05話
時間が過ぎるのは早い。
あっという間の入学式。
そして各クラスに帰ってのホームルームもすぐに終りとなった。
早い早い、今日は初日だという事で午前中で授業終了らしい。
真幌見の祥吾と一緒に帰ろうと思ったが、あいつは昼から部活を見て回るらしい。
ご苦労な事だ、俺も一緒に見て回ろうとは思ったが……何かやはり乗り気になれない。
部活が面倒くさいというか……やはり居候の身だ、何か良いバイトでも探そうという気持ちが大きかった。
そんなこんなで祥吾とはすぐに別れて一人で自転車小屋に向かったんだが……。
……直前、祥吾に言われて少し気になる事がある。
「あの萌え萌え怜ちゃん……たぶんお嬢様だ……」
「なんで、んな事分かんだよ?」
「俺の直感って言いたいとこだけど……あの桜実って苗字、確か大きな財閥の名前だ」
……まぁ、俺にはあまり関係ないけどな。
結局の所、俺は自転車で学校を旅立とうとしている。
ガコ、ガコ、ガコ
だけど…………
ガコ、ガコ、ガガガガガ
あれ? 自転車の動きが悪い
ガガガガガガガクッ!!
っつか……引っ張られている。
後ろを振り向くと、そこには………ビックリだが何となく予想どおり、桜実 怜が小さい体で自転車を引っ張っていた。
「えーと……何か?」
恐る恐る尋ねてみた。
「あんた……自転車無い私をほったらかしにして帰るつもり」
ものスッゴいドスのきいた声で俺に言葉を発する桜実。
動けないカエルを睨む蛇のようだ。
そして桜実の返答は疑問系なのに、?マークが付いてない。ほとんど決め付けだ。
まぁ……実際、俺は帰ろうとしてたんだけど。
「え、え~とーーそんなー事はーーないーよ」
「言い方がスッゴい不自然なんだよぉ!!」
ブゥーーン!!!!
言うが早いか、風をきった効果音が出そうな程に強力な回し蹴りを桜実は放ってきた。
「おぉ!!!?」
ヤバい……っと思ったその瞬間
「あうっっ!!」
前方の桜実の姿が消えた。正確に言えば片足上げたまま、声と共に地上に落下していった。
どうやら150?ない桜実の身体では予想以上に俺の身長との差があったらしく、蹴りを空かしてしまったらしい。
「お~~い……大丈夫か?」
ほっとく訳にもいかず、しゃがんで声をかけてやる。
「う、うるさいわ!! バカ!!」
桜実はそお強がってからも、なかなかぐったりとして立ち上がらない。
何処か体の一部を強くうったか?と心配した俺は
「本当に大丈夫か桜……」
と俺が本気に心配して声を発し終わらない内に
ぐうぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~ぎゅるるるるるんんんん
地響きにも似た物凄い音がした。
これは、もしかして……。
「腹の……音か?」
コクコクコクコク
と桜実は頷くばかり。
「何か……食べに行くか?」
コクコクコクコク
これまた、顔も上げずに頷くばかり。
きっと恥ずかしさで顔は真っ赤なんだろう。
ここで何か言うのも辞めておこう。
話しがこじれるだけだ、うん。
あと、一つたぶん分かった事がある。何故に俺はこの桜実に拒否反応を起こさないか。
それはたぶん……こいつの普段の粗暴を見て女の子として意識してないからだな……うんうん。
そんなこんなで、俺は後ろに桜実を乗せて学校を出発しましたとさ、まる。