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魔力量平民以下、無属性で悪役令嬢にされた私。ループ百回目で光属性を得て神龍に愛されたので運命を変え、静かに生きます。  作者: 神崎桜夜
一章

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23(2)

「で、殿下?」


セレナの瞳に金色がかった黄色の美しい髪がサラリと揺れるのが映る。


ヴェルシエルがゆっくりと空から地上に降り立ち魔物の前に立ちはだかる。


「王宮騎士団!まずはご令嬢方の避難、および負傷者の保護、出来次第ヴェルシエル殿下へ加勢する!」


そう叫ぶのは夕焼けのように真っ赤な短髪で中性的な顔立ちに、吊り目で切れ長の綺麗な目をしている女性だった。


彼女はこの国の王宮騎士団団長を務めているーーアルディア・カリステラ。


「ご令嬢方、お怪我はありませんか?」


結界の外からアルディアがセレナたちに声をかける。令嬢たちはこぞって大きな声をあげ怖かったと叫んだ。


「貴女様がセレナリア・ラドリディアン様でお間違いないですか?」


セレナが頷くとアルディアは優しく微笑んだ。

その顔に女性だと分かっていながら令嬢たちはドキッとした。


「なんて素敵な方かしら」


こんな状況で有りながらもその中性的な顔立ちに令嬢たちは頬を染めた。


「もう、安心してこの結界を解いていただいて大丈夫です」


アルディアは優しくセレナの結界に触れた。

セレナは彼女の言葉に一息吐いて小さく頷いてから結界魔法を解いた。


「セレナリア様のおかげでご令嬢方に怪我をする方がおられず、王宮騎士団を代表し感謝申し上げます」


そう言ってアルディアはセレナに膝をつき頭を下げた。


「わ、私は私の出来ることをしただけですので」


跪く彼女にセレナは慌てて首を横に振った。

そんな彼女にアルディアはニッコリ笑って立ち上がり一礼する。


「もう少しお話を聞きたいところではありますが、殿下一人に魔物退治を任せるわけにはいきませんのでまたの機会に」


そう言ってアルディアは踵を返し部下にセレナたちの護衛と避難を任せて魔物と対峙する殿下の元へ走り出した。


「では、こちらから避難致しますのでついてきてください!」


セレナたちは団員たちの指示に従って避難をする。

逃げる最中、セレナはチラッとヴェルシエルに目線を向けた。


(……私と一つしか変わらないのに)


彼のその姿はまさにーー。


この国を守る次期王の背中をしていた。


庭園を抜けセレナたちは屋敷の玄関の方に避難をした。

各々、怪我のチェックをしてもらうのに待機し、終わった者から家からの迎えの馬車に乗って帰った。


アリシアは「シエルに会ってから帰る!」っと駄々を捏ねたが怪我のチェックも終わり護衛の騎士も無事だったので、王宮騎士団に強制的に帰らされていた。


(はぁ……。まったくあの子は)


呆れたようにアリシアの乗った馬車を眺めていたセレナにレミリアが話しかけた。


「セレナ」


「レミー!怪我はなかった?」


セレナは笑顔を向けてレミリアを見た。


「ええ、貴女のおかげで大丈夫ですわ。今日は助けてくれて本当にありがとう、指示を的確に出している姿もとってもかっこよかったわ」


「そ、そんな、私は自分に出来る事をしただけただから、でもみんなに怪我がなくてよかったわ」


セレナはレミリアの言葉に少し照れたように頬を赤く染めた。


「本当にお優しいですね、屋敷に戻りましたら手紙を書きますわ」


レミリアはそう言い残し笑顔で馬車に乗り帰っていった。


その後、セレナは自分の怪我のチェックが終わったがユリネスの安否が分かっていなかったのとヴェルシエルが心配で残らせてもらった。


次々とご令嬢が帰って行き人数もまばらになった頃、中からヴェルシエルがアルディアたちと出て来た。


パッと見で傷こそ出来ている様には見えなかったが服は泥だらけになっていた。


セレナはハンカチを片手に話しかけてもいいものなのか迷いながら彼を見つめていた。


「その後の処理が……頼む……ッ!」


ヴェルシエルが彼女に気づき少し目を見開いてからアルディアに何かを言ってセレナに向かって来る。


ゆっくり歩き出して向かっていた足はセレナに近づくにつれ、足早になっていた。


「あっ、で、殿下そのッ!」


セレナが声をかけ終わる前にヴェルシエルは彼女をバッと包み込んでいた。


それは、少し痛いくらいに。


「あ、あの」


セレナが小さく声を漏らすとヴェルシエルは手の力を一段と強くし彼女をギュッと抱きしめてからゆっくりと手を離した。


「セレナ、大丈夫だった?どこも怪我してないかい?」


彼女を映すヴェルシエルの瞳は不安と心配の色で揺れていた。

そんな彼の顔にセレナはゆっくりとハンカチを近づけ、土がついている頬を拭いた。


「私は、この通り大丈夫ですわ。私なんかよりシエル様の方が大丈夫ですか?」


セレナが困ったように眉を下げて答えると頬を拭く彼女の手にヴェルシエルは自分の手を重ねた。


「……本当によかった。君がこのお茶会に参加していると聞いた時、僕は生きた心地がしなかったよ」


そう言って彼は一つ深い息を吐いた。


セレナの無事を本当に喜び、安心している彼の姿にセレナは心がゆらゆらと揺らいだ。


(どうして……前回の彼は、こんなにも私を心配してくれた事なんてなかったのに……)


優しい彼にセレナは胸が締め付けられた。


その後、ユリネスもかすり傷で済んでいて彼もセレナたちと合流した。


「セレナ、君を送りたい気持ちでいっぱいだけど僕はここの後処理をしないといけないから王宮騎士団の精鋭を数名つける、帰宅まで不安だろうけど気をつけて帰るんだよ」


そう言って微笑むヴェルシエルにセレナは頭を下げる。


「ご配慮、大変痛み入ります。シエル様も無理なされないよう気をつけてくださいね」


「あぁ、ありがとう、お前たちセレナをくれぐれも頼んだぞ」


ヴェルシエルの言葉にザッと王宮騎士団の精鋭の方たちが敬礼をする。


「セレナ、また手紙を書くよ」


「はい、お待ちしております」


ヴェルシエルはセレナの返事に微笑んでから踵を返し現場へと戻って行った。

セレナは少しの間、彼の背中を見送ってから馬車に乗り家路に着いた。

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