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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第三章「王都へ」

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第9話「筋肉と旅の予感」

### あらすじ


王国騎士団からの召喚状を受け取ってしまったユージたち。


一刻も早くこの町を出なくてはならないが、リネアの奴隷契約をなんとかしなくてはならない。


ユージはとある上位契約で”悟り“スキルを発動させリネアの奴隷契約を打ち消そうとするが・・・

「ルノア、ここきらい」


「・・・何でまたここなわけ?まさかアンタ____」


「そのまさかだな。」


私たちはグラートの商店に来た。


「儀式にはここにあったような水晶が必要みたいだ。ルノアとの契約に使ったやつ」


「それってそんな簡単に使わせてくれる物なの?また面倒な事になりそうなんだけど」


「それに関しては同意だが・・・まあその時はその時だ」


いざ店の中に入ろうとすると、「ご主人様、これ」ルノアが張り紙を指さして言った。



「「___本日休業!?」」



リネアとハモってしまった。


何とタイミングの悪い。ここの水晶が使えなければ話にならない。


「今日は諦めるしかないか・・・」そう言って引き上げようとすると、ルノアが私の服の袖を引っ張ってきた。


「ご主人様、ここはいりたい?」


「え?ああ・・・そうだな。入りたい」


「わかった」


そういうと、ルノアは店の裏へ駆けて行った。


___________


しばらくすると。ルノアは正面のドアから出てきた。


「ご主人様、あいた」


突然の侵入劇に私とリネアはあっけに取られた。


「お、おお。」


「シンプルに犯罪じゃない?これ」


釈然としない2人とは裏腹に、ルノアはケロッとしている。


奴隷として育てられた彼女への倫理的教育はこの先頑張るとして、今は彼女に感謝する他ないだろう。 


中に入り、中に誰もいないことを確認すると捜索を開始する。


「・・・このドア、開かないわね」


水晶を探していると、ドアはあるが“入れない“部屋をリネアが発見した。


「防護結界で守られてるわ。ここに檻の鍵とかお金とか、恐らく水晶もあるんじゃない?」


そうだ。ここはルノアのように奴隷として売られる“商品“もいるのだ。


侵入できたということは彼ら、彼女らを解放することもできるのでは___


「アンタ、変なこと考えてるでしょ」リネアが言う。


「変なこと?」


「鍵を盗って奴隷たちを解放しようとかそんな事よ」


どうやら見透かされたようだ。


「買われる前の奴隷は店主との契約を持っているから、檻から出してあげたところでどうにもならないわよ」


なるほど、奴隷商もリスク管理に余念がないようだ。


「それに、解放できたところでこの国じゃ身よりも仕事もない状態で放り出されてもまた奴隷身分に逆戻りよ。私たちにはそれを防ぐお金もないし」


リネアの言う通りだ。考えなしの行動は誰のためにもならない。反省しよう。


「しかし、どうしたものか・・・」


ドアノブはあるが、空間に固定されているような感覚でびくともしな___


「あれ・・・」


「ご主人様、ドアうごいた」


ルノアの言う通り、力を入れたらドアが少し動いたような・・・。


「ちょっとちょっと待ちなさい!」リネアが言う。


「いや、多分これ開くぞ?」


力を入れてドアノブを引いていく


「だから待ちなさいって!」リネアが叫んだ直後___轟音と共にドアは外れてしまった。


「アンタね・・・」


「ご主人様、さすが」


「どう言う原理で開いたのよコレ・・・」


リネアは呆れた様子で言う。しかし、コレで中に入れるのだ。まあ良しとしよう。


「これじゃイシュルドと大してやってること変わらないわよ?」


「う・・・」耳が痛い。


しかし、グラートには悪いがここまでして隠れて奴隷商を営業しているのだ。大っぴらに犯人探しをすることもないだろう。


部屋の中は想像通り事務所のような作りになっていた。


棚の上にはこれ見よがしに見覚えのある水晶が飾られている。


「これ、だよな」慎重に水晶を持ち上げ、手頃な机の上に置く。


あとは、書物に書いてあった通りの手順で儀式を行うだけだ。


2人で水晶を触り、もう一方の手を繋ぐ。


リネアの小さな手から緊張が伝わってくる。


