絶望へと誘う道化
前回のあらすじ
ガキンとキズ―との死闘を繰り広げたリチュ。
リチュは彼らの命を奪った。
「キズ―さん。もう死んじゃいました?」
リチュは、キズ―からの返答がないことを確認すると、彼女の頭から離れ、人の姿に戻る。
「大切な人を自らの手で、殺していたなんて、気付かないで良いんです。」
リチュは、顔に剣が刺さったガキンを見ながら言う。
ガキンは、リチュを殺そうと突かれた、キズーの剣に頭を刺され死んでいた。
リチュは、斧を手に取ると、村の出口へ向かう。
出口には、1人の男が立っていた。
「なんだ… これは…」
出口には、白と黄色の化粧をした腹の大きなピエロ。ダイヤだった。
ダイヤは、眉を寄せ、不気味なものを見る顔をする。
「これ。全部このくそスライムがやっていたのか!?」
「ああ、いつぞやのピエロさん。貴方を見ると、緑髪のピエロさんを思い出します。」
「クローバーか。」
ダイヤのつぶやきに、リチュはダイヤを見る。
「お知り合いでしたか。」
リチュは目を閉じ、額に手を当て、悩むような仕草をする。
「あの方には、随分酷い目に遭わされました。良く考えれば、この状況になった原因。全てあのピエロさんの…」
「『炸裂玉』!!」
リチュの言葉が終わらぬうちに、手のひらから手毬程の大きさの黄色い玉を、リチュへ投げるダイヤ。
玉は、リチュに当たると爆発する。
「くそっ。やっぱりだめだったじゃねぇか。クローバーのやつ、「信頼を失ったスライムなら、人間に任せときゃすぐ死ぬ」なんて言いやがって。」
煙が晴れるが、そこには無傷のリチュがいた。
「おい!どういう事だ!スライムってのはこんなに頑丈だったか!?」
ダイヤが驚き、そういった。
リチュが答える。
「『大地の槍』。それで身を守っただけです。まさか一撃で壊れるとは思いませんでしたが。」
リチュが、ダイヤに斧を向ける。
「貴方は、私に敵対する。そう捉えてよろしいですね?」
ダイヤが、バク宙をしながら足元に、大きな黄色い、星型模様のある玉を作る。
「『炸裂大玉』!俺がお前に敵対するか?当たり前だろ。お前をこのままにしていたら。この世界の子供。その全てが殺されかねない。
商売上、少しは生きててもらわねぇと困るんだよ!『炸裂玉』!」
ダイヤは、大きな玉の上で、お手玉をするように手を動かす。
そして、その手から次々に黄色い玉が作られる。
「喰らえ!!」
ダイヤは、玉を10個程作ると、それを全てリチュに向けて投げる。
「『炎の槍』。」
玉は、リチュに当たる直前に、炎の槍によって爆発する。
「ちっ!ならば、こいつで!」
ダイヤは、足元の大きな玉を蹴り飛ばす。
「さっきの処理の仕方じゃ、こいつの爆風の餌食だぜ!」
リチュは、大玉に左手を向ける。
リチュの髪と目が緑に染まる。
「『雷の槍』。」
小さな電撃が、大玉を貫く。
「ぐぁ!」
ダイヤは、爆風に吹き飛ばされる。
「ちっ、くそスライムがぁ。」
リチュが、自身を睨むダイヤに近寄る。
「お遊びはこのぐらいで良いですか?私はあまり楽しめませんでしたが。」
「煙玉!」
ダイヤが、指の間に1つずつ、黄色い玉を出すと、それを地面に投げる。
地面からは煙が出て、リチュの視界を塞ぐ。
リチュは、マナに意識を向ける。
そして、リチュの背後に、土のマナが集まっているのが分かる。
「後ろですか。」
「スライムってのは厄介だな。目くらましも効きやしない。」
リチュが振り向くと、唇を噛んでいるダイヤがいた。
ダイヤの体から大量の土のマナが溢れ出す。
「お前。俺のショーを楽しめねぇって言ったな?
それじゃあ、楽しませてやるよ!『巨大な道化師』!!」
次回予告
いよいよ本気を出したダイヤ。
彼は怪物を仕留めようとする。全ては、子供達のため、そして、古くからの仲間の為。
次回 作ろうか最終曲芸