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魔力量平民以下、無属性で悪役令嬢にされた私。ループ百回目で光属性を得て神龍に愛されたので運命を変え、静かに生きます。  作者: 神崎桜夜
一章

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そして次の日、朝からバタバタとマルセナとミレッタがお茶会の準備をしている。


「公爵夫人はこちらの色味のドレスのほうがお好みだと思います」


「そうね、うーんでも、こっちの色味の方がアリシアお嬢様と被ることがないと思うわ」


二人がお茶会用のドレスを何着も出して悩んでいるのを、私は鏡の前で見守った。

しばらくして、ようやくドレスや小物が決まる。

私は落ち着いた色味のドレスが好みなのだけどマルセナたちが選んだドレスは白を基調とし薄い紫色の花の刺繍がしてあり、胸元は少しレースがあしらわれていて腰には紫色のリボンがある可愛らしいドレスだった。

髪もドレスに合わせて二つに編み、結び目に薄紫色のリボンを巻いた。


「出来ましたよお嬢様!」


出来栄えに満足そうに笑うミレッタ。


「ありがとう、二人とも」


「公爵夫人とたくさんお話し出来るといいですね」


マルセナは少し眉を寄せて笑う、私も同じような顔をして彼女をみた。


まだお茶会まで時間があるので私は本を読んで過ごす事にした。いつもの窓際の椅子に座り読みかけの本をペラペラとめくる。


私の気持ちとは裏腹にゆっくりとした穏やかな時間が過ぎた。


「セレナお嬢様、そろそろお庭の方へ参りましょう」


「分かったわ」


しばらくしてマルセナに声をかけられ読んでいた本に栞を挟み椅子から立ち上がる。

部屋を出ると待機していたユリネスとイレイナも一緒に庭へと向かう。


「二人ともよろしくね」


二人に声をかけるとユリネスはニッコリと笑い、イレイナは真面目な顔でしっかりと頷いた。ミレッタは私の部屋のメイキングでお留守。


庭へと向かう足がどうしても重く感じる。

いよいよアリーとお母様とのお茶会が始まると思うと緊張が体を駆け巡り強張らる。

サロンから庭に出ると日差しが少し強くマルセナが日傘をさしてくれた。


青葉の匂いが風に乗って香る、まだ初夏だからか暑くはなく涼しさが残る。


遠目にお母様たちがもう席に座っているのが見えた。

本来なら家族の優しい空間が目の前に広がっているはずなのに息苦しいと思ってしまう私は白状だろうか?


「あっ、お姉様ー!こっちよ!」


近づく私に気づき大きく手を振るアリー、その姿をなぜか今にも泣きそうな笑顔で見ているお母様。

10歳に戻ってから気づいたがお母様はよくアリーを悲しげな表情でみている。


何故お母様はこんな顔をするのだろうか?


前の時のアリーは体を悪くして車椅子での移動が主になっていた。

とは言え、歩けないわけじゃなかったので調子がいい時には歩いていた。

悪くなったのは15歳ごろだと思っていたけど、私が気づかなかっただけでアリーはこの時すでに病に伏せっていたの?


もし、お母様がそれを知っているとしたら?

もしそうだとしたら、アリーから片時も離れないという辻褄が合う。

それに彼女の部屋にはよくお医者様が出入りしているからそれも納得できる。


そんな事を考えながら先に座っている二人にお辞儀をする。


「ご機嫌よう、お母様、アリー」


「ご機嫌よう、セレナ、さぁ座りなさい」


「お姉様、見て見て!このトゥカロン美味しいのよ!今、王都で女の子に人気なの!」


私が椅子に座るとアリーはテーブルに並べられているお菓子を差し出してきた。


「ありがとう、アリー」


甘いものは好きなので差し出されたトゥカロンを一つ手に取り口に入れる。

メレゲンとチョコチップの程よい甘さとフルーツの酸味が口の中に広がっていく。


「美味しい」


「でしょ?お姉様ならぜったい好きだと思った」


アリーはそう言って優しげに笑い、お母様はそんな私たちを微笑ましそうにみている。

仲のいい姉妹にそれを見守る母親、それは側から見たら仲睦まじい家族の団欒のひととき。

でも私にはこの光景がまるで作られた奇劇のように見えた。

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