7話 小さな決意と記憶(1)
やっと一日が終わり私は屋敷に帰り今日の出来事を思い返す。
光属性が適正なんて……。
もしかして100回目のループで10歳に戻ったのと何か関係があるのかしら……。
そんな事を考えながら夕食もお風呂も終えたので疲れて重たい体をベッドに沈める。
あの後、光属性のこと、血統魔法を受け継いだことをお母様やお父様に報告したけれど、少しだけ眉を動かし「良かったわね」とだけ言われた。
アリーは前回と同じようにその何十倍も喜ばれ祝福されていた。
結局、私が光属性を得てもお父様たちには何も関係なかった。
でも、今は意外と絶望していない自分がいた。
そして、アレスはいつものように皮肉混じりにマルセナは泣いてミレッタは大喜びしてくれたのはとても嬉しかった。
嬉しい気持ち反面、今日も疲れた。
この時代に回帰していろんなことが起きて、気持ちが追いつかないのかずっと疲れる。
でも、今日の選定の儀は他の小さい出来事よりも前との差が大きく起きた。
光属性を得た事、殿下の態度。
どうして変わったのかは今はまだわからないけど、私の動き次第で他の出来事も大きく変えていけるの?
あのループの時は、何をしても98回変わらない最後だったのに。もしかしたら、この先の未来を変えることが出来るかもしれない。
もし、この先の未来を変えるのなら私は自分の魔力や血統魔法を今知っている知識だけじゃなくてもう少し深く勉強をする必要がある。
光属性の魔法なんてそもそも存在があるってことしか知らないし。
これから、使えるようになればあの地獄のような未来を変えられるかもしれないと一縷の望みを胸に抱き眠った。
※ ※ ※ ※ ※
次の日の朝、早速私はミレッタとお父様の書斎へ向かった。
「お嬢様、公爵様に何のご用なんですか?」
「ちょっとお願いがあって」
私の後ろを歩くミレッタは不思議そうに首を傾げている。
「お嬢様が公爵様にお願いごとなんて珍しいですね」
「そうね、今までは特にしたいことも、して欲しいこともなかったからね」
今までは何も望むことがなかった。いや、諦めてしまっていて一人で勝手に決めつけていたのかもしれない。お父様たちは私の願いなど聞いてくれないと。でも今は、この先の未来の為に一縷の望みにかけて書斎までの廊下を歩く。
この廊下も前のときのように暗く静かな廊下ではない。
たくさんの使用人で賑わい、窓からは日の光が眩しいくらいに家の中を明るく照らしている。
「では、したいことができたんですか?」
「えぇ、これから先を左右するとっても大事なこと」
私は含んだように笑った。
「お嬢様、今の顔はとっても悪いことを考えてそうですね」
「……」
マルセナとアレスが居ないからミレッタを嗜める者がいない、そうなると彼女の発言を別の人が聞いていたらかなりまずいわね。
でも、彼女は何の悪気も悪意もなくニッコリと笑っている。
そんな彼女の無邪気さが今の私にはちょうどいいのかもしれないと笑みが溢れる。
「ミレッタ、貴女はその素直な所が素敵ね」
「ありがとうございます?お嬢様!」
少し不思議そうに首を傾げていたけど私の言葉を素直に受け取り、嬉しそうに笑う彼女を見ていたら何だかお父様の所へ行く緊張が少しだけ和らいだ気がして心の中で彼女に感謝した。




