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第十九話 四方八方へ煽り散らかし

「それじゃあ、とりあえず戦力確保ね。戦力自体で取る戦略も変わるから…。」

バウムが言うと2人とも頷いた。ホワイトショコラとバウムがやり取りをする。

「僕は西側の人たちに声かけてみます。」

「じゃあ、私は東側の人たちね。くれぐれも…人は選ぶようにしましょ。最悪の場合ここの別荘がバレたり、カヌレちゃんに加担してると警察に通報されかねないわ。うまくこちらの情報は誤魔化しましょう。」

その言葉にホワイトショコラが頷く。2人は玄関の方へ行くと、カヌレの方を振り返った。

「しばらく待っててね、カヌレちゃん。」

「何かあったら、キッチン横の電話で、すぐ電話してくださいね。」

カヌレがうん!気をつけてと言うと、2人は微笑んで山小屋から出て行った。


その頃、サバランは新しいコーヒーの粉を棚から出し、お湯を注いで新しいコーヒーを作っていた。そのままリビングにいるカッサータに、視線を向けずに声をかける。

「カッサータ。女怪盗ソルベは、わりと黙っているけど調子はどう?」

彼女の明るい声が飛ぶ。

「問題ないわよー♡女怪盗だから、カッサータちゃんとじっくり監視してるけど、特にお縄は解けないみたい。なんか可愛いね。」

そう言って、きっと睨むソルベのほっぺをツンツンする。柔らかーい、けど…とカッサータは微笑んだ。

「上品なお肉ね。いいお肉食べてるでしょ。羨ましくて、ちょっと欲しくなっちゃうかも。手元に置いとくクッション的な?」

そう言ってカッサータ、やばい女だと思われちゃう…と恥ずかしげにほおを染めた。女怪盗ソルベが表情ひとつ変えないのをみて、ポムが静かに息を呑む。するとその横で、シュトーレンがいきなり銃を発砲した。銃弾は誰にも当たらなかったが…。マドレーヌが不満げにガムテープ越しにフンフン唸る。自分の近くに撃ち込むんじゃねぇとでも言いたげだった。

「はは。すまねぇな。お前の動きが面白いもんでヨォ。」

シュトーレンの言葉にマドレーヌが不服げに睨みつける。そしてサバランがコーヒーを入れ終わり、満足げにリビングへ戻ってきた時だった。

パサッ。

静かだが、わずかに響いた音にサバランが即座に気づいた。おや?とにっこりと微笑み、振り返らずに言う。

「…怪盗ノクターンですか。わたしの懐に忍び込みにきたんですか?」

予測済みですよ?と笑った。怪盗ノクターンは銀髪と黒いマスク越しに、不敵な視線を向けながら、サバランの背後に位置した。すぐにシュトーレンが銃口を向ける。怪盗ノクターンは全く表情を動かず、大胆不敵な笑みを浮かべていた。

「やだぁ〜?怪盗ノクターンって、結構イケメン。それってカツラ?それとも地毛?…え〜、カッサータ欲しくなっちゃうかも。銃に怯えないところとか、好感度高すぎ。」

カッサータがニコニコとして彼の方に視線を向ける。シュトーレンもいつでも発砲したいという狂気の笑みを浮かべていた。サバランがまぁまぁ2人とも落ち着きなさいと宥めた。すっと視線を横にずらし、頭を動かさず後方を盗み見る。

「…何か証拠でも奪いに来ました?それともわたしと一騎討ちにでも?んふふ、君が私の懐に来るのは予見していたよ。例え…新聞の正体が本物であろうとなかろうと、どちらでも良い。君は必ず私の元に来るだろうと踏んでいたよ。何か策はあるのかい?」

じとっとした視線が怪盗ノクターンに突き刺さる。彼はふっと微笑むと、全く臆することなく、歩き始めた。そして全員が見守る中、ポムの横にあるソファにゆったりと座り、足を組んだ。優雅さにカッサータが静かに見惚れる。あまりの余裕にサバランがフフと笑う。

