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「知ってはいるけど、ナタリー嬢がどうかしたの?」
アリーは嬉しそうにニッコリ笑う。
「実はね、今度ナタリーの家で私たちくらいの令嬢がたくさん集まるガーデンパーティーがあるんですって招待状を貰ったから一緒に行きましょう!」
ナタリー嬢の家で行われるガーデンパーティー。
そんなイベントは前の時にはなかった。
そもそも、私が誰かの主催したお茶会やパーティーに参加すること自体あまりなかった。
理由の一つはこの時期に既に妃教育が始まり外出している時間がないくらいのスケジュールで毎日、いろんなことを学んでいたからだ。
もちろんそれだけじゃなく、なぜかアリーにはたくさん招待状が届いていたのに、私にはあまり届かなかった。
だから、参加していなかったけどこれから先学園に入学する前に友達を作って人脈を広げておくのはいいかもしれない、その方が万が一のときに助けてくれる人ができるかも。
ただ、主催者があまり行きたくない人物ではある。もしかしたら何か裏があるかもしれないし。
でも、ある意味このガーデンパーティーが今後の私のためになるかもしれないことは確かだ。
「私は招待状を受け取っていないのだけど、伺ってもいいのかしら?」
通常は招待を受けていないのにパーティーに伺うのはマナー違反。
だから、彼女が誘って来たからとは言え本当に伺ってもいいのか疑問だ。
「もちろんよ!ナタリーとはお友達だから大丈夫よお姉様」
「良かったわねセレナ、姉妹仲良くパーティーに出席出来るなんて」
楽しそうにする二人に微笑みながら答える。
「じゃあ、一緒に行くわ」
「本当!嬉しいわ!後でお部屋に戻ったらナタリーにお姉様も出席するとお手紙を書かなくちゃ」
アリーはそう言いながら両手を合わせて喜んだ。
「そうね、さぁアリー、そろそろ時間が来るころだからお部屋に戻りましょうか?ナタリー嬢にお手紙も書かなくてはね。お母様も一緒に戻るから行きましょう」
お母様はゆっくりと椅子から立ち上がりアリーの肩に手を置く。
「もう、そんな時間なのね、じゃあお姉様とっても楽しいお茶会だったわ、また三人でお茶会しましょうね」
アリーも椅子から立ち上がる。
「私も楽しかったわ、誘ってくれてありがとアリー」
私の言葉にアリーは一瞬だけ眉を動かした。
「良かった、ナタリーのお茶会の日取りは改めて伝えるわね、またねお姉様」
そう言ってアリーは私を残してお母様と屋敷の中に戻って行った。
私はそんな二人の背中を見送った後一つ息を吐く。
彼女たちの姿が見えなくなると一気に疲労感が体を襲ってきた。
「大丈夫ですか、セレナお嬢様?」
よほど疲れた顔が、表情に出ていたのかマルセナが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫よ、マルセナ」
「公爵夫人と少し会話が出来て良かったですね」
マルセナは嬉しそうに微笑みを見せていたが、あれは話せたんだろうか。
例え、話せていたとしてもお母様は私よりもずっとアリーばかりを見ていたし、話していたのもほとんど彼女とだった。
やっぱりまだお母様との距離は近いようで遠く離れている気がした。
「そろそろ部屋に戻りましょうかマルセナ」
「かしこまりました」
私は椅子から立ち上がりマルセナたちと庭を後にした。




