最終話
誰も君を分からなくても
俺がそこから救い出してやる
“約束だ”
遠退く意識にこの言葉、想いだけが俺の心にいきざんでいた
「…………あ!!やっと目覚ました」
「……え?」
気付くと見上げる先には桜実。
慧はベッドの上で包帯まみれになっていた。
確か記憶ははっきりしないんだけど、桜実と帰っていて……襲われて……過呼吸で…………だ、抱きしめた?のかな。
だけど恥ずかしい事まで思い返してみても何処で意識を失ったか分からない。
「本当にびっくりしたんだよ、何か分からないけど突然凄い汗かいて意識失ったから……」
汗ねぇ…んー…あぁ……何となく理解した。
「怪我が酷すぎたのかと思って…」
「いや、うん…まぁね……」
「何よ……そんなんじゃ分かんないじゃない」
話したくないんだけどな、格好つかないし。
それでも桜実は追求を辞めないので渋々慧は自分の体質について話した。
「え……何それ。男2人を倒す程強いのに、女の子に弱いなんて……格好わる」
グサッ!!
突き刺さる。桜実の言葉が慧の小さなハートを貫く。
「でもでも今は私を見ても大丈夫なの?」
少し拗ねた感じで桜実は聞いてくる。
そう、あの時確かに桜実に……怜に女の子を感じたんだ。あの桜実の姿、生きざま、心意気に……。
あの時感じはした、感じたんだけど……だけど……。
「まぁね、至って普通な桜実には女の子の欠片も感じな…」
「……なにか言った」
「な、何でもないです!はい!」
凄んで言い放つ桜実に怯える慧。
いつものやりとり
いつもの桜実
でもどこか違う……
何でかな……桜実がいやに優しい様な気が……
「ねぇ、その……いいよ」
慧が考えを募らせていると桜実がいきなり喋りだした。
「…何が?」
「だから……もう!わざわざ言わせないでよ! あんたの“女の子苦手症候群”だっけ、克服するの少しは手伝ってあげてもいいって言ってるの」
「え!?本当に?」
「でもいい?勘違いしないでよ。べ、別にあんたの為にやるんじゃなくて私の執事として困るからやるんだからね!」
少し顔を赤くさせながら早口で話し並べる桜実。
分かりにくいけど、これも桜実の優しさの表しなのかもな。
「あと、あとね……」
続けて俺の寝ているベッドにゆっくり近づいてきた桜実がもじもじと言葉を紡ぎ出した。
「あんたは私の傍に……慧は私、桜実怜の傍にいてくれるんだよね?」
流れる優しい風
桜色の想い
一瞬に、一緒に2人は包まれた
「もちろん……約束するよ、怜」
慧の答えに満面の笑みを見せる桜実……いや、怜。
そう、俺は怜を守る。
その理由はお嬢様だからか?
それとも…
………考える間もないか
その理由はお前が“怜”だからだよな
ここでピンク色の世界で怜をずっと見つめている慧に一言
「言っとくけど執事としてだからね、そこんとこ勘違いしないように」
何でかな、分からないが思わず笑みがこぼれる。
「分かってますよ、お嬢様」
「分かればよろしい」
この時、この桜色が続いていってくれたらどんなに幸せかな。
ずっと続きますように…。
「あ、あとさっき聞いた話を言い忘れてたんだけど……あの私達を襲った男達、慧の実力をはかる為にこの屋敷最強執事長の爺に雇われてたらしいよ」
…………。
こんなんだとさ、やっぱり幸せは程遠かったりするのかな…………うん。
――
――――
悲しい時や辛い時、そして寂しい時
いつでも逢いたくなるし
君の笑顔でまた、元気になれる
どれだけの時が過ぎ流れても
誰も君を分からなくても
ずっと想い続けあえる
“そんな存在”
続いていく
繰り返す
桜色に染まる
2人の日々
ここでとりあえず《Love ラブ Cherry~恋のLoveチェリー~》は終了です。
ありがとうございました、またよろしくお願いします。