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魔力量平民以下、無属性で悪役令嬢にされた私。ループ百回目で光属性を得て神龍に愛されたので運命を変え、静かに生きます。  作者: 神崎桜夜
一章

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14 はじめての本音(2)

殿下に部屋に運んでもらいベッドに寝かされる。幸い今回は意識が飛ぶ事はなかった。


ユリネスやマルセナたらも部屋についてきたが殿下が人払いをし部屋には彼と二人だけになる。彼に水をもらい少し休んだら頭の痛みも治った。


「シエル様、ご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした」


私は上半身だけ起こして座る。


「セレナ、体を起こさなくていいよ、もう少し横になっていて」


そう言って彼は椅子から立ち上がりベッドの脇に座り私をもう一度寝かせようと、肩に手を添える。そんな彼の手を優しく離し首を横に振った。


「もう、大丈夫です。それよりも、お忙しいシエル様にこれ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません」


「セレナ、僕は迷惑なんて思っていないよ?でも、僕のほうこそすまない」


殿下は本当に申し訳なさそうに下を向いた。


「僕はこの国の王族で、王太子でありながら血統魔法を受け継がなかった……だから、君が苦しい時に何も出来なくてすまない」


前回の彼は自分が血統魔法を受け継がなくても魔力は歴代最高を誇っていたことに誇りを持っているように見えていた。

でも、目の前にいる彼は違うように見える。

血統魔法を受け継いでいないことへの恐怖と絶望の色を映した瞳に少しだけ震えているように見えた手をギュッと握りしめていた。


もしかしたら、彼は私と似ていたのかもしれない。魔力量が低い私と血統魔法を受け継がなかった彼。

似ているからこそお互いを見るのが怖かったのだろうーーまるで自分の映し鏡のようで。

だから、私たちはお互いを無意識に避けてしまっていたのかもしれない。


私は下を向く彼を真っ直ぐに見つめる。


「シエル様、私は貴方が誰よりも努力をされているのを知っています。例え血統魔法がなくても貴方は充分努力され、民を思っておられます。そんな貴方の努力は他の誰にも真似できないくらい凄いことだと貴方自身が気づくべきです」


私がそう言うと彼は顔を上げて私を見た。

目が合った彼は少し驚いたような顔をしてすぐにまた下を向き、小さくありがとうと呟いた。


「それに貴方は今、私が動けないでいたのを助けてくださったではないですか、私はそのことにとても感謝しています」


そう言って微笑むと彼は下を向いたまま切なげに笑った。


「少しだけ、君が変わってしまったように感じていたけれど……やっぱり君は、変わらないねセレナ」


「そうでしょうか?」


殿下は自分の両手を絡めて握り少し遠くを見つめた。


「そうだね、僕たちはお互い王太子や王子の婚約者としての勉強や訓練が始まって、忙しく会える時間が少しずつ減ってしまった、最初はよく笑っていた君も少しずつ笑顔が消えていって」


悲しげな声で話す彼は私の方を向き直す。


「だから、僕は思ったんだ。君の笑顔を無くしてしまったのは僕なんじゃないだろうかって、そう思ったら少しずつ君に会うのが怖くなっていった」


違うとは言い切れない。

確かに、妃教育は厳しかったし辛かった。

けれど、彼の隣りに立ちこの国を共に守ろうと約束したあの想いが私を奮い立たせていたし、それが出来ることに誇りを持っていたしーー。


何より殿下を本当に大切に想っていた。


でも、彼には私が辛く嫌な思いをしているように見えていたみたいだ。

前回の時はこんな話を彼とすることもなくすれ違ってしまった。

もっと早く話し合っていればと思うが、きっとたくさんの事を経験したあとだったからこそ、私は彼の話を素直な気持ちで聞けれたのだと思う。


「シエル様、これからはたくさんの事を話しましょう。手紙に書いてくださるたわいもない話でもいいので、少しずつ会って話をしましょう」


私は少しだけ眉を寄せて笑う。本当に少しずつ、もう一度彼と歩み寄ってみよう。

その先、どうなるかは分からないけれどきっと彼にも私に言えなかったことが沢山あるんだと思う。

全てを知って理解をしてあげるのは無理かもしれないけど。

今回は一緒に背負ってあげられるかもしれない。


「そうだね」


彼は優しげに目を細め私の髪に手を伸ばし乱れた髪を耳にかけた。

その仕草と優しげな顔に不覚にも少し胸が高鳴ってしまった。


そのあと、しばらくして殿下の護衛が慌ただしく彼を連れて帰った。

彼に私の言葉がどれほど届いたのかは分からないが、彼の闇を取り除かない限り未来に待っているのはあの冷酷な完璧主義者と呼ばれる彼になってしまうのだ。


あんなに誰かを思い優しく笑う彼が居なくなると思うと少し胸が痛む。だからこそ、変えていきたい。


もう一度彼に私を処刑させたりはしない。

未来が変わる事は領地の事でわかった。

でも、あれもたまたまアリーが居たからできた事。


私自身が強くならければこの先の分岐点を乗り越えられなくなっていく。

あれから現れたという報告はないし私も見ていないが、あの夜現れた“魔物“のことだってある。彼は魔物の話を私にしなかったけれど、きっと私を気遣っていたのだと思う。


でももし、これから魔物と戦う事になるのなら魔力に関しても、身体的にも今のままの私では到底戦えないし、むしろみんなの足手纏いになりかねない。


光魔法だって覚えなければ使い物にならないし、魔物の事も調べなければいけない。

やる事が山のようにあるが一つ一つ確実にやり遂げていこう。

これから起こるかもしれない事態を回避して誰も苦しまない未来になるように。


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