「…私の仲間になるのなら、それはそれで大歓迎だけどね怪盗くん。」

「俺が、仲間になるだと?フフ…面白いことを言う。」

彼が言うと、すぐにシュトーレンが近くに発砲した。だが怪盗ノクターンは聞き飽きたとでも言いたげに、チラッと彼の方を一瞥するとサバランの方に視線を向けた。

「怪盗は孤高な存在だ。誰かの下につくなどあり得ない。それに一騎打ちなどしない。怪盗は、あくまで盗み専門なのでな。…手元に沢山のものがあるのなら気をつけた方がいい。俺の格好の標的だ。」

彼が不敵な笑みを浮かべると、サバランは静かに目を閉じた。優しい声を飛ばす。

「確かに私には今沢山のものがありますが…。別に多少盗まれてもいいでしょう。もちろん、五体と命の保証はしませんがね。ところで、そんな怪盗くんは何を盗みにきたのかな?私の悪事の証拠ですか?それとも僕の正体?恥ずかしいねぇ!」

サバランが照れくさそうにもじもじすると、彼はすぐそばにいるポムの縄を掴んだ。不敵に笑い、彼をみる。

「…こいつらを盗みにきた。」

思わぬ言葉に全員が静かに驚く。サバランが少し目を細めつつも、ほう…と呟いた。

「まさかの捕虜ですか。いえ…あなたの正体に関わっていると考えれば何も不自然じゃありませんが…。私の悪事とかをバラした方が良いのでは?」

「俺は盗むのが専門と言っただろう?…悪事をばらすのは怪盗じゃなく、探偵だ。」

彼が不敵に微笑み、ソルベに声をかける。

「…縄解けるだろう?ポムを任せる。俺はそこの男探偵と助手を運ぶ。」

女怪盗ソルベが静かに頷き、パラっと縄を解く。カッサータとシュトーレンが即座に構える中、サバランが怪盗の言葉を静かに考えていた。

「確かにそこには男の探偵がいますね。しかし…その言い草はまるで。この紳士の、年配の方の対戦相手を…すでに手に入れているとでも?このクソガキッ!」

サバランがプンスコ怒ると、彼は不敵に微笑んだ。

「さぁ?ただ…そうだな、キスぐらいはしたかもな。」

思わぬ言葉に、は?!と全員の目がまんまるになる。その隙をついて、怪盗ノクターンがフィナンシェとマドレーヌに近づき、2人の体の縄を掴む。同時に女怪盗ソルベも即座にポムの体の縄を掴む。シュトーレンが即座に銃を放つが、2人はマントを翻し、銃弾を避けた。人質を持ったままそのまま一瞬にしてその場から消え去った。カッサータが慌てて人質と怪盗たちがいた場所を駆け回り、シュトーレンが入り口の扉を確認するが…どこにもいない。入り口の扉に関してはいつのまにか開いている。

「チッ…逃げられたか。すばしっこいな。」

「え〜残念。でも、あの怪盗カッコよかったから…今度見つけたら、カッサータのものにしちゃおうかな♡」

2人の言葉を聴きながら、サバランは静かに腕を組んだ。視線を下に向けて1人考える。

「…不思議ですねぇ。あの捕虜を奪いに…?まぁキスは嘘の可能性もあるのでなんとも言えませんが、彼はやはり私と同じように…?カヌレ探偵を支配下に置きたいみたいですね?ふむ。面白くなってきたぞぉっ♡」

サバランが笑い声を上げると、カッサータとシュトーレンもニコッと微笑んだ。


怪盗ノクターン一行は、少し離れたとある森の中に来ていた。人が少ないので、すぐにポムとフィナンシェ、マドレーヌの三人を解放する。ノクターンがマドレーヌの口についたガムテープを外したら、即座にマドレーヌの羨ましそうな声が降りかかった。

