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第3話 心配性の吸血鬼

誤字脱字など有りましたら連絡下さい。

今回も最後まで読んで頂ければ嬉しいです!!

 シルビアの服を買った。所持金がほぼカラになった。後悔はしていない。


「どうだろう?似合っているだろう?あはは」


 青色をベースにした一式。

 そこにフードが付いた大きめの黒色のローブをふわり靡かせて言った。


「魔法使いは皆ローブ姿だが…何か能力上昇(バフ)の効果でもあるのか?」

「何を言うか!()()()()()!いつもの服装をして何が悪い!?」

「すんませんでした。……そういや、アナタが魔法使いの祖でしたね」

「分かれば宜しい!」

「へい」


 ギルドへ行く途中──

 僕らは、そんな会話をしていた。

 まぁしかし、実際似合っているのは事実なのだ。その細い首に巻かれたスカーフも実に魅力的だ。

 大枚をはたいて良かったと思っている。

 何度でも言おう。後悔は無い、と!!


「で、どうなんだ?感想は?」

「すごく可愛いよ。流石は僕のパートナーだ」

「お、お、おぉ、お。昨日の今日とは言え、緩急が激しいな、オマエさんは」

「何が?素直に物事を言って何が悪いんだ?」

「……(あい)わかった。オマエさん、グレイブはそういうヤツなんだな」

「?」


 街の中心部ぬ向かって歩く。

 進めば進むほど人は多くなり、その分、商店や露店が賑やかになった。

 魔法学校と正反対に位置する場所の為か、シルビアは視線を忙しく動かした。


「ほぉ、ここの果物屋は()()やっておったか」「お、新しい道が出来ておる」「随分と小奇麗になったものだな」


 その昔を知るシルビアだからこそ言える芸当なのだろう。


「なぁ、学院を建て始めた時って、ここまで栄えては無かったよな?」

「そうだ。ここ一帯は元々、荒野であってな。皆で植物を育み、人口を増やし、学び舎を創ったんだ」

「へぇ。凄いな、流石は伝説の魔法使いだ」

「おだてても何も出んぞ?」

「バレちまった」


 太陽の優しい日差しを浴びつつ歩む。

 ギルドまでもう少しのところで少女から声が掛かる。


「に、しても。真祖だけあって太陽光の耐性はあるようだな」

「……。言われてみればそうだ。全く痛みを感じないし、特に変化も無い。灯台下暗しとはこのことか?」

「普通に気づけよ、吸血鬼……。それはそれとして、オマエさんの事情は他の者には内密だな?」

「…ああ、宜しく頼む。僕もシルビアの過去は黙ってる。……そういや、名前はどうするんだ?このままだとバレてしまうのでは?」

「大丈夫だ。名は有名でも、私の顔を知っていた人間は皆死んだ。残る私の記録は、名前と経歴だけださ」

「なら安心か?」

「大丈夫だ。もし秘密がバレようなら、記憶を抹消してくれるわ」


 ははは、と笑う少女に若干引きながら、僕は義務笑いをする。ハハハハハハと。

 ここで同じように笑わなければ殺される、と悟ったからだ。


 そして──


「ここか。冒険者組合こと、ギルドとは」

「そう、ここが僕が登録している所。……じゃあご飯代を稼ぐために頑張りますか」

「今夜は豪遊だな?」

「勘弁してくれ……」




 ◇◇◇◇




 受付にてシルビアの新規登録を済ませ、僕らは二階の人気が無いテーブルに居る。


「ほぉー。これが『証』か…。初めて見た。……。相変わらずいい顔をしているな」


 シルビアは青銅製(ブロンズ)のカメオを見つめる。所謂、メタルカメオだ。



 冒険者組合ことギルドは、国々から援助を貰い運営する組織だ。

 構成員は人間や亜人から成る。

 しかし、国によって人間以外の種族への差別・偏見などが有る為、場所によりまちまちだ。

 依頼の達成度やパーティーの強さなどにより、ランクがギルドより贈られる。


 青銅(ブロンズ)(カッパー)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)……


 白金(プラチナ)以上の実力を持つパーティーは、英雄級とカテゴリされる。

 僕には無縁の存在なので、これ以上は知らない。



 僕は首にかかるカメオを取り出し、シルビアと同じように見つめる。

 男性の横顔がプレスされている。それは今は亡き()()()()()のモノだ。


 今なお語り継がれている魔王の物語。

 その昔、不毛な地にて勇者が生まれた。その勇者は現状を打破する為、その元凶である古竜に戦いを挑んだ。

 結果、勇者は勝利した。勇者は古竜が取得していた権能を引き継いだ。しかし、その権能に溺れ、勇者はすべてを裏切った。

 強力な力を得た勇者を殺し、全てのモノに恵を分配したのが十代目魔王である。


 転生する前、魔王と言えば数々のゲームの様に、悪逆非道の限りを尽くす存在と思っていたが、この世界では逆だった。

 この魔王は命ある者を救い、最終的には遺体として部下に見つけられたようだ。


 シルビアこと、伝説の魔法使いは十代目魔王の四天王の一角か?と、噂されていた。

 その真相を晴らすべく、僕は小声で言う。


「シルビア、この魔王の部下…。四天王の一角って噂…本当か?」

「お、ここで聞くのか……まぁよい。偽りなく事実だ。何なら、古竜大戦では大活躍したのだぞ?やつらが苦手とする雷の魔法を生み出したり、弟子を育成したりしてな」

「ヤバ凄すぎて引くわ……。ん~、それなのにどうして刺客なんぞに、殺されかかっていたんだ?」

「そうだな、私の再誕について話すか」


 そう言ったシルビアは、昔を思い出す様に天井に視線を上げ続ける。


「かつての勇者と同様に、私も古竜から力を奪ったのだよ。それが『再誕』。無事に寿命を全うした時に発動し、幼子に還るのだよ。だが、その再誕したてが危うくてな。その力に魔力を全て使用されるんだ。つまり、再誕したてが一番の殺し時だ」


「学院の上層部は私の秘密を知らない。今回のは、『山に向かった寿命間近なババアの死体を確認してこい』って感じだろうな。やつら、余りにも装備が簡単だったからな」

「まてまてまて……。じゃあ、シルビアは…寿命以外で死んだら…どうなるんだ?」

「確実に死ぬ。再誕は無い」


 冷ややかに彼女は告げた。

 僕は今まで勘違いをしていた。

 シルビアは僕と同じように、致命傷や死に至るダメージを食らっても、涼し気な顔で起き上がれる、と思っていた。

 だが真実は違う──


 彼女は僕の様に、ほぼ不死身な存在では無い、とても危うい非死なんだと──


「何を考えておるバカ者め!もう魔力も十分に戻っておるわ!うーむ……少し待っておれ!」


 シルビアはそう言って、一階に行ってしまった。そして、ヒラヒラと一枚の紙を持ってきた。


「よい()()()の依頼があったぞ。これでオマエさんに心配されない程非力では無いと、証明しようではないか!」


 僕は依頼書を見る。

 内容はワイバーンの討伐依頼。

 ランクはシルバー以上推奨と書かれている。


 えへん、と無い胸を張る伝説の魔法使いを眼前に、僕はただ受け入れるしかなかった。




お疲れさまでした。

次回はトカゲ狩りの話です。


グレイブにとってシルビアは、唯一吸血鬼の事を話し、理解してくれた人物なのです。

きっと恐ろしいんでしょうね。信頼したヒトが亡くなる事を。


今回はここまでです!

読んでくださってありがとうございます。


では、また~

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