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4話 共鳴(3)

どちらの彼女が本当のアリーなの?

胸を締め付けられ脈がドクンッと大きく脈を打ったその瞬間、視界がーー真っ暗になる。


耳鳴りがして時間が止まったように音が聞こえなくなり、視界が暗くて何も見えないはずなのに霧の奥に人影が映る。


生暖かい風が私を包み込み聞こえるはずのない爆発音とガチャリと“鍵が開いた”ような音と共に霞がかった映像が流れてきた。


ーー『……も、いつもッ!お姉様ばかり!……

私の方が……なのに……ッ……どうして!』


『アリーッ!……いて!お願いッ!……それ以上……よ!』


『アリーッ!……セレナッ!……ダメだ……』


『どうせ……リアン……いらない……!』ーー


映像が切れるとともに、私は膝から力が抜けてその場に崩れ落ちる。

映像は霧がかかりよく見えず、声もノイズ混じりで何を言っているかわからなかったが、それでも話しているのが自分とアリー、そしてもう一人の幼馴染”リアン”だったのは分かった。


「お姉様ッ!」


「セレナ様ッ!」


「セレナお嬢様ッ!」


「お、お嬢様ッ大丈夫ですか!」


駆け寄ってくるマルセナたちに、倒れていく私に触れるアリー。

しかし私に触れた瞬間アリーは、一瞬体を硬直させ小さく『お姉様……いよ』と呟き頬に一雫の涙が流れたような気がして、まるで私と共鳴するかのように倒れていったように見えた。


薄れゆく意識の中、アレスの「アリシア様!」と叫ぶ声と聞き取れなかったアリーの呟きが耳に残る。


今のは……一体何?


この頃の私たちは本当に仲がよかった、喧嘩なんてした記憶……ないはずなのに。


ーー記憶にない映像が、妙な不気味さを漂わせながら、私は意識を手放した。


目覚めるとーー自室の真っ白な天蓋。


この真っ白さにも慣れた筈なのに、見るたびに嫌になっていく。

自分の部屋なのに不安な気持ちに押し潰されそうになるから。


「お目覚めになられましたか、セレナ様」


アレスが少し心配混じりの声で顔を覗き込む。


「何か飲まれますか?」


「……いええ、いらないわ」


顔だけアレスに向け答える。

彼が居たことで少しだけ部屋が柔らかく感じた。


「かしこまりました。では、お目覚めになられたことを、公爵様と公爵夫人にマルセナさんたちにもお伝えしてまいります」


そう言ってアレスは一礼し、背を向けドアへと歩くが、扉の前で一度立ち止まりこちらを振り向いた。


「……?どうかした?」


「……セレナ様がお倒れになった後、アリシア様もご一緒にお倒れになられ今、お部屋で休まれておられます」


えっ、やっぱりアリーも倒れたの……?


意識が飛んでからのことを思い出せなかったけど、何故かその言葉がストンっと違和感なく落ちてきて納得する自分がいた。

なぜ、彼女が倒れたことに納得しているのかしら?

そのことに疑問を抱きながらゆっくりと上半身だけ起こしアレスに問う。


「アリーは、大丈夫なの?」


「はい、一時的に限界がこられて意識が薄れてしまったようです。セレナ様と”共鳴”されたのかもしれません。少しお休み頂ければ大丈夫かと」


「……そう、それなら良かったわ」


彼の変わった言い回しに、疑問に濃さが増していった。


気を失って、なら分かるけど……限界?


それに、共鳴って……双子だから?


私が考え事をしている間に彼はもう一度一礼し、静かに部屋を出ていった。

彼が出て行った扉を見てからもう一度体をベッドに倒す。


アリーが倒れた事に納得する自分や倒れる前に見えた記憶、気になることはいっぱいあるが、体が重く頭に霧がかかったように曇っていたため、今は考えることを放棄した。


それと同時に、アリーが無事なことに安心出来ている自分の感情に、驚いた。


あれだけの裏切りを受けて……。


あんな冷たい目で見下されたのに。


それでも切り離すことの出来ない”片割れ”の存在に、まだ少しの”愛”を抱いていたことに私は苦味を感じた。


……いろんなことが起きすぎて整理が出来ない。


今起きていることを後で書き出してみよう……。


紙とペンが、必要ね……。


私はそう思いながら目を閉じた。


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