01話
酔った………気持ち悪い。
とりあえず一つ大きく深呼吸。ゆっくり体に流れる空気は新鮮そのもの、目の前に映る景色は見慣れなく、歩いている人も、傾く夕日も違う世界にいるみたいに感じれて、まさに新天地だ。
感慨にふける影は茜色の空を眺め、ふらふら揺れながら進みだす。
しかし凄い列車の揺れだった。景色なんて眺めてたんじゃ気もまぎれやしない。6年ぶりに帰って来たこの新天地なのに第一歩を大きく挫かれた。
新たなる旅路というのは緊張するもの。計り知れない不安と共に俺を蝕む緊張感。酔いも混じってとても不快。はぁ〜、やだやだ。
高校進路を決める段階で、俺は両親に頼み込み昔住んでいた街に戻ってきた。
別に特別この街に凄い思い入れがあった訳じゃなく、戻って来たのには理由がある。……まぁその理由は後で説明しよう。
もやもやした気を取り直して駅から徒歩で目的地に向かう。
進む道のりに、連なる景色と昔の面影……
思ったより昔と変わってない風景になんだかホッとする。
安堵感は体調の回復に繋がったのか気分は良くなり、駅前の商店街を抜けて歩く事、数十分、目的の住宅街、そこの家に到着した。
とりあえず周りをキョロキョロ。挙動不審にみられるだろうか、だけどとりあえず入りにくい。……グズグズしていてもしょうがないので、とりあえず呼び鈴を鳴らそうか。
「はぁ〜い」
チャイムの後、心地よい音と共に優しげな声が返ってくる。
「あ、慧君いらっしゃい、大きくなったわね〜〜」
出迎えてくれたのは俺の母親の同級生である、霞さん。
6年ぶりだけどこんな風に暖かく出迎えてくれて、しかも一目で俺と分かってもらえるのは何だか嬉しいな。
「今日からよろしくお願いします」
内心喜びながら頭を下げる。
幾ら親しくても最初は肝心だ。
「そんな畏まらなくていいわよ、今日から家族みたいなもんなんだからね」
この言葉に何だかホッとした。
緊張感も少し弱まった感じさえする。
「とりあえず、上がって上がって、慧君の部屋は2階だからね〜〜」
「はぁ〜い」
とりあえず家を見つけて中に入る第一の関門突破。
けっこう不安だったんだよな……いろいろと。
だけど、霞さんと会ってみるとそんな心配もいらなかったのかなって安心する。
用意された部屋に入るなり荷物を置いてベッドになだれこむ。
真っ昼間だけど……疲れたし少し寝よ。
意識を手放すのに、それ程の時間はかからず
その後、長旅の疲れと共に俺は眠りについていった。