ピーチでピッチピチ
「メロちゃん!」
「ピーチちゃん!」
メロン農家の一人娘のメロと桃農家のピーチは大の仲良し。同い年ということもあり、お互いの境遇も似ていた。
「今日はどうしたの」
「ごめんね、急に呼び出して」
「ううん、ピーチちゃんならいつでも来るよ!」
「うん・・じつはね」
いつも明るいピーチちゃんの顔が曇っていた。この表情は見覚えがある。
「桃が売れないの」
「やっぱりね」
「豊作で余っちゃって」
「うちのメロンも最近まで余ってたのよ」
「味は例年の中でも最高なのに」
「わかるわかる」
「メロちゃん!助けて!!」
「いいよ」
「え」
街の服屋に服を買いに行こうと誘ったら返ってきたみたいに気軽なものだった。
「わたしのこよりくんは、かわいい女の子の頼みなら絶対に助けてくれるから」
「わたしのこよりくん」
「うん、おなかの赤ちゃんのお父さん」
「え」
知らなかった。いつのまにかメロちゃんが大人の階段を登っていた。後継ぎまで作っていた。
わたしのこよりくん。
一体どんな男の子なんだろう。
「こよりくんでーす!」
目の前には、この中で誰よりもかわいい女の子がいた。栗色の髪が黒のメイド服にとてもよく似合っていた。
「旦那様は男です」
「こよりくんは男だよ」
「そして、わたしの赤ちゃんのお父さん」
「!?」
部屋の温度がまた急激に下がる。
「旦那様」
「いや、ボク知らないよ」
「これは今夜はフォーピースですね」
「特濃を注いでもらわないと」
「まだ妊娠してませんけどね」
勘弁してよメロちゃん。
「桃が余って捨てるしかないんです」
「いいよ、うちで全部買おう」
「ほんとですか!?」
「そのかわり手伝ってほしいことがあるんだ」
「なんでもやります。たとえ夜伽でも!!」
「いらないよ!!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
それから一週間後、ボクたちはシェリルお嬢様の誕生日パーティー会場にいた。
もうすぐこのパーティー会場は戦場になる。
「スタッフの皆さん、あとは打ち合わせどおりにやってください」
「「「はい!!!」」」
ガヤガヤガヤガヤ
貴族様たちが会場入りする。主役のシェリルお嬢様が壇上で挨拶をはじめた。
「今夜はわたしの誕生日に集まってくださり、本当に感謝している」
「その礼としてシルヴィの誕生日でも料理を振る舞ったレストランを呼んである」
「好きなだけ、時間の許すかぎり楽しんでほしい」
「乾杯!!」
さあ戦闘開始だ。
「なんだこれは」
「牛丼とカツ丼だと」
「これが噂のドンブリか」
「汁がご飯に染みて・・・たまらん」
ふふん、貴族様はドンブリなんて食べたことがないだろう。牛丼はミノタウロス、トンカツはオークの肉を使った。
「寿司をくれ!」
「あいよ!!」
「あ、マグロだけじゃないぞ」
「マグロ、イカ、タコ。そして、だし巻き玉子です」
「イカのシコシコ感とタコのプリプリ感がたまらん!!」
「玉子も甘くて美味しいぞ」
「やはりマグロは美味い!!」
ミリアさんは寿司をさらにパワーアップさせてきた。
スパゲッティもソースはシルヴィの時とは違うソースを用意した。たとえバイキングが二度目でも飽きさせない、驚きを忘れてはいけない。
「これは本当にカレーなのか」
「黒いぞ」
「だが美味い」
「本当だ。スプーンが止まらない」
「悪魔のカレーとはこのことか」
カレーマスターのマイが「ご貴族様、殺ってやるです」という顔をしていた。何も入れてないよね。よね。
米しかいらないは、あえてシンプルなお粥にした。ごちそうばかりでは胃も疲れてしまうからね。極上厳選米を極上の塩で味付けしたものに極上の梅干しを乗せた。
「ああ、連日のごちそうで疲れた胃袋に染みる」
「大人にしかわからない贅沢だ」
そして今回も女性の人だかりを作ったのは酪農王国とメロンにメロメロだった。
「桃のソフトクリームよ!」
「こっちは桃まるごと一つ使ったピーチパフェよ!!」
メロンにメロメロのメロンは切った物を並べた。今回の主役は桃農家のピーチちゃんちに決めていた。
「桃の上品な甘さがたまらないわ」
「わたし、今回もここから動きませんことよ」
大盛況だった。
さらにご貴族様を喜ばせたのがお土産。極上選りすぐりの桃を木箱に入れてお渡しした。
シェリル様にも喜ばれ、パーティーも成功。さらにピーチちゃんちの桃余りも解消して三方が幸せな笑顔になった。
ボクも嬉しい。
シェリルお嬢様が壇上に呼んだボクを「わたしの婚約者を紹介する!」さえなければ。
店に帰ったあと、バイキングスタッフ女性陣に正座させられてのお説教はキツかったよ。




