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魔力量平民以下、無属性で悪役令嬢にされた私。ループ百回目で光属性を得て神龍に愛されたので運命を変え、静かに生きます。  作者: 神崎桜夜
一章

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21(1)

あれからしばらくその場から動けなかったセレナ。

しかし、いつまでもそのままでいる訳にもいかずセレナは一人部屋へと向かって歩き出した。


部屋までの長い廊下。


彼女は部屋までの道を早歩きをしているはずなのにその廊下は長く、先が無いくらい遠く感じた。

部屋につき重い扉を自分で開ける。


ガチャリ。

扉の開く音に気づき、中に居たマルセナがセレナに声をかける。


「あっ、お嬢様おかえりなさいませ」


俯きながら入って来たセレナにマルセナは優しく微笑む。

セレナはそんな彼女の顔をみたら我慢していたものがとめどなく溢れていった。


(頑張っているのに。まだ、足りないの?やっぱり私じゃダメなの?どうしたら、いいの……?)


セレナの頬を伝う涙は止まってくれない。

彼女の異変に気づいたマルセナはゆっくりセレナに近づいて優しく声をかける。


「……セレナお嬢様、よく頑張りましたね。大丈夫です、私たちはお嬢様が一番、努力をされているのを知っていますよ」


そう言ってマルセナはセレナを抱きしめて背中を摩ってくれた。


「……ッ……」


ずっと欲しかった優しい温もり。

セレナはマルセナの服を掴み、声を殺して涙を流した。


(私ばっかり……本当にお母様との仲を変えられるか分からなくなってしまった……)


しばらくセレナは泣いた。


ようやく落ち着きを取り戻すセレナ。

マルセナが彼女をそっとベッドに誘導する。

セレナはゆっくりとベッドの脇に座る。


「何か温かい飲み物をお持ちしますね」


セレナは彼女の言葉に静かに頷いた。

マルセナは微笑んで一礼し部屋を出て行った。


その後、マルセナがホットココアを淹れて持ってきてくれ、セレナはその暖かさに身を包みながらまた泣きそうになるのを抑えて布団に身を預けた。

マルセナが彼女の頭を優しく撫でる。


「大丈夫ですよ、セレナお嬢様。私たちは何があってもお嬢様の味方ですから」


セレナは泣き疲れ、マルセナの手の暖かさが心地よく瞼が重くなっていく。


「あり、がとう……マルセナ」


「ゆっくりおやすみくださいませ。お嬢様」


セレナは静かに眠りについた。

マルセナはしばらく彼女の頭を切ない顔で撫でた。


それから、数日してアリーがお茶会の日程を伝えにやってきた。

ナタリー嬢の屋敷の庭で一週間後に開催するようだ。


久しぶりの社交の場。

前の人生でも、数えるくらいしか社交の場に参加したことのないセレナは不安が少しずつ募っていった。

アレスにある程度の参加者の確認、ドレスコード、ナタリー嬢の好みなどを聞いて準備を始めた。


思いのほか準備をする事が多くありあっという間に日にちが過ぎていき、遂にお茶会の当日。


朝からマルセナとミレッタがバタバタと準備をする。

今日のドレスコードは自由、セレナは季節に合わせて夏カラーの涼しげな薄水色を選んだ。

スカートの裾には白のレースがあり、肩が少しふわりとしていて袖にも白のレースがある。

前まではあまり着ていないような色だ。

髪はハーフアップにしてもらい薄い緑のリボンを付けた。

準備も整いマルセナ、ミレッタと部屋を出てユリネス、イレイナと合流する。


「おはよう、ユリネス、イレイナ」


「おはようございます、お嬢様!今日のドレスも可愛らしですね」


「淡い色も似合いますがやっぱり赤も」


「はい、はい!遅れてはいけません、玄関へ急ぎましょうお嬢様」


和やかに玄関に向かうセレナたち。

後ろで話す彼らの会話を聞きながらセレナは前を向く。


(変えられないこともまだあるけど……)


前回のセレナは少しずつ1人になってしまい、寂しい思いをした。

確かに今でも家族とは少しだけ距離がある。

それでも、彼女の周りには前とは違い笑顔が溢れはじめていた。


ガヤガヤと賑やかな彼らの話し声を背中越しに聞きながらセレナは小さく微笑んだ。

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