「ちょ!キスしたって本当かよ?!マジ?!俺いつもキャバクラでキスなんかできずに、やってるっつーのに…っ!」

その言葉に、怪盗ノクターンが少しニヤニヤしつつ言う。

「ああ、したぞ。直前まで文句垂れてたがな。俺がキスした途端、探偵の面が消え去って、普段見せないような、とろけた目でこっちを見てな…。」

「羨ましいッ!ずりぃぞ!」

マドレーヌがノクターンの両腕を掴む。彼が不敵に微笑んでいると、縄の解かれた探偵フィナンシェが、小さくため息を吐く。

「にわかには信じ難いね。それに、彼女がそんな蕩けた表情をするわけがない。カヌレは探偵だ。君のような怪盗に落ちるわけないだろう。」

怪盗ノクターンはすっと目を細めた。懐から焼き菓子を取り出して、目の前で食べながら言う。

「ほう?面白い意見だな。」

「ちょっと待て、なにを呑気に食べているッ。それ僕が、彼女に差し入れしたお菓子じゃないか!」

探偵フィナンシェがマドレーヌに打って変わり、怪盗ノクターンの胸ぐらを掴む。怪盗も怪盗で素知らぬふりして、もぐもぐと焼き菓子を平然と頬張っている。女怪盗ソルベに縄を解かれつつ、ポムが男らのわちゃわちゃをじーっとみた。

「…なにしてんの、あいつら。なんで怪盗ノクターンもノクターンで、煽り散らかしてるのよ。」

静かに呆れる。ハァ…とため息を吐く。そのポムの様子に気づいた怪盗ノクターンが、ポムに向かっても煽り散らかす。

「カヌレがあんなに赤くなっていたからな、あれじゃあ探偵業も捗らないかもしれないな。別の仕事でも今のうちに探したらどうだ?」

「ハァ?!ふざけないでよ、アンタ何してくれてんのよ!仮面引っ剥がしてやるッ!」

すぐにポムが怪盗ノクターンにつかみかかる。その様子を静かに女怪盗ソルベが見守っていた。冷静を装っているが僅かに口角が上がっていた。


「…んで、あたしらを解放してどーすんのよ。」

ポムが不満げに文句を垂れる。怪盗ノクターンはふっと微笑むと、静かに言った。

「俺の正体の誤解を解かなければならない。そのために、お前たちを解放したわけだ。」

「何か策でもあるのかい?」

フィナンシェの訝しげな声があがる。彼は懐からカセットテープを何個も取り出し、女怪盗ソルベに渡した。

「俺がカヌレだけを煽りに行ったというのは、大間違いだ。これには、カヌレ以外の探偵の事務所に行き、煽り散らかしている映像が保存してある。」

「確かに僕のところに来て煽り散らかしたこともあったが…ちょっと待て、君は一体何人の探偵に喧嘩を売りに行ってるんだ?」

フィナンシェの困惑した声を無視して、怪盗ノクターンが続けた。

「これをテレビ局にこっそり仕掛けてくれ。全チャンネルがこの映像になるように、仕組んである。だが、時間だけは注意だ。今からカヌレ探偵の助手には、警察に捕まってもらう。その後でそのカセットテープを放映するようにしてくれ。」

女怪盗ソルベが静かに頷くが、ポムがサラッと言われた発言を聞き逃さなかった。驚いた顔でくってかかる。

「ちょっと!あたし、警察に捕まるの?!」

怪盗ノクターンは静かに頷いた。

「ああ。お前たち4人が捕まった上でそのテープを放送後、俺がどこかに盗みに入れば…警察はお前たちが怪盗ではないと認めざるおえないだろう。」

確かに…?とポムが認めると、彼は勘違いするなと微笑んだ。

「俺は、お前たち4人が怪盗だと言われていると、非常に困るわけだ。決してお前たちの為じゃない。だがまぁそうだな…強いて言うなら、カヌレの口を盗…。」

「盗ませないわよ。」

即座にポムが切り返した。じっと視線をノクターンに向ける。腕を組んだ彼女を見て、彼はフッと笑った。

「今頃は、なにも喋れなくなってるかもな。」


そのころカヌレは山小屋で1人、サバランへの作戦を練っていた。生姜湯を飲みながら、悶々と考えていると、ふと先ほどの口の感触を思い出した。眉を顰め、悶える。ちょっぴり恥ずかしく思いつつも悔しいので、生姜湯を流し込む。

