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異世界恋愛系 作品いろいろ

冷たい雨が降っていると過去のことを思い出しますね。~私はただ未来へと歩むだけです~

作者: 四季
掲載日:2026/03/18

 冷たい雨が降っている。


 こんな夜には過去のことを思い出す。


 あの悲しみに染まった夜を。



 ◆



 ……数年前、私には婚約者がいたのだけれど、彼はある日突然私との関係を終わらせることを決定した。


 婚約者だった彼アンヅォンとの関係は悪いものではなかった。


 定期的に顔を合わせていたし。

 話をする時もそこそこ盛り上がっていたし。


 だから二人の未来は安泰だと思っていた。


 しかしアンヅォンは私との関係を叩き壊した。


 彼が言うには私より魅力的な女性に出会ってしまったのだそうだ。


 ある時友人に誘われて酒場へ行って、そこでその女性を知ったそうなのだけれど、以降彼女しか見えないらしくて。その酒場へ定期的に通っているらしく。ただ、そこへ行って彼女に構ってもらうにはお金が必要らしくて。


 愛する人のためにもっとお金を使いたい、ということもあって、私との婚約は破棄することに決めたそうだった。


 はじめは信じられなかった。


 まさかよりによって私の相手が、と思った。


 けれども話を聞いているうちに彼が本気であることが分かってきたので、これはもうどうにもできないと判断して、婚約破棄を受け入れた。


 婚約破棄を受け入れてもらえたアンヅォンは急にハイテンションになり「ありがとう! じゃあ早速、その女性について語らせてくれるか? 関係が終わったとなったら聞いてほしい話がたくさんあるんだ! 彼女について話そう! 楽しいトークをしよう! 魅力あふれる彼女について話せば、きっときっと、全世界の人が楽しい気持ちになる!」とか言ってきたけれど、さすがにそれはお断り。

 すると不機嫌になられ「あーあー、女の嫉妬きたねえな」とか「何だよ! 面白くない女だな! ホッントつまらねえ!」とか吐き捨てられてしまった。


 でもそれで良かった。

 そんな話なんて聞きたくなかったから。


 女の嫉妬? 汚い? ……なんとでも言えばいい。


 婚約破棄しておいてその相手に自分がしたい話は聞いてもらおうだなんて、そんなことを考える方が間違っている。切り捨てた相手に、その人が最も聞きたくない話を振るなんて、馬鹿の極みでしかない。嫉妬とかうんたらとかそういう話ではないのだ。


 誰がそんな話を聞きたい?

 誰がそんな話を聞いてあげる?


 そこまで親切ではない。


 こうしてアンヅォンとの関係は終わりを迎えたのだった。



 ◆



 冷たい雨が降っている。


 こんな夜には過去のことを思い出す。


 あの悲しみに染まった夜を。


 ……ただ、今はもう、悲しみは乗り越えた。


 私は高貴な人と結ばれた。思わぬ出会いから始まった物語は一旦ハッピーエンドを迎え。そして、その先にいる現在も、幸せという名の海に浸っている。愛する人と、愛してくれる人と、一緒に生きてゆくという幸せ。それに穏やかに浸っていられる今は、それ以外のどんなものよりも尊い。


 ちなみに、アンヅォンはというと、私との関係を終わらせた日から数週間も経たないうちにこの世を去ることとなった。


 愛していた酒場の女性に「結婚してほしい」と頼むも「あんたと? はぁ? 何それ、さすがに無理だって」と返されてしまったそう。

 想定していなかった返答に激昂した彼は「金使ってやったのに!! 何だその態度!! 酒場の女のくせに!! 生意気なことを言うな!!」などと言って女性に襲いかかろうとしたらしく。

 結果、酒場の奥から出てきた怖い男の人に拘束され、女性を傷つけようとした罰を受けなければならないこととなってしまったそうだ。


 そうして拷問にも近いようなことをされたアンヅォンは、やがて、命を落としてしまったのだった。


 アンヅォンは常に自分勝手に生きていた。


 私のことも。

 女性のことも。


 大切に扱おう、なんて、欠片ほども思っていなかったのだろう。


 彼が思う愛とは一体何だったのか……。


 謎でしかないけれど。

 恐らく一般的なものとはかけ離れていたことだろう。


 自分が何よりも大事。

 自分が世界のすべて。

 他者は全員自分の言うことを聞くべき。


 彼の人生はそういうものさしの上にあったのだろう。


 自己中心的な生き方を絵に描いたような存在である彼に幸せな未来など訪れるはずがなかった――そういう意味では、やはり、神様はきちんと見ていた。


 悪しき者は滅びを道を辿る、ただそれだけ。


 冷たい雨が降る時、私はこれからも、ふと過去について思い出すかもしれない。


 けれどもそれはマイナスな意味での思い出すではなく。

 そんなこともあったな、というような。

 単に、出来事を思い出す、ということ。

 それ以上でもそれ以下でもない思い出し方となるだろう。


 私は今、もう、明るい未来しか見ていない。


 愛しい人と生きていく。

 愛しい人の隣で生きていく。


 それが私の行く道だ。



◆終わり◆

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