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一石二鳥の冴えた食材の仕入れ方(冒険者登録してみた)

彼は女の子にしか見えなかった。


はじめは友達の少ない娘が同性のお友達を連れてきたと思った。話を聞いて本当に男の子だとわかって驚いた。


彼の名は神人かみとこより。娘と同じ十五歳。しかも、娘を襲うオークを武器も使わずに倒していた。また驚かされた。


その驚きは続く。彼はわたしたちのレストランの弱点を一目で見抜いた。そして的確に改善点を教えてくれた。


彼には宿がないという。うちには空き部屋がいくつかある。無償で泊めることにした。


「彼を繋ぎ止めなければ」


商売人の勘がそう告げる。


「この子を手放してはいけない」


女の勘も強く告げた。わたしは覚悟を決めた。女の武器を使ってでも彼をここに繋ぎ止めることを。これは生きるために必要な行為。


旦那に死なれて十年。枯れていた女の芯が熱くなる。体の奥が期待している。いつのまにか下着が汚れていた。


わたしはレミリア。十四才でエミリアを産んで十九歳で未亡人になった女。ちなみに、こよりくんには嘘をついた。


納戸なんどには死んだ旦那の服がいくらでもあった。けれど彼にはメイド服しかないと嘘をついて着てもらった。


正解だった。何人かの若い男がこよりくん目当てで来店した。明日からはもっと増えるだろう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


ちゅんちゅん。


「知らない天井だ」


ボクは神人かみとこより。中学三年生の男子。


昨日、とつぜん異世界に飛ばされた。そしてオークに襲われている女の子を拳法の技で助けた。そのまま食事をごちそうになり、レストランの手伝いをした。


夕飯もごちそうになり、お風呂までいただいた。そしてなぜか女将おかみまでごちそうになってしまった。


いや、正確にはいただかれてしまった。


さようならボクのはじめて。でも、ほんと昨夜のレミリアさん、凄かったなあ。


さて起きますか。

「冒険者ギルドにようこそ!」


ボクはエミリアに連れられて冒険者ギルドにいる。冒険者登録をするためだ。


「あ、その前に納品してくるね。こより、待ってて」

「うん」


昨日、ボクが倒したオークの討伐証明を提出するらしい。肉も買い取ってもらえるが、それほど高くない。そのため冒険者のほとんどが肉は自分で食べ、討伐証明に必要な右耳だけを提出していた。


なるほど。オークを討伐して賞金を稼ぎ、肉を食材にすれば、一粒で二度美味しい。一石二鳥だ。仕入れと考えれば、無料のものを売るから原価もゼロなのがいい。オークあなどりがたし。


「エミリアちゃん、おはよう」

「ラミリアさん!おはよう!」

「あらオークの換金ね。はい、一体で五

万ウェン」

「ありがとう!!あと冒険者登録もいいかな」

「誰がするの」

「この子。こよりちゃん!」

「あら。かわいい子」

「ボク男だよぅ」


ボクが異世界に来た時の洋服は洗濯中で、お店のメイド服を着ていた。


「え。嘘」

「付いてますから」

「はぁ」


信じられないという顔をされてしまった。


その時だった。後ろから下卑げびた声がかけられる。


「おいラミリア!さっさと換金しろよ!」

「いまこちらを対応してますから」

「そんなガキ。後回しでいいだろうが」

「そうはいきません」

「二人とも上玉だな。どうだ俺の夜の相手をしたほうが稼げるぜ」

「!!」


絵に描いたようなカス冒険者だった。少し痛い目にあわせてやるか。振り向いてツカツカとカスの前に立つ。


「素敵なおじさま。もう少し待っていていただけませんか」

「なんだお前は。すっこんでろ」


右手でボクの左肩を掴もうとする。掴ませてやる。その瞬間、両手で冒険者の右手を固定する。そのまま後ろに体重移動して腰を降ろす。


「イダダダダダ」


膝をついたね。くるりと体を左回転させてカスを転がす。両手でカスの右手をめたまま、首に膝を降ろす。


「グエッ!!!」

「まだ、やるかい」

「やめてくれ!俺が悪かった!!」

「二度と近づくな。次は首をへし折る」

「わかった!!」


そそくさとカスが逃げていく。


「あなた強いのね。それでいて美しいわ」

「あら。お褒めにあずかり光栄です」


優雅にメイド風のポーズをきめてみた。何人かの女冒険者が「素敵!」と言ってくれた。ありがとう。


冒険者登録をすませて、エミリアと近くの山にサラダ用の野菜や山菜の採取にむかう。


お昼の営業時間まで、あと二時間。往復の時間を考えると一時間くらいしかない。少し急がなければ。


まだオーク肉は残っているから、今日もポークステーキ食べ放題でいいだろう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「これがレタス!これがキャベツ!」

「あー、ボクの国とまったく同じだ」


ピンときた。


「ねえエミリア。これとかこれとかこれとかって調味料はある」

「あるよ!どれもそんなに高くないし」


決まりだ。よし今日は豚は豚でも違う角度から攻めてみよう。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「今日はトンカツ食べ放題!」

「キャベツもご飯もスープもお替り自由!」

「三時まで時間無制限だよ!!」

「おひとり様、千九百ウェン!!」

「はい。三名様ご来店!!ありがとうございます!!」


これまた大盛況だった。なんとこの世界では油で揚げるという習慣がなかったのだ。まあ油は高くて貴重らしいけど、捨てるわけじゃないし。


そもそも肉も野菜も原価ゼロなんだから。オークの賞金もあるし。細かいことはどうでもいいんだよ。


珍しいうえにサクサクジューシーなトンカツ。そしてザクザクと千切りしたキャベツ。かける濃厚ソースが、またたまらない。


「なんだ、これは!!」

「美味い!」

「ソースをかけるとキャベツもこんなに美味しいなんて」

「お肉もサクサクだぞ!」

「ご飯がすすむ!」


うんうん。油の魅力ってすごいよね。


ボクも道場で汗を流したあとに食べるとんかつ定食が大好きだった。


二日目もバイキングは大繁盛で終了した。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


カポーン


「お風呂はいいねぇ。命の洗濯だよ」


ガチャ。あれ誰か入ってきたぞ。ボク二人に「お風呂さきにいただきます」って声をかけたよね。


「!!」


そこにはバスタオルで体を巻いたエミリアとレミリア母娘がいた。


「こよりさん。今日もありがとうございました」

「こより!お礼に背中ながしてあげる!!」

「じゃあ、お願いします」


ここで相手。とくに女性に強く出られると断ることのできない"総受け体質"がでてしまった。


コシコシコシコシコシ


レミリアさんがタオルで背中を洗ってくれる。昨夜のことを思い出してボクのニューナンブがむくむくとマグナム44にサイズチェンジしていく。


「本当に女の子みたいな肌」

「タオルで洗うと傷ついちゃうね」

「あらそうね。なら手の平で洗いましょう」

「え」


石鹸を手で泡立てたレミリアさんの両手がボクの体をまさぐる。


「ちょ」


前のほうまで洗い出したぞ。そこ、コリコリらめぇ。


ぱくっ


「むぐむぐ。ここもちゃんと洗わないとね」


マグナムがエミリアの小さなお口でお掃除されてるううう。


いつのまにか背中もレミリアさんの体で直接洗われていた。


ボクは神人こより。異世界にきて二日目で親子丼を味わってしまう異世界人だ。


ァッーーーーー。



はい異世界シニアです。


カレーライス食べ放題だと言ったな。あれは嘘だ。


次回、異世界バイキング。カレーライス食べ放題。ナンもあるよ。


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