「くっそーー!なんか…残ってる気がするっ。そりゃファーストキスは運命の人と…とか夢見てたけど…怪盗かヨォ!怪盗って聞こえはいいけど、要は盗人の知らん男じゃねぇか!」

んぎいいいいと唸ると、キッチンへ走った。すぐに口を水で濯ぎ、手洗い石鹸で口元を念入りに洗う。水で濯ぐとハンカチで口元を拭き、ふーっと息を吐いた。

「多少まだ残ってる感じするけど…あースッキリした…。」

椅子に座り直し、生姜湯を飲む。生姜美味しい〜と一息つきながら、バウムが置いていったクイニーアマンを頬張っていた。


「そこの男2人は、ここに行け。」

そう言って怪盗ノクターンがピラっと紙切れを渡す。フィナンシェがそれをみると住所が一つ書かれていた。

「これは?」

「カヌレのいる場所だ。仲間もいる。」

全員が驚くと、彼は後で警察から解放された後のポムや、ソルベにも渡すと言った。

「よし、全員それぞれやることはできたな。ソルベ、途中までポムを頼む。うまく警察に捕まえさせてやれ。」

その言葉に彼女が頷く。フィナンシェの静止も聞かずに、怪盗ノクターンは直ぐにマントを翻し姿を消してしまった。残された全員は顔を見合わせると、それぞれ動き始めた。


そのころ、サバランはじっと考えていた。ソファに座りながら、どうしたもんかと考えを巡らせている。コーヒーを啜りつつも、視線はあちこち彷徨っていた。

「サバラン様。これからどーすんだ?」

シュトーレンの言葉に彼は困りましたねぇ…と笑った。

「いやいや負けたわけじゃないけどね?多分だけど…あの捕虜たちを解放して、カヌレ探偵を地下通路から救い出すんだろうけど…うーん?サバラン、困っちゃうよぉ★せっかく盤面綺麗にしたのにぃ?まぁそれはそれで面白いですが。」

彼がクックっと笑いつつも、シュトーレンに命じる。

「とりあえず、地下通路見てきてくれる?多分カヌレちゃん、もういないんじゃないかな〜?一体どこから、どうやって消えたのかは分からないけど…やだ、キスの魔法だったりして♡ときめいちゃうっ。」

両頬に手を当てて、腰を揺らし照れまくるサバラン。カッサータも便乗して、ときめいちゃう〜♡と照れる。シュトーレンが笑いながら分かったぜ、見てきてやるよと言って部屋を飛び出した。その直後、ちょうどテレビで速報が流れた。

「速報です。怪盗ノクターンの正体の1人、ポムが逮捕されました。」

「あら…?あの子、警察に逮捕されちゃった?」

カッサータが訝しげに首を傾げる。ちょっとだけ微笑む。

「やっぱり怪盗ノクターンも、あのカヌレ探偵が狙いなのかしら〜。」

サバランは静かにテレビをじっと見ていた。パトカーに乗り込み、署へと連行されるポムが映っている。が…サバランはふと微笑むと、コーヒーのコップを手に持ち、ぐびっと飲み干した。

「何かありそうですねぇ。少しテレビを見ててみようか。」

そう言ってソファにゆったりと沈み込む。すると次の瞬間、いきなりテレビの画面が切り替わった。驚くカッサータの隣でサバランがニタリと笑う。

「やはり、何か仕組んでたようだね。銀のネズミくん。」


一方そのころ、山小屋でたまたまテレビをつけたカヌレも驚きの声を上げていた。

「ポムが捕まっちゃったか…!」

悲しそうな目でテレビを見て飲んでいたら、次の瞬間に画面が切り替わり、いきなり怪盗ノクターンが出てきた。思わず生姜湯を変なところに飲み込み、ゲホゲホと咳き込む。テレビでは、怪盗ノクターンがカヌレたち以外の探偵の事務所に潜り込んで、煽り散らかしている。

