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記憶のない僕らは  作者: 青山 立
第13章 門崎カイと協力者たち
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(024) Area 27 Things that I wanted 自由

 --自由-- #北田


「あの。僕は薬を飲むべきでしょうか?」

「僕が飲めと言ったら、君は薬を飲むのかい?」

「それは……」


 カイくんは言葉に詰まっている。


「私は、君自身が思うようにすればいいと思う。飲みたければ飲めばいい。飲みたくなければ薬なんて捨ててしまえばいい。君の自由だ」

「でも、MCUの破壊方法を知っているかもしれないのに、無責任じゃないでしょうか?」

「人間なんて結局のところ、自分の私利私欲のために生きてるだけだ。人を守るために自己犠牲している人だって、結局のところ自分がそうすることで心が満たされているんだと思う……。だからカイくんも好きにすればいい。私は君に責任があるとは思わない」

「僕は、僕のせいで誰かが悲しむのを見たくない」

「カイくんは相変わらずだね。私は、君は君自身をもっと大切にすべきだと思うよ」

「僕自身を……?」

「気にするな! 最悪でもあの施設を爆破したらあんな装置は壊せるんだ」


   ◇     ◇     ◇


 カイくんの様子がおかしい。私は彼の質問に正直に答えすぎたのだろうか? だが、私が言わなくても、いずれどこかで知ることになっただろう。何を隠して、何を伝えるべきかなんて私には判断はできない。聞かれたら、その都度答えるだけだ。


「カイくん、今は時間がない。これから移動するよ。政府の機能がダウンしている今夜のうちに研究所のMCUを破壊しないと。明日にはMCUに近づくことさえできなくなるだろう」


 私はテーブルの上に広げていた機器や端末をカバンにしまった。


「今から車で第四脳科学研究所に向かう。準備をしてくれ」


 カイくんは無言でノートパソコンを閉じると、左手でノートパソコンを持ち、リュックを背負い美容院のドアを開け、外に出た。

 カイくんは何も言わず、ドアを手で押さえて私を待っている。


 私はカバンを肩から下げると、早足で美容院から出た。


 外はすっかり暗くなっている。この商店街はネット上の混沌とは対照的に静寂を保っている。ここの人はこの地区で長年生活してきた人が多い。今更ここを出る理由もない人が多いのかもしれない。


 私は、私たちがしてきたことの意味を問い続けていた。

 多数の幸せのためには多少の犠牲はやむを得ないものだと、目をつぶってきたのではないだろうか?

 こんなことをしなくても、ほとんどの人は幸せに過ごしていたのではないのだろうか?

 明日は昨日より自由な世界になっているのだろうか?


   ◇     ◇     ◇


 車を止めた場所まで戻ってくると、私の持っている鍵が反応して、車のロックが自動で解除された。


「北田さん。車に乗らないんですか?」


 後部座席に座ったカイくんが窓を開けて私を見ている。私は車に乗り込むと、ゆっくりと車を発進させた。人通りのない裏道を抜けて、海沿いの直線道路に入ると、雑念を振り払うように強くアクセルを踏んだ。


 国立農場から離れた海岸沿いの道は予想通り空いていて、このままいくと一時間もかからず第四脳科学研究所に着くだろう。


 カイくんは車が走り出してから一言も話しかけてこない。

 薬について考えているんだろうか?

 私は、今夜解放される多くの人とともに、カイくんにも自由になってほしいと思った。


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