表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

恋人同士

作者: 小川大河
掲載日:2026/07/07

 きょうは、彼氏とデートに行く。洋服もメイクも髪型もばっちりだ。なんだか自分がとても可愛いと思える。あの人はどんな格好で来るかな。待ち合わせの駅に向かおう。街中はいつもよりもきれいで輝いている。これから恋人に会う。それが世界をとても愛おしくする。街道に建つ家々はとても美しい。歴史があり、色とりどりに感じる。ただの建売住宅なんだけど。鳥のさえずりが耳に心地よい。ゴミ置き場の上で鳴いているのはカラスだけど。いつもの道をとても楽しく歩いている。駅だ。あの人はどこかしら。

 「おまたせ。」、私が声をかけると彼氏はこちらを向き優しくにっこりと笑う。

 「会えてよかった。」、そう言ってわたしを見ている。その顔はとても嬉しそう。

 手を握ってみた。彼の手は大きくて厚みがある。ゴツゴツしていて硬い。そしてすごく温かい。なんだか湿っている。

 「なんだか濡れているみたい。」

 どうやら、緊張していたようだ。暑いだけかも知れないけど。こちらの方を恥ずかしそうに見ている。駅前でお互いに見つめ合っている。まだ何もしていない。今日会ったばかりなのに、満たされた気分になる。時間が止まってしまったようだ。

 「よし、行こうか。」、彼は恥ずかしくて仕方がないらしい。

 「もう少しこのままでいさせて。」、少し遊んでみるが自分でも何を言っているんだろう。

 「ねえ、行こうよ。一日中こんなことをしているつもり。」、彼氏が言う。

 彼氏はわたしの両肩に一つずつ手を置いた。私の肩をぶるぶると揺らす。私は動じないで立っている。少し速くしたり、強弱をつけている。

 「もう仕方がないな。」、彼氏は呆れている。でもなんだか楽しそうでよかった。

 今度は私の背中の真ん中に手のひらを置いた。彼氏はそのまま押してきた。これにはわたしもたまらず進み出す。結構速い。彼氏が力強く押すので、景色がどんどん変わっていく。冷たい風が心地よい。このままどこまでも行けそうだ。そのくらい体が軽い。押してもらっているから、当然ではある。

 「このまま行くの。」、いったいどこまで行くのだろうか。

 「いやいや、電車で行くから駅に戻らないといけない。どんどん目的地からは遠ざかっている。君は楽しそうだけど。このままだととんでもないことになってしまう。」

 戻らないといけないらしい。でも、このまま進んでいきたい。なんだかそれも正解な気がする。でも、目的地からは離れてしまう。どうしたらいいのだろう。

 「ここは素晴らしい場所で、今は素晴らしい時間じゃない。」、恋人に聞いてみた。

 「そして我々は素晴らしいことをしている。」、恋人が言う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