とある男の探偵の事務所では、探偵机に腰掛け羽ペンを手のひらで回している。男の探偵の罵声が飛ぶ。

「怪盗ノクターン!ふざけるなっ。」

「良い筆ペンじゃないか。もらうぞ。」

そのまま姿を消したと思ったら、今度はまた別の事務所にお邪魔してるのが映し出される。怪盗ノクターンが、堂々と探偵机にごろんと寝そべっている。

「帰れ!怪盗が!」

「ちょっとお邪魔しただけだろう?」

あまりの堂々とした有様に、カヌレがむせつつ涙目でテレビを見る。するといきなり今度はカヌレたちの探偵事務所が映った。まさに新聞記事に載ってたシーンである。隣でゴロンと寝そべってる瞬間が少しの間映し出され、次の瞬間カヌレが声を上げてソファから転げ落ちるところまで映った。生姜湯入りのコップを握りしめながら静かに呟く。

「あの野郎……。」


その頃警察署では騒ぎになっていた。

「なんだこの放送は!止めろ!」

「ダメです!今警察がテレビ局に入りましたが…テープが細工されていて、止められません!」

なんだと…と男性がつぶやく。困り果てながら映像へ視線を向ける。

「全く…怪盗など、信用できるか!」

ダンと机を叩いた男性に直ぐ近くの男性が、困った顔で笑う。

「いやぁ〜。やられましたね。怪盗ノクターンの正体として4人を捕まえましたが…あの4人ではないことが判明してしまいました。それにいろんな探偵を煽り散らかしてるので、カヌレ探偵との共犯関係は嘘に…。」

