03話
新天地、2日目の朝
窓の外から差し込む日差しによって目を覚ました。
何だかとてもすがすがしい。こんな気持ちは久しぶりだ。
今日は遂に入学式だからな~~
そして本格的にこの体質を治すため努力していかなくては。
とかなんとか思いつつ、携帯の時間を見て俺の跳ね飛んでいた心臓は一気に凍りついた。
「やっベー!!遅刻しちまうぞ、これ……」
とりあえず1階に降りて速攻で準備して家をでた。どうやら澪は学校に行っちゃてて、霞さんは……
「あれ?学校って明日からじゃないっけ?」
違いますよ……。
何はともあれ全力でチャリをとばす。
初々しい高校生特有の空気なんて感じている余韻すらない。
「………………」
でも……焦りすぎた。
焦りと油断。スピードを出しすぎて進んでいた俺は前方右から来た自転車に気付くことが出来なかった。
そして…………。
!!!ドシャ!!!
鈍い音と共に俺の自転車と相手の自転車はぶつかった。
普通ならこれで双方とも大怪我のはずだが、俺の方は何故か無傷。
凄く疑問に思ったが、そんな事より相手側が心配だ。
「大丈夫……怪我は?」
俺は自転車の陰に隠れて姿が見えない相手の方に向かいながら問いかけた。
「大丈夫……な訳ないでしょ!! いったいどこ見て運転してんのよ!!」
――何て言うかその、可愛い
思わず言葉を失い、見とれてしまった。
そこにはどう見たって、身長14?ぐらいな女の子がいた。
その少女は、トゲトゲしい言葉とは裏腹に子供の様な可愛らしい声、背が低いながらも細くスラッとした体の部位、少し茶色がかったふんわりとした長い髪、華奢な手足も細い肩も、少々怒り気味につり上がったパッチリとした眼も、長く綺麗な睫毛も。
――全てが可憐
しかも、自転車をこいでいた為かピンク色に染められた頬。
白を基調としてピンク色のラインが入った制服に、ピンクのひらひらスカート。
とどめに膝上まである黒のニーソックス。
全てが可愛く、とにかく小さくて
でも何故だか迫りくる……計り知れない威圧感があった。
そして……この娘を一目見た瞬間、今まで味わった事のない、まるで電撃が体の中に流れこんだ様な衝撃を受けた。
「す、すみません、急いでいたもんで……」
確かに俺も悪い自覚はあったから誤っておく。
「でも、あんただって注意力不足だろ」
一応相手側の方にも責任はある気がするし……。
「ハァ?……」
威圧的な、さも鬱陶しげな態度で彼女はこちらに視線を向ける。
その視線、正確に言うと迫力をはらんだ目つきの悪さ。
ははっ……膝が震えているよ。
「……もし私の自転車に“対衝撃吸収装置ハイパー”がついてかなったら、あんたも私も大怪我よ!! 感謝されるならともかく責められる事なんて無いと思うけど!」
「そ、そりゃ……そうだけど」
確かにこの娘の言う通りかも知れない。
俺は完璧に女の子の威圧感に負けていた。屈していた。
ってか“対衝撃吸収装置ハイパー”って何なんだ?
「さて……それじゃ、まだ動くあなたの自転車に私を乗せて、私の目的地まで自転車こぎなさい」
「な、何でそんな事……」
俺にだって学校があるんだ、そんなのんびりしてられない。
「私は被害者、あなたが加害者、文句ある?」
だ、駄目だ、こいつには逆らえない。
本能で解る。
小さい体から迫りくる、迫力、勢い、存在感、全てが俺に自由を許さない。まるで、狼に捕らえられた羊の様に……。
「あ、ありません……」
そのまま俺は彼女を後ろに乗せて出発した。
パッと見の第一印象は、洗礼された小さな容姿、そして高飛車で上から目線。
君の言葉によって遮られる俺の言論は無いに等しい物だと感じられた。
拙い文章ですが、これからもお暇な時に覗いて読んでいただけると本当に嬉しくおもいます。