第5話 救助要請
5話目です。
楽しんで読んで頂ければ嬉しいです!!
「そう言えばオマエさん。ギルドに呼び出しを食らっておるよな?行くのか?」
「行くしかないだろう…。唯一の安定した稼ぎ場だ。墓荒らしや暗殺業なんてやりたくない」
僕はそう言った。
確かにギルドは国のイヌとなり果てた。しかし、ギルドの依頼内容は周辺住民への貢献が多い。
汚れた金。だが、その依頼により人々は大いに助かるのだ。
前日の行商人、その老人も言っていた。『冒険者の存在は助かる』と……。
「そうだな、オマエさんは『そういう』金稼ぎの才が無いからな」
「そりゃどうも」
パンと目玉焼きを食べ終えたシルビアは、切り分けたリンゴに手を伸ばす。
シャクッと一口。その後、甘いと零す少女は僕に言う。
「まぁ、ギルド職員は私たちの実力を確かめたいのだろうな。全力を出しても良いが…今の生活は気に入っていてな」
「素性だけでなく、能力も隠すんですか~。器用ですね~」
「既にやっておるだろうに」
「いや~照れるな~」
「褒めとらん、褒めとらん。それを極めすぎてオマエさんは、俗に言う『ボッチ』なのだろう?」
「普通そこまで言うんだ!?」
「事実を言ったまでだ」
「別にいいさ。なんせ僕にはシルビアがいるからな」
「ははぁん?フッ…そうだそうとも!オマエさんが例え『ボッチ』でも私がおるからな!安心せい!!」
「心強ぇ……」
そんな誘導尋問にも似た茶番を終え、僕らは支度をする。
シルビアの服は一着しか買えていない。昨日の洗濯物を、熱風の魔法(?)で一瞬にして乾かしたので今は大事ない。
だがいつか二着目、三着目と買わないといけない。
相手は何百年間と生きた伝説の魔法使い。
けれどやはりシルビアは一人の女の子な訳で、洋服店にて輝かしたその青い瞳は、僕の心に残っている。
いつまでも根なし草では居られない。
彼女の期待に応えたいのだ。これからもパートナーとして居るために。
◇◇◇◇
「あ!?グレイさん!こっちこっち!!」
ギルドに入るなり声が掛かる。
いつも僕の相手をしてくれている<ルワナ>だ。
ルワナはこのギルドの職員でいつもお世話になっている。
吸血鬼の正体を隠しているので、毎度ながら悉くクエストが失敗している。(これも値が良いクエストは原則二人以上という、ギルドのクソ仕様による弊害だ)
そんな中、最後まで尽力してくれていたのがルワナだ。
全くもって頭が上がらない存在だ。
彼女はカウンターから上体を伸ばし、コチラに手を振っている。
その度に彼女の栗色のポニーテールが揺れる。あと胸も。
「なんじゃあの女???」
「僕がお世話になっているルワナさんだよ……。てか、なんでキレ気味なんだよ?」
シルビアから感じる敵意はルワナの大きな胸が原因なのだろうか。
十年後にナイスボディになるんだから別にいいだろうに……
僕らはルワナを対面として、カウンターに座る。
「あらあら…この子がグレイさんの新しいバディですか?」
「そうとも!私の命を救ってくれてな、こうしてパートナーとして同棲しておるのだ!!!」
おるのだ、じゃねーんだわ。
事実そうなのだが、色々と誤解されるから抑えてはくれないか???
「へ……へぇ……。グレイさんも以外と大胆なんですね…」
「昨夜も同じベットで寝たぞ!」
「ちょっと黙っててくんねーかなー!?」
僕はシルビアの口を手で覆う。
「──、──!!──!──!!!」
ルワナへ発される罵詈雑言はグレイブの手によって防がれた。
「ルワナさん……少しいいですか……」
少し痩せた眼鏡姿、堅実そうな男が彼女に声を掛けた。
「はい、どうしましたか?」
「二日前に依頼を受注したパーティーの帰還確認が…」
「そういうことね…わかった。一旦、状況を整理しましょう…。グレイさん、少し席を外しますね。ごめんなさい」
「大丈夫だよ。見つかるといいね」
「そうだと嬉しいのですが……」
ルワナと男はギルドの裏側に行ってしまった。
僕ら冒険者は危険なモンスターなどを退治するのが一般的だ。
しかし中には返り討ちに遇う事もある。
それは仕方ないことだ。狩る者は時として狩られるのだ。
吸血鬼の僕も例外ではない。シルビアが言うには、吸血鬼……僕を狩る専門k
「いだたたたたたたた!!!!!!」
シルビアの口を覆っていた手。その中指を噛まれたのだ。
「なに鼻の下を伸ばしておる」
「伸ばしとらんわい!」
口調が移った。
「はぁー。あの女は……何か、きな臭いぞ」
「きな臭いって…変な言い方するなよ。彼女は僕の半ば恩人なんだよ」
「ふーむ。なら私の勘も衰えたのか」
「そういう特別な勘でもあるんです?」
「女の勘だ」
「あっ…(察)」
◇◇◇◇
「──と言う事もありまして……」
ルワナは先ほどの事情を説明した。
要約すると『先日、とあるパーティーがゴブリン討伐に向かった。しかしそれから音沙汰無く、ついにギルドが動く』と、なっている。
そして僕らのワイバーン撃破の疑いも晴らすためにも、ルワナの監視の下にその救助要請に応えることとなった。
ルワナ曰く「ゴブリンなんてワイバーンの足元にも及ばない」とのこと。
「ほぉ?貴公が私たちを監視。私たちはゴブリン討伐及び行方不明者の確保…と。俗に言う昇格依頼ってやつか?」
「そうなります。達成しますとギルドから、銀のカメオを贈呈します」
「ちょっと待ってくれ」
思わず僕はシルビアとルワナの間に入る。
「そのパーティー…。そいつらの生存の有無はどうするんだ?」
「今回はギルドに責任が有ります。救出活動を行うにはある程度、ゴブリンの注意を一か所に集めないといけません……。グレイさん達はゴブリンの討伐をお願いします。その間にギルドの戦闘職員が捜索いたします」
「ルワナさんは?監視と言ったが…」
「同行します。これでも私も戦闘職員に所属していますから…。金程の実力はあります。しかし相手は闇に紛れ、群がるゴブリンです。最低でも三人は必要と」
「だから僕たちを……」
「はい、そうです。先行して職員が向かっていますが……
「もうよい」
シルビアはルワナを遮った。
そして少女は僕に目を合わせ言う。
「もう決まっておるのだろう、オマエさんよ?こんな下らぬ事で時間を使いとう無い。ほら行くぞ」
「あぁ。僕のカッコいい所見せてやるよ」
「はー……期待しておくよオマエさん」
お疲れさまでした。
次回はゴブリン退治です。
異世界では王道ですね……。
ですので少しだけ意地悪して書きたいな、と思っています……。
次も読んで頂ければ嬉しいです!!!
ではまた~