんですね?」
「できるもんならな」
更に笑い声が大きくなる
「なら、僕の覚悟を示します」
喉がからからで痛い。でも覚悟の強さを示すために無理やりにでも笑ってみせる。
その様子に周りの盗賊たちは息を呑んで見つめている。しかし、頭は口元を歪ませてトニーを見つめた。
「やってみろよ」
トニーはナイフを強く握り締めて振り上げた。
「・・・いったそぅ」
盗賊たちの視線の先には左腕にナイフを埋めてうめき声一つ上げずに頭を睨むトニーがいた。
「こ、これが僕の覚悟です・・・」
誰も何も言葉を発さなかった。いや、発せなかった。
静寂がその空間を支配していた。
「はぁぁぁ」
そんな静寂の中大きなため息が響いた。ため息の主はこの部屋に入った時に頭に声をかけた金髪の男だった。
「つまらない」
金髪の男は頭の方へ歩いていく。周りは金髪を止める素振りも見せなかった。
金髪は頭に新しい酒を渡しながら話しかける
「どうですか?面白かったすか?」
「・・・期待外れだ」
その様子を呆然としてトニーは見つめていた。
「襲い掛かかってくるのかと思えば自分を刺すし、刺したら刺したで叫び声一つ上げないし、面白みも何もないな」
「そうっすね」
その会話に絶望を感じる。自分の中では強い覚悟だった。なのに期待外れだなんて。もう何をしたら良いのかわからなくなった。
目の前が真っ暗になった、そんな時に更に頭は言葉を続けた。
「でも、まぁ。覚悟があるのはわかったしな。合わせるほど面白くはなかったが現状を教えてはやるよ。お前ら!教えてやれ!」
「ヘイ!」
その声にトニーはいつの間にか下を向いていた顔をあげる。
周りの盗賊たちは頭の声で動き出す。
「おい、あのガキの事知ってる奴どこだ?」
「さぁ」
「呼んで来いよ」
「っつうか、俺知ってるぜ」
「マジかよ。じゃあお前に任すわ」
どこか気まずい雰囲気の中で出てきたのは若い茶髪の男だ。
「あれだな、飯食ってねえからもうすぐ死ぬんじゃね?」
「・・・え?」
「お前が金を持ってきた時しか食いもんやってねえし。そろそろ5日食べてねえんじゃねえか?その前は6日食べもんやってねえし」
「・・・何という事を」
「そういうことだ」
話は終わったと言うように茶髪男は下がった。
「という事だ。おい!誰かこいつ追い出せ!」
メルが死ぬかもしれない。それも僕が強盗をためらったせいで。僕のせいで。それも多分衰弱死だ。そんなことさせない。そんな寂しい死に方はさせたくない!まだ助かるかも知れない。でも僕じゃ駄目だ。僕じゃ力不足だ。じゃあ誰が・・・
そこまで考えて気がついてみればビルの前に倒れていた。慌てて周りを見渡したらビルの間の物陰にいるトレスと目があった。
最近少し忙しいです(-_-;)
今週投稿出来て良かった(o^-^o)




