作戦決行
森の中、濃い朝霧と木漏れ日が混じる。
岩陰にしゃがみ込んだミアは、ワイヤーや煙玉を次々と並べながらニヤリと笑った。
「ふふーん、今日の主役はこのミア様だね!ほら見て、トラップ増量スペシャル。AIドローンなんて余裕っしょ!」
フェリシアが隣でケープの端をぎゅっと握りながら小声で心配する。
「でもミアちゃん、もしバレたら……ドローンってピーピーうるさいから、村にまで聞こえちゃわない?」
「大丈夫大丈夫!うちの仕掛けは一発で終わらせる用だから。フェリシアはさ、逃げ道見張っててよ!」
「う、うん……がんばる~」
その様子を見て、カティアは軽くため息をついた。
「全く……ふたりは緊張感ってもんがなさすぎなのよ。ミア、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「カティア姉ちゃんは心配性すぎ!あたし、こう見えても昨日から何回も偵察してパターン把握したんだってば!」
カティアは少し呆れたように、それでもどこか頼もしそうな顔で剣の柄を指で軽く叩く。
「……まあ、失敗しそうになったらフォローはしてあげるけど。
ただし暴走しないでよ?ユノも指示、忘れないでね。」
ユノは小さく頷き、でもどこか遠くを見るような目をしていた。
自分でも理由が分からない焦燥感が胸に残っている。けれど、今はみんなと一緒にいるこの時間が、とても大切に思えた。
「うん……みんなで村を守ろう。絶対に――」
ミアが急に真顔になってユノの顔を覗き込む。
「ねえユノ姉、最近なんかボーッとしてない?昨日の会議の時もぼんやりしてたし。もしかしてまた変な夢でも見た~?」
フェリシアもぱちぱちとまつげを瞬かせて同調する。
「ユノお姉ちゃん、夜ちゃんと寝てる?この前も朝ごはん二回食べてたよねぇ……」
「えっ、うそ、食べてたっけ……?」
ユノはちょっと照れたように微笑んで、ごまかす。
「だってユノ、いっつも考えすぎて寝られてないんじゃない?たまにはミアみたいにパーッとやるのもアリだってば!」
ミアが元気に指を鳴らす。
カティアがふっと笑う。
「ふたりとも、作戦中よ。……まあ、ユノは確かに考え込みすぎだけど、
その分ミアが無鉄砲なんだからちょうどバランスとれてるんじゃない?」
「え~?それ褒めてる? バカにしてる?」
「どっちもよ」
その瞬間、ミアがワイヤーをぴしっと引き、岩陰から顔を出して合図を出す。
「来た!一号機、オンステージ!」
AIドローンがゆっくりと近づいてくる。
カティアが剣を構え直し、フェリシアがドキドキしながら後ろで手を握りしめる。
「さあ見てなさい、これがミア様の華麗なるお仕事だよっ!」
ワイヤーのトラップが炸裂、ドローンのセンサーに閃光弾。
カティアが間髪入れずに踏み込み、剣でドローンのコアを一刀両断――
「うお、決まったー!見た?見た?これぞ天才!」
「ミアちゃん、すごーい!あれ、煙がモクモクで目がしみる~」
「全く、浮かれすぎよ……まだ終わってないからね」
二体目も同じく、ミアの指示とトラップ、カティアの剣技、
フェリシアの小さな支援魔法の連携で見事に撃破。
「今日はイケイケどーん!……って感じじゃない?あたしたち!」
「うんうん、みんな最強だよ~!」
安堵したそのとき。
ミアが眉をひそめて周囲を見渡した。
「……あれ、ちょっと待って。パターン的には二体で終わりだったはずなのに――」
その言葉の直後、森の奥から電子音。
3体目のAIドローンが、警告音を響かせて木立から現れた。
「ちょ、マジで!?予備いたの!?」
「やばっ……ユノお姉ちゃん、どうしよう……?」
カティアが即座に前へ出て剣を構える。
「全員、下がって!ここからはわたしが前に出る!」
ミアは歯ぎしりしながらトラップの残骸を掴み、
フェリシアは震えながらもみんなを守るために、そっと支援魔法の詠唱を始めていた。
(続く)