08話
そこには光輝くシャンデリア、壮大なレッドカーペット、そして……
「「お帰りなさいませ、怜お嬢様!!」」
カーペットを挟んで左右にズラリと並ぶ白メイドや黒執事。
空いた口がふさがらなかった。
「お嬢様!!一人で勝手に学校に行かれるとはなんたる事ですか!!」
「うるさいな~~、別に私に構わなくても良いって言ったでしょ」
「そんな訳にはいきません!!そもそもお嬢様は……」
俺は今、言いあいをしながら歩く2人の後を雰囲気で歩いている。とっと帰ってしまいたいんだが、桜実の鞄は俺の手元にあり、しかも話しかけれる状況じゃない。
「何度も言わせないでよ!!いらないってば!!」
「そんな訳にはいきません!!お嬢様には学校への送迎は厳重装備のリムジン、学校内でもSPを付けていただかなくては」
後ろから話しを聞く限りでは、どうやら桜実は相当な家のお嬢様であり今日、朝に桜実とぶつかったのは勝手に家を抜け出た直後だった感じだ。
「だから……もうそんなのはうんざりなんだって!!」
いきなりの桜実の大声で場の空気が瞬にして静まりかえる。
今の桜実の表情はいつもの攻撃的な感じではなく、弱々しいもの。
何か言うべきなのかな……俺は。
「あ、あの~」
一応何か言おうと声を出してみたが……その後に何を言っていいか分からない。
そもそも俺に何か言う権限はあるのかどうかすら疑問だ。
「何ですかな?……っとゆうか貴方はどちら様ですか」
さっきまで桜実と言い合いをしていた初老のお爺さん執事が脚を止めてこちらを振り返る。
「えぇ〜と俺は桜実の……」
「そ、そうよ!!彼は私の毎朝、毎夕の学校への運転手兼、学校でボディーガードをしてくれる人なのよ」
突然遮られた俺の言葉。
捲し立てる様にいい放つ桜実。
おい、おい、おい……マジかよ。
困惑する俺……そして桜実の勝手な発言に執事さんが了承する訳もなく
「そ、そんな勝手なことは……」
「勝手じゃないわ、私のことなんだから私にも決める権利があるわ」
「し、しかし…………もし不足の事態が起きた場合、失礼ですがこのお方では対処しきれないと思われます、お嬢様のお身体も強くはないんですから……」
「だ、大丈夫よ、私も高校生になって体も強くなったし……しかもこの彼、空手の達人なのよ」
「いや……し、しかし」
何とか反論材料を探す執事さんだが桜実のデタラメ発言で全てそれが塞がれてしまう。
……っつかおい!!
俺は引き受ける何て一言も言ってないぞ!!
「あの…………ぐぅ!!」
言葉を発しようとするといきなり桜実に足を踏まれ睨みつけられ遮られた。
仕方なく涙目で桜実にアイコンタクトを送ってみる。
慧→お前、適当な事を
桜→何、文句あんの。いいから黙ってなさい
慧→だけど……
桜→あの自転車の代金教えてあげようか、軽く100万超えるわよ
慧→!!
何故か通じてしまったアイコンを恨めしく思うと同時にそのまま俺は桜実のされるがまま黙り込んでしまった。