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ポークステーキ食べ放題(時間無制限)

気がつくと異世界だった。


ボクは神人かみとこより。中学三年生の男子。女の子みたいな見た目だけど、股間にはちゃんとマグナム44をぶら下げている。


なぜ異世界だとわかったのか。だってボクと同い年くらいの女の子をオークが襲ってるんだもの。目の前で。


オークとは頭が豚のモンスター。体は大きく、力も強い。女と見れば襲い子供を産ませる。つまり、あの女の子はオークにヤられる寸前なわけだ。


「ブヒィイイ!!!」

「誰か。誰か助けて!!」

「はいよ」


ボクは身長が二メートル以上あるオークの後ろに忍び寄る。そしてオークの左足ひざ裏に全体重をかけた。やってることは膝カックンだ。オークはバランスを崩して後ろにすっ転んだ。


さらにそのすっ転んだ頭のところには、まるで狙ったかのように大きな石があった。


ゴスッ


かわいそうに。女の子を襲っていたオークは、不慮の事故でお亡くなりになってしまいましたとさ。


石を置いたのも、オークを転がしたのもボクなのは、ここだけの秘密だよ。


「キミ、大丈夫」

「はい。助けてくださりありがとうございました」


あら、かわいい。性格もよさそうだ。日本だったら付き合ってるかもしれないレベル。普通に会話もできている。よかった。


「オークが出るかもしれないのに何をしていたの」

「わたしのうちはレストランなんです。そこの食材を取りに来ました」

「野菜とかキノコとか。あとオークとか?」

「はい。オークは予想外でしたけれど」


なるほど。この世界の人はオークを食べるんだ。


「あ。ボクはこより」

「わたしはエミリアです」

「こよりさん。このオークいただいてよろしいですか」

「いいよ。でもどうやって運ぶの?」

「わたし、収納スキルありますから」


シュン


おお、二メートル以上あるオークが異空間に収納された。さすが異世界。凄い。


「エミリアちゃん。ボクも街に連れて行ってくれないか。どうやら迷ってしまったみたいだ」

「はい。こよりさんは命の恩人ですから、ぜひうちでご飯も食べていってください!」

「ごちそうになるよ」


こうしてエミリアのレストランで食事をご馳走になることが決まった。


「どうしてこうなった」


ボクは神人こより。女の子によく間違われるけど男の子だ。それなのに、なぜかフリフリスカートのメイドの格好をしていた。


「本日、ポークステーキ食べ放題です!」

「サラダにスープ、ご飯もおかわり自由!」

「時間は三時までなら無制限。お一人様千九百ウェン!!」

「はい。二名様ご案内!!」


ふと二時間前を思い返す。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


「娘を助けてくださり、本当にありがとうございます」


エミリアちゃんのお母さんのレミリアさんが深々と頭を下げる。ここは大衆レストラン「バイキング」。


母子二人でお店を切り盛りしているらしい。味がよいのでお客様はたくさん来るけれど、忙しくて二人では回しきれないのが悩みのタネ。


女二人ということもあるのだろう。食い逃げまで発生していた。


ご主人は十年ほど前に事故で亡くなったそうだ。まだ三十前の品の良い美人さんなのに、もったいない。


さっそく、オークのポークステーキをご馳走になる。


美味い。オークが好きになりそうだ。通常はこのステーキにライスとスープをつけて千三百ウェンのランチメニューにしているとのこと。


ちなみにウェンはえんと同じ感覚だ。


ピンとアイデアが浮かんだ。


「バイキングをやりましょう!」

「え」

「ポークステーキ食べ放題をやるんです」


母子にバイキングのメリットを伝える。先払いだから食い逃げの心配がないこと。お客様に自分で料理を取ってもらうから人手が少なくても回ること。皿の返却もやってもらえれば更に労力が減ること。


何よりも新鮮な豚肉がタダで大量にある。やらない手はなかった。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


ボクも手伝うことにした。泊まるところがないと話をしたら旦那さんの部屋なら無料でいくらでも泊まってくれていいそうだ。助かった。


三人の役割分担を決める。


ボクは呼び込みと会計。テーブルの片付けやセッテイング。


レミリアさんは調理に専念してもらう。手が空いた時は皿洗いと皿やフォークとナイフ、スプーンの追加をお願いする。


エミリアは料理や食器、フォークやナイフの追加。手が空いたら皿洗いをお願いした。


食べ放題のメニューは


サラダ

スープ

ポークステーキ

ご飯

フルーツ


を並べた。通常のランチセットより少し高くなるけれど、肉やご飯をお腹いっぱい食べたい人で満席になった。


結果的にバイキングレストランは大成功した。この世界にはない形式だったのも受けた理由の一つだろう。


あと呼び込みをしている栗色の髪の毛のメイド服を着た女の子がかわいいと噂になっているらしい。


それボクだよ。


だってサイズが合う洋服がレミリアさんのお古しかなかったんだもん。女装趣味じゃないんだからね。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


閉店後、お風呂をいただく。この世界にもお風呂はあるんだ。嬉しいな。


レミリアさんの亡くなった旦那さんの部屋のベッドに潜り込む。


コンコン


「はい」

「レミリアです。少しよろしいでしょうか」

「どうぞ」


レミリアさんは下着が透けるネグリジェを着ていた。目のやり場に困る。


「こよりさん。今日は本当に助かりました」

「そんな。レミリアさんの努力の結果ですよ」

「こんなオバサンだけど、お礼をさせてくれる」

「え」


シュル。レミリアさんが裸になった。


はい。やってしまいました。正確にはいただかれてしまいました。


だって、ボクは健全な男子だもの。


異世界シニアです。


またしても恥ずかしながら帰ってまいりました。


今回はこよりくんに少し異世界を冒険してもらいます。


わたしの趣味にバイキングレストラン巡りがあります。


異世界でバイキングレストランを経営したらどうなるだろう。食材は。ルールは。時間無制限は。


そう考えたら一話を書いていました。


次回、異世界バイキング。カレーライス食べ放題。ナンもあるよ。

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