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プロローグ ~さくら~




自転車で進む道のり。

夕日が照らす茜色の光は土手に降り注ぎ、視界一杯の桜並木を照らしている。


綺麗だ。

不意にこぼれた言葉は誰に聞こえるでもなく、自分の感情をいっそう引き立たせていく。

昼間に見る桜や夜に見る桜もいいんだろうが、夕方に眺める桜もまたいい。桜の隙間から射し込む茜色は、見る人を幻想的な世界へと繋ぐ架け橋となってくれている。


静かに自転車を止めて、風に揺れる桜を見上げる。

見入ってしまうのは包み込むこの温かさと、どこか儚い脆さの責か…。

吹き抜ける風が運んできたのは桜のひとひらだけじゃない。刹那、頭を過る表裏一体なこの感覚はきっと俺はどこかで経験している。どこかで……。


「……―――」


揺れる木々や花ばなの音に混じり、別に聞こえる音がある。



―――そっか、誰かさんのことか。

俺は一人納得すると声をころして少し笑う。声を出さなかったのは、珍しくさっきから寄りかかり寝息を出している誰かさんを起こさない為、きっと起こすと君はさぞ怒るだろから。



チラッと振り向き眺める君は気持ち良さそうに寝息をたてている。

……やっぱり似てるかな。






風に吹かれ、揺れるピンクと茜のコントラストは不思議な空間だ。そして茜に染まり、風に揺られ、幸せそうに額を俺の背中にうめる君も。なんだか、君じゃないみたいで。


今、俺に見せている神秘的な風景を演じる桜も、きっと人に魅せる桜の輝きの一瞬でしかない。

それはきっと君も同じ。



気持ち良さそうに寝息を出す君を俺は初めてみる。また君の新たな表情。

まだまだ俺の知らない君はたくさんいる。


でも……それでいい。

見るものを魅力し、いつだって移り変わる桜の様に、どんな時だって、どんな表情でも、君が大切なんだから、少しずつでいい。今、例え俺に見せる君の姿が、君にとってのほんの少しの一面だとしたって、俺は――



額にかかる髪を払いのけると、眠りの中でくすぐったそうに表情は変わっていく。


桜の様に散っていく訳じゃない。一年かけて、また同じ場所へ帰ってくるのを待つ訳にはいかない。咲き誇る花のまま、君をずっと見ていたい。





二人は進みだす。


自転車をこぐ少年と荷台に乗った小柄な少女。


夕日が霞み、星が疎らに煌めきだす、そんな夕暮れ。










――

――――



出逢った僕ら

桜咲くあの日に


手のひらに落ちる花びらの様に

桜色に染まり震える心を

一輪残った消えない心を

輝く為に、輝かせる為に

失くさないで、忘れないで



たとえ君を見失なっても




――大丈夫――




思い出はいつか記憶となり

交わしたは今は心に灯る


形がなくても君をずっと想っているから



さぁ目を閉じてみようか、きっと世界は変わってくるはず






――うん。いい眺めだ



なんとか<Love ラブ Cherry ~恋のLoveチェリー~>、第一部を簡潔できるように頑張りますので、よろしくお願いします

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