「奴もきっと今頃俺たちを嘲笑っているんだろう…!くそ怪盗め!」

再び悔しそうに顔を歪める。周りの警察も少し悔しそうな顔をしていた。すると、テレビの中の怪盗が探偵に向かって言った。

「煽り散らかすしかないだろう?そもそもお前たち探偵は、怪盗を追っかけるが、警察のように逮捕権無いじゃないか。」

その言葉にテレビの中の探偵がぐっ…と言葉を失うと同時に、警察が全員思わず叫ぶ。

「それはそう!」

警察たちの賛同に答えるように、怪盗ノクターンが畳み掛ける。

「俺を追いかけたところで、逮捕できないのだから、警察の迷惑になるだけじゃないか?」

「おっしゃるとおり!」

警察たちが叫び声を上げる。

「今日から怪盗ノクターンを推すか!」

「よし、4人を解放するぞ!」

警察たちがおーー!!と雄叫びをあげた。その瞬間映像が切り替わり、急に予告状がテレビに映し出された。全員が驚いたようにテレビを見つめる。

ーーー一般人を捕まえたようだが、俺はここにいるぞ。

    残念だったな、警察。

    アーモンドホテルにある宝石、ピンクオパールを頂戴する。

    怪盗ノクターンーーーーーー

警察全員が眉を顰めた途端、直ぐに電話が鳴り響いた。警察の1人が受話器を直ぐにつかむ。

「もしもし?」

「怪盗が現れました!アーモンドホテルです!宝石が盗まれました!」

「なんだって?!」

驚く一同は即座に慌ただしくなった。直ぐにアーモンドホテルに警察を派遣する。

「奴を逃すな!宝石を取り返せ!」

「はっ!」

直ぐにドタバタと走り去っていく警察。残った人間が困ったように言う。

「あの怪盗ノクターンの正体と言われていたのは…?」

「全員釈放だ!時間がかかっていると、マスコミに変に疑われる。どのみち事情聴取は済んでるんだ。特に怪しい点もない。直ぐに解放してやれ!」

「はっ!」

直ぐに敬礼して数人の警官が慌てて部屋を飛び出していった。


テレビを見ていたカヌレの元に、山小屋の扉がコんこんとノックされた。彼女が恐る恐るドアを開けると、フィナンシェとマドレーヌがいた。

「2人とも!無事…。」

言いかけた言葉を飲み込む。いや結構応急処置で済まされてるが、まぁまぁ負傷してる。彼女が2人を繁々とみると、フィナンシェがごほんと喉を鳴らした。

「話は中でしよう。」

カヌレがおずおずと山小屋の中に招いた。


一方その頃、サバランはテレビを見ながらおや…と驚いたように言った。

「盤面がひっくり返されてしまいましたね…。おやまぁ、見事に綺麗に…。あ、でもまだフィナンシェくんのは…。」

そう言いかけた時、テレビにフィナンシェの推理が間違ってなかった証拠が映し出された。新聞記者が賄賂を受け取り、あのような記事を書けと言われていた時の映像と音声が流れる。もちろん指示を出しているのは、サバランの部下の部下の部下の部下だが…。彼はおほほっと笑った。

「おや、手ぬかりないみたいで何よりです。いやー困っちゃいますね。こんなに盤面ひっくり返されたら…頑張っちゃうぞサバラン!君にカヌレ探偵は渡さない。彼女には地獄に落ちてもらいたいんだからな。さて!シュトーレンくん!」

その言葉を言うとともに、シュトーレンが地下通路からちょうど帰ってきた。彼は悔しそうな表情をしていた。

「チッ…地下通路はいなかったぜ。どこにもあの女はいない。その上で、俺たちの知ってる扉は全部閉まっていた。マジで一体どこから逃げやがったんだ?」

あーあと言いながら手のひらで銃をくるくると回す。そんな彼に目を細めて微笑みかけるとサバランは言った。

「シュトーレン君、頼みますよ。彼らは戦力を集めて、ここに来ることでしょう。ここの立ち回りはシュトーレンにお任せしちゃう♡奴らを少しでも足止めしてね。もしくは全員…撃ち殺しても構いません。とにかく回収するか、足止めするか…任せたよ。」

シュトーレンは不敵に笑い声を上げると、返事の代わりに天井に向かって銃を放った。そしてサバランが今度はカッサータの方へ行く。

「カッサータ、君は怪盗の隠れ家に行ってください。怪盗ノクターンがお好きなら、せっかくなら…自分のものにする良い機会でしょ?サバランが協力しちゃう♡チャンスあげちゃう♡…というわかで、お前もシュトーレンと同様、足止めをしてくれ。もちろんあなたのものにしようがかまわない。住所はそうですね…ここの隠れ家なら絶対来るでしょう。頼みますよ?」

そう言って一つの住所が書かれたメモを手渡す。彼女はウフフっ♡と笑うと、にっこり微笑んだ。ぺろっとメモを舌でなめると、分かったわと頷いた。サバランは2人を見て満足そうに頷く。

「それでは私も、裏からこっそり彼らに…手を伸ばすとようかな★」


がちゃん。

ガレット刑事が驚いた顔で牢屋の鉄格子を見る。

「出ろ。お前たちの容疑は晴れた。」

看守に言われて、ガレット刑事が静かに立ち上がる。少し眉を顰めつつも、カヌレたちの仕業か?とこっそり思う。看守をじっと睨みつけた。

「俺が怪盗ノクターンだったらどうする?」

「その可能性はない。今やつは盗みを犯し、警察に追われているからな。」

思わぬ言葉に彼が驚くと、対面の牢屋からきゃーーーっ♡という、クレールの嬉しそうな声が響いた。ガレット刑事と看守が思わず視線を向ける。

「怪盗ノクターン様素敵っ。盗みに入って私達を解放してくれるなんて…もう元々私達を救うために盗みに入ったの?ああーーっ!もうそんな…どこまで計算高くて、私をいったいどんだけ惚れさせれば気が済むの?!いけめーん♡抱かれたい…。私のこと盗み出して欲しいけど、でも宝石を盗んでるお姿も尊くて…もう360度どこから見ても本当にイケメンでカッコ良さしか見えない!体内構成率カッコよさ百%で出来てるんじゃないの?!」