そして儀式の呪文を唱える。



「「偉大いなる女神様に誓う。我々の魂は今ここに一つとなり、一蓮托生の運命を受け入れた。」」



水晶が輝き始める。



「「肉体を分つひとつの魂は共に最期の時を迎えし時まで永遠にそのつながりを保ち続ける。」」



水晶はさらに強い光を放つ。



「「我々は、ここに一蓮托生の契約を結ぶ」」



水晶が閃光を放つと、ステータス画面のような枠が空中に現れた。


「・・・成功みたいね」


リネアと私のステータスには各々の名前の刻まれた契約が表示されている。


リネアの奴隷契約の表示は消えている。


リネアはその表示を見ながら、首元の奴隷の証を触った。


「・・・あれ」


リネアの、いや、私の首元にも見覚えのない紋が刻まれいることに気づく。


「これって、この契約の証ってことか?」


書物にはそのような記載はなかったが___


「す、すまんリネア。結局似たようなのが・・・」


「いや、いいのよ。別に」


そう言いながら首元をさするリネアは、なぜか嬉しそうに見えた。


___________


その日の夜。


「結局、一日中探し回ったけど私たちに雇えそうな馬車は無かったわね」


いよいよ王都への移動を開始しようと息巻いたが、前世のような交通機関での移動とはいかない。


快適な移動のためには自分たちで馬車を借りるのが最善だが、残念ながら今の蓄えで手の出せるサービスではなかったようだ。


「セリオさんたちに頼んで何とかしてもらうってのは流石にまずいか?」


「ちょっと今はやめておいたほうが良いかもしれないわね」


「・・・そのこころは?」


「セリオさんもギルド長もグラートさんと知り合いだからよ」


「あっ・・・なるほど」


我々は今日グラートの商店に思い切り侵入して水晶を無断使用している。


リネアの奴隷契約が解除されていることが知れれば妙な詮索を受ける恐れがある。


ほとぼりが冷めるまでこの町を出ておくのが良いかもしれない。


このまま我々だけでどうにかする方法を探すほうが良さそうだ。


__________


「それで・・・あの子のことは決めたの?」


リネアが聞く。


恐らくルノアのことだろう。


工房の一件をお願いするために奴隷契約をしたが、片付いた以上彼女に奴隷契約を強制する必要はない。


「決めるって言ってもなあ・・・」


ルノアと出会ってから数日。あまり彼女のことを深くは知らないが___


「ルノアも連れていくつもりだ」


少し前にリネアも言っていた。この社会に少女を1人解放してもどうにもならないというものだ。


それに、工房や水晶の件で私たちの力になってくれている。


「ルノア、少しいいか?」窓際で外を眺めていたルノアを呼ぶ。


「ご主人様・・・なに?」


「俺たちは明日から王都を目指す。ルノアもくるか?」


「・・・ルノア、ご主人様のいうこときく」


「あ〜それなんだけどな」ルノアはいつものように答えるが、この際だからこの件に関しては解決してしまおう。



「ルノアとの奴隷契約はここで解除しようと思うんだ」



そう言うと、ルノアの表情が一変する。


「ちょ、ちょっとアンタ!言い方!」リネアが強烈な打撃を入れながら叫ぶ。


「痛った!?あ、ああ!スマン、ルノア。そういう意味じゃないんだ!」慌ててルノアを抱き抱える。


「ルノアと今後は仲間として一緒に行動しようって話な!紛らわしい言い方をしてすまん」


そう言うと、ルノアは少し落ち着いたようだった。


「アンタねぇ・・・ちょっとは相手の気持ち考えて発言しなさいよね」その様子を見ていたリネアが呆れた様子で言う。


「奴隷契約を解除すること自体は、大丈夫か?」改めてルノアに聞く。


「・・・いや」


「え?」


ルノアの答えは意外にもノーだった。


「いや・・・ルノア、またびょうきになる」


顔を伏せながらそう言うルノアを見て考える。


なるほど、スキル“悟り“で回復したルノアがその効果から外れることは、例え問題がなかったとしても怖いものだろう。


スキル“悟り“は効果によって対象の状態異常を完全に消滅させるので、対象から外れたからと言って再発する恐れはない。


ただ、幼いルノアにとってはその説明だけでは安心するに十分でないだろう。


「そうか・・・わかった。安心できるまではこのままでいようか」


そうして、私とルノアの主従関係はそのままで王都へ向かうこととなった。

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