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 小屋の外には冷たい朝の風が流れ、山あいの村に静かな光が差し込んでいた。

 ユノは窓辺に立ち、遠く連なる森と、点在する小さな家々を見下ろす――それが、星霊族の生き残りたちの“最後の居場所”だった。


 


 ***


 


 この世界では、AIによる支配がほとんどの人間社会を覆っていた。

 かつて“星の加護”を受けた特別な種族――**星霊族せいれいぞく**は、星の理と共鳴し、魔法や身体能力で人とは異なる力を持っていた。

 しかし、AIと人類の融合が進み、機械による管理が当たり前になった今、星霊族は「時代遅れ」や「危険因子」とみなされ、ひっそりと山奥や人里離れた地に身を潜めて生きるしかなくなった。


 その数は年々減り続け、今や絶滅寸前――

 ユノたちの村もまた、星霊族の血を受け継ぐ者たちが集い、慎ましくも静かに暮らしている。


 


 だが最近、村の周囲でAIの見回りドローンがたびたび目撃されるようになっていた。

 村人たちの間には不安と緊張が広がる。


 


 小屋の中。

 テーブルを囲んだ仲間たちの間で、カティアが真剣な声を響かせた。


「……一つだけ、みんな忘れるなよ。どんなに便利そうでも、村の掟は絶対だ。

“星霊族は機械に頼ってはならない”――これだけは守らないと、私たちはただの人間になっちまうからな」


 その言葉に、ミアが口を尖らせて反論する。


「えー、でもさ、あのAIドローン、分解してみたら面白いかもって思って……ほら、ちょっとだけ使ったらバレないって!」


 カティアは即座に眉を吊り上げた。


「ダメだ。掟は掟だ。お前がやると絶対バレるだろ。

星の加護を失ったら、もう私たちは……」


 ミアは渋々と口を閉じ、ゴーグルを指でいじる。


 フェリシアがもこもこの袖で頬を隠し、不安げに囁いた。


「……でも、星の加護って、本当に消えちゃうの……?」


 ユノは静かにフェリシアの肩に手を置き、優しく語る。


「うん。昔、村の長老様から聞いたことがあるよ。

星の加護は、“星の理”と心を通わせることで宿るんだって。

でも、機械に頼ったら、その絆が消えてしまう――。

だから、村ではどんなに不便でも、機械を使っちゃいけないって……」


 カティアが苦笑まじりにまとめる。


「それが村の掟だ。たとえAIや人間社会がどんなに機械に頼っても、

私たちは自分たちの力だけで生きていく。それが、星霊族としての誇りだ」


 


 石造りの小屋の中、みんなが一瞬黙り込む。

 外の世界がどれだけ変わっても、

 この村の中では、星の光と掟だけが揺るがない道標だった。


 


 だが、その“誇り”も今や風前の灯火。

 AIは人知れず星霊族の村に興味を示し、監視を強めている。

 見回りのAIドローンは、ただのパトロールではなく、何かを探るように村を観察し続けていた。


 


(AIは星霊族に何を求めているんだろう……?)


 ユノは無意識にペンダントを握りしめる。

 自分たちが“希望”と呼ばれた時代は、もう遠い昔のこと。

 それでも、仲間たちとこの掟だけは守り抜きたい――

 そんな思いがユノの胸に灯るのだった。


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