17 光属性(1)
目の前のアルフィン殿は私などそっちのけで本や資料と睨めっこをしている。
光属性の魔法について聞きに来たのにこのままでは時間がきてしまう。
申し訳ないと思いつつ、時間に限りもあるから集中しているアルフィン殿に声をかけた。
「アルフィン殿、そろそろお話しを聞きたいのだけど?」
彼は忘れていたと言いたげな顔をして私を見た。
「あぁ、光属性の事だったね、そうだねー何から話したらいいかな、五属性は知っているよね?ペルトニーくん、あの本を持って来てくれるかい?」
「はいっス!」
ペルトニーは立ち上がりゴソゴソと本を探して持ってきたのは分厚い魔導書。
アルフィン殿は魔導書を受け取ると机の上に置き、ペラペラとページをめくる。
「まず、前提として一般的にある属性が火、水、土、風、木です。これらの五属性は、基本領地の場所に色濃く反映されることが分かっています。例えば地を司るラドリディアン領は土属性を扱えるものが非常に多いとかね」
そういった話はよく知っている。
前回の妃教育で嫌と言うほど何度も学んだから。
「しかしそれとは別の二属性“光“と“闇“は希少性が高く光は創設者の一人、かつて聖女と呼ばれた方とあなたの二人だけ、闇に関しては実在したか定かではないですが、研究者の間では1人だけいたかもしれないと言われています」
「定かではないのに闇属性が属性振り分けに存在するのはどうしてなの?」
アルフィン殿の言葉に引っかかり私は首を傾げる。そもそも前の時にはそんな話聞いたこともなかった。
当たり前のように属性の振り分けに存在していたから気にも留めていなかったし、闇属性はあまりいいイメージがなく話す事そのものがよくないとされている風潮があって闇属性について話す人なんていなかった。
「……この国の創設に関わったとされているからですが、そんな文献は見つかっていません」
「文献が見つかっていないのなら、どうして研究者やアルフィン殿はそんな話を知っているの?」
「創設者の1人の日記にそう記載があったと話を聞いたことや、これまでの研究過程などでそうではないかと言われています、まぁあくまで伝承レベルの話ですし闇属性の話自体をみんな避けますからね」
彼の話が本当でそんな日記が存在するなら内容を確認したい。
もし、内容を確認することが出来れば私が時間を何度もループしたり、10歳に回帰した理由もわかるかもしれない。
私は少し考えてから机に身を乗り出してアルフィン殿に詰めよる。
「ねぇアルフィン殿、もしその日記があるなら私にも見せてもらえる?」
「うーん、ありませんね」
魔導書を読みながらこの話にあまり興味なさそうな彼らから返ってきた言葉は私の期待を裏切るものだった。
「えっ?でも、さっき」
「聞いたと言ったでしょ?私が実際に日記を確認したわけじゃなく……兄から聞いた話なので」
アルフィン殿は私の言葉を遮り魔導書から目を離さず、少し言葉を詰まらせながら言う。
「お兄様から?じゃあ、そのお兄様から日記をお借りできないかしら?」
アルフィン殿は一度顔を上げて私を見たがすぐに私から目を逸らし少し話しにくそうに見えた。
「どうかな?私も日記の実物をみたわけじゃないし、兄は“あの事件後“少し、変わってしまったしね……。以前会ったときに別の人に託したって言ってたから実際、本当に日記が実在していたかも怪しいけれどね」
アルフィン殿はお兄様の話を悲しげに笑って話していた。
彼の悲しげな顔がなんだか、前の人生の私とアリーの関係を思い出させて苦しい。
今のアリーは私を慕っていてお茶をしたりするけれど、今思えば前回の私たちはいつから話さなくなっていたのだろう。
そんな事を考えながら私はゆっくりと椅子に座り直した。




