リスタート
https://47826.mitemin.net/i995065/
(ここは……?)
暖かな空気、微かに焼きたてパンの匂い。見覚えのある小さな部屋。
記憶の奥底で何かが引っかかる。「――戻ってきたんだ」と、ぼんやり理解しながらも、頭の中はもやのように靄がかかっている。
(私……どうしてここに……?)
思い出そうとするほど、未来の出来事は指の隙間から零れ落ちていく。
それでも、たしかに“みんなを守らなきゃいけない”という切実な思いだけは、胸の奥に焼きついていた。
ユノはゆっくり立ち上がり、小屋の扉を開けた。
石造りの小屋の中央、丸い木のテーブルを囲み、カティア、ミア、フェリシアが既に集まっている。
テーブルの上には村の地図や手書きのメモ、簡素な食器が並んでいた。
「……やっと来たか、ユノ。寝坊しすぎだぞ?」
カティアがからかうように片眉を上げて笑った。
その姿――まだ、血にも泥にもまみれていない、元気なカティアがそこにいる――それだけでユノは一瞬、涙がこぼれそうになった。
ミアがゴーグルを額にずらし、元気よく手を振る。
「おはよー、ユノ姉!今日の作戦会議、超たのしみだよ!」
フェリシアはもこもこのケープを揺らしながら微笑む。
「ふわぁ……ユノお姉ちゃん、おねぼうさんだねぇ……。みんなで一緒に朝ごはん食べよ~?」
ユノは笑顔で返すが、心の奥底には小さな焦りが灯っていた。
(この日常が、いつか壊れる――私はそれを知っている。でも、どうして? 何が起こるんだっけ……)
「で、今日の議題だけどな」
カティアが指で地図の端を叩く。その部分には“村”と“森”の境界線、そして赤い印が記されていた。
「最近、見回り用のAIドローンが森の近くで何度も目撃されてる。放っておくと、村まで来る可能性が高い」
ミアが得意げに指を鳴らす。
「だからさ、あたしが昨日、ちょっとだけ近づいてみたの!そしたら、AIドローン、二体は確実に確認済み。多分、まだ他にもいるよ!」
フェリシアが心配そうに袖を握る。
「こわいよぉ……見つかったら、どうなっちゃうの?」
カティアは仲間たちを順に見回し、真剣な口調で続けた。
「今のうちに森で叩いておくべきだ。数が増えたり、本隊が来たら手に負えなくなる。全員で策を練るぞ」
ユノは何かを思い出しそうになりながらも、言葉にならず、ただ静かにうなずいた。
(私は、未来を知っている。けど……何が正解だった? どうやって、みんなを守ればいいの?)
心の奥で、星のペンダントが静かに光った気がした。
「よし、じゃあ――作戦会議、始めるぞ!」
丸テーブルの上、仲間たちの声と笑顔が交差する。
ユノは、その温もりを胸に刻みつつ、もう一度、この運命に挑むことを決意した。