一緒に願おう
森を抜けてアジトへ戻る道すがら、ミアは珍しく無口だった。
ゴーグルを下げたまま、靴の先で小石を蹴りながらとぼとぼ歩く。
(……なんで、パターン読み間違えたんだろ。あたしが失敗したせいで、みんな危なかった)
誇らしさや高揚よりも、胸の中には不甲斐なさがじんわり広がっていた。
フェリシアはそんなミアを、ちらちらと心配そうに見ていた。
さっきまで無邪気にはしゃいでいたミアが静かだと、なんだか世界がちょっと静まり返ったみたいに感じた。
「……ミアちゃん、大丈夫?」
フェリシアが小さな声で尋ねる。
「え? あ、うん……。別に、何でもないってば」
ミアは無理に明るく笑ってみせるけれど、その笑顔はいつもの元気とはどこか違う。
アジトに戻ると、ユノとカティアが待っていた。
ユノは優しい目でミアを見て、そっと椅子を引いた。
「ミア、今日の作戦、すごく助かったよ。
……落ち込んでる?」
ミアは目を伏せたまま、頬をふくらませる。
「……読みが甘かった。三体目、全然気づけなかったし。
あたしがもっとちゃんとしてれば、フェリシアもカティア姉ちゃんも危ない目に遭わなかったのに」
フェリシアがすぐ隣に来て、ぽん、とミアの背中を軽く叩く。
「でも、ミアちゃんのおかげで二体も倒せたし、みんな本当にすごかったよ?
わたしなんて怖くて逃げてばっかりだったし……」
その時、カティアが低くも温かい声で言った。
「誰のせいとかじゃない。今日の戦いはみんなで生き残った。それだけで十分だと思うわ」
少し空気が和らいだところで、フェリシアがユノに向き直る。
「……ねぇ、ユノお姉ちゃん。
さっきの魔法、本当にすごかった。
あれ、どうやって出したの?」
ユノは少し戸惑いながらも、首から下げたペンダントを両手で包み込む。
「うまく説明できないんだけど……あの時、どうしてもみんなを守りたいって思ったの。
星に祈るみたいな気持ちで、すごく強く願ったら――雷が落ちた」
フェリシアは憧れと不思議そうな顔を向ける。
「星霊族の力って、そんな風に願いが魔法になるの?」
ミアはそっと顔を上げ、ユノの横顔をじっと見つめる。
「ユノ姉の魔法……前から不思議だったけど、今日のは本当にすごかった。
……わたしも、星にお願いしたら何か起こせるかな」
ユノはミアの方を見て、ふっと微笑んだ。
「ミアは十分すごいよ。でも、もし本当に困った時は、星もきっと力を貸してくれる。
その時は――一緒に願おうね」
静かなアジトに、優しい時間が流れていく。
それぞれの想いが、少しずつ前向きに重なっていった。