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魔力量平民以下、無属性で悪役令嬢にされた私。ループ百回目で光属性を得て神龍に愛されたので運命を変え、静かに生きます。  作者: 神崎桜夜
一章

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5話 変化の兆し(3)

次の日の朝、マルセナとミレッタが来て私の準備の手伝いをする。普通に新しい日が続くことにまだ慣れない自分がいる。


「そう言えばアリーはどう?」


一緒に倒れた彼女は今どうしてるんだろうとふと思いマルセナに聞く。彼女は私の髪を結いながらニッコリと笑って答える。


「だいぶん回復されたようで今は奥様がお部屋で看病されているそうです」


「……そう、お母様が」


私のところには顔を出しに来ないのにね。

まぁ、あの1ヶ月の時よりは優しいけれど。

10歳戻って数日、お父様だけじゃなくてお母様との距離も感じている。

確かに優しいし気遣ってくれてはいるが溝ができている気がした。

いったい、いつから私たちはこんなに距離ができてしまったのかしら?


「セレナ様?」


どうやら、マルセナが声をかけていたらしいが私は考え事をしていて聞いていなかった。


「ごめんなさい、聞いてなかったわ」


「朝食ですがどうなさいますか?小食堂に行かれますか?」


小食堂……。

まだ彼らと共に食事をするのは気まずい。距離感もかなりあるし、またあの瞳をみると体が震えてしまう。


「部屋に持って来てくれる?」


「いいのですか?」


少し驚いて二人は互い見合いこちらを向いた。そんな二人に私は眉を下げて微笑み頷いた。


「えぇ、軽いものでお願い」


「かしこまりました」


二人は私の行動に何も言わず優しく笑い小さく頷いて部屋を出た。

もしかしたらこの頃の私は気づいていたけど気づかないフリをしていたのかもしれない。

愛されていると信じたくて、だからお父様たちとの距離があの一カ月よりも遠くて近いように感じるのかも。


私は彼女たちが戻って来るまでの間、もう一度ノートを出して確認してみることにした。


今は10歳の春。

魔力測定が終わっていない。

みんな若くなっているし、記憶があるのは相変わらず私だけ。

あとはーー。


アリーのあの瞳。

真っ暗で底が見えないような虚な瞳をこんな小さい頃からしていたなんて気づかなかった。


もしかして、私の記憶が混乱していて見間違えてる?


私が一人で机に伏せながら唸っていると背後からいつものように話しかけられる。


「一人で何を唸っておられるのですか?」


「ッ……びっくりさせないで」


肩を一瞬小さく揺らして、私はため息をつきながらノートを隠すように閉じアレスのほうを向いたら彼は大きな花束を抱えて立っていた。


「どうしたの、その花」


彼が抱える花束を指差しながら首を傾げてアレスを見上げると彼は少し眉を寄せて答えた。


「……ヴェルシエル殿下からセレナ様にとお見舞いのお品です」


「この花が、誰からって?」


私は花束とアレスを交互に見る。

彼は何を言い出しのかしら?

この大きな花束が誰が誰のために用意したものだと言ったの?

アレスが抱える大きな花束は紫のアネモネ。

そもそも何故、殿下は紫色を選んだのだろう。


ピンクや赤なら分かる気がするけれど婚約者に紫?

そう考えている私の顔が何か言いたげだったのかアレスが問う。


「……紫色のアネモネの花言葉をご存知ですか?」


彼の言葉に首を傾げながら考える。

赤やピンクはあなたを愛していますや希望だけど、紫……。


「花にはあまり興味がないから、ピンクや赤は一般的だから知っているけど、紫って……」


「信じて待つです」


考える私の言葉を遮るように彼は答えを出す。

答えを教えた彼の顔は無表情に見えて少しだけ眉を寄せているように見えた。


そんな事よりもあの殿下が?


「信じて、待つ?」


似つかわしくない光景と花言葉に思わずポツリと呟いた。

こんなこと、前の人生のときにはなかった出来事だった。

殿下はいったい何を考えているのかしら?

私の何を信じて待つと言うのだろうか?

花束に混乱していたはずの頭は、あの冷たい目と裏切りを思い出しひどく冷めわたった。


今の時期の殿下は何も知らないだろうけど、私は心の中で私を断頭台に上がらせるくせにと思ってしまった。


そのあと、アレスに花に罪はないので花瓶に生けてもらい、いつも本を読んでいる小さな丸い机に飾ってもらった。


なんだかその光景は一箇所だけ浮いて見えた気がした。


朝食を済ませた後は、部屋で本を読んだり庭を散歩したり図書室へ行ってみたりと案外1日が早く終わり、5日なんてあっという間に過ぎて行った。


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