両手を顔に手を当てて、嬉しそうに両頬を赤く染める彼女を見て、看守が静かにドン引きする。ガレット刑事がクレールを指差して、思わず口走る。

「もうこいつ、このまま牢屋の中にいても問題ないんじゃないか?」

その言葉にクレールがブチギレた。鉄格子につかみかかり、罵声を飛ばす。

「なによこのくそ刑事!乙女を牢屋にぶち込んだままにしようっての?!ありえないわよ!こんなところじゃシャワーも浴びれないじゃない。怪盗ノクターン様に、何日もシャワー浴びてない汚い私の姿なんて見られたらそれこそ発狂しちゃうわ!絶対出さないなんて許さない。というかそんなこと言ったんだから、後で私のタックルかましてやんよ、覚えとけ。」

あまりの脅し文句にガレット刑事も流石に引く。看守がチラッと彼の方を見たので、ガレット刑事はため息を吐きながら看守に言った。

「こいつも釈放してやれ。」

直ぐに鉄格子ががちゃんと音を立て、クレールが元気よく飛び出す。

「あー!良かった〜。怪盗ノクターン様、やっぱり素敵…♡」

惚気始めるのを見守りつつ、2人は看守とともに牢屋から離れた。


その頃ポムもまた別の場所で、釈放されていた。いきなりほっぽり出されて、一応周囲を見る。人通りは少なく、一応皆テレビの影響を受けてなのか、ポムを見つけても騒ぎ出す人はいない。怪盗ノクターンの影響力が大きいのだろう。

「流石ね…。」

ポムが1人静かに感心していると、ちょうど近くの曲がり角に錦玉羹が現れた。ちょいちょいと片手で近くに来るように手招きしている。ポムが慌てて近くの曲がり角まで向かうと、彼女は静かにメモを渡した。

「この住所に行って。ノクターンがみんなに渡すように作ってくれた奴。」

「あ、ありがとう。」

直ぐに紙切れを受け取る。が、直ぐに訝しげに首を傾げた。

「あなたは一緒に来ないの?」

「私はまだ、ガレット刑事とクレールたちに渡してない。後で彼らとともに行く。先に着いたら、事務所の執事は警察に連行されたけど、傷がひどくて病院で治療を受けてると言っておいて。」

その言葉にポムが分かったわ…と頷いた。直ぐに目の前から去っていく錦玉羹を見つつ、静かにほっと一息つく。

「良かった…タタンは無事なのね…。あたしも早く、カヌレの元にいかなくちゃ。」

ポムもくるりと背を向け、紙切れに書かれた住所を頼りに歩き出した。


ようやく辿り着いた山小屋をポムが静かにノックする。もしこの渡された紙に書いてある住所が…とんでもないもので、錦玉羹と思っていた女性が違う人だったら…という不安に苛まれつつもじっと待つ。

(もし、カヌレの時と同じように誰かに変装されてたら…あたしはまた…。)

静かに祈るように扉が開くのを待つ。すると扉は予想に反して勢いよく開いた。思わずぎゅっと目を閉じる。

「ポム!」

聞きなれた声が響いて、彼女が目を開けるとカヌレが笑顔で扉を開けていた。

「良かった!無事だったんだね!」

その元気な声に、ポムは静かに本物だと理解した。

「カヌレ…っ…。」

自然と目が潤んだ。ぱっと彼女に抱きついた。カヌレは少し驚きつつも抱きしめ返してくれた。ポムが本当に良かった…と震える声を響す。カヌレの目も少し潤む。山小屋の奥からはそんな2人の再会を、フィナンシェとマドレーヌが優しく見守っていた。


読んでいただきありがとうございます!

再び深夜投稿すみません!

しかし、その代わり今回は二話投稿!と言うわけで…引き続きお楽しみください

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