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記憶のない僕らは  作者: 青山 立
第11章 地下世界とサーシャ、リクとレイン
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(039) Area 22 Untold 深層

 --深層--#リク


 "私はあの時どうすべきだったの?


 どれだけ考えても、答えが出ない。


 やっぱり、私があの人を殺してしまったのかな?

 人ってさ、言葉で死んじゃうんだよ。

 私はそんなつもりなかった。

 ただ、守りたかったの。

 疲れて壊れてくあなたと、自分のことを守りたかった。

 他に方法がなかったって、

 精一杯、最善のことをしたって思いたいのに、

 自分のしたことが正しかったのか、時々わからなくなるの。


 私がしたことを誰も責めたりしない。

 でも、

 あの時、私が周りを説得しなければ、

 あの人を閉じ込めてしまわなければ、

 あの人は死ななかったのかな?


 私が何もしなければ、

 あの人は、

 あんな風に、叫んで苦しむことはなく、

 あんな風に、一人で死んでいくこともなかったんじゃないかって、

 思ってしまう。


 もしかしたら、

 あんな風に、

 まるでこの世からいなくなる前から、

 現実を捨てたみたいにならずに、

 今も生きてたんじゃないかって、

 今でも時々思う。


 あの人がいなくなって、怖いことも不安もなくなったのに。

 私はまだ、どうしてこんなに苦しいの?

 あの人が死んでも、私は悲しくなんてなれなかった。

 泣くことすらできなかった。

 今だって、本当の意味で悲しくなることはない。


 私は冷たい人間なのかな?

 人の不幸の上に立って生きているのかな?

 あなたはあの時、あんなに現実が辛そうだったのに、

 あの人のことが大好きだったって言ったの。

 

 私はどうするべきだったの?

 あの時、他に道はあったの?


 お願いだから、記憶を消して、私を助けてよ"


   ◇     ◇     ◇

  

 カイが腕を伸ばして、私を掴もうとしている。

 ここは現実味がない。そう、夢の中にいる。


 "カイ、君の悩みは贅沢な悩みだね。

 思い出したいとか。思い出せないとか。

 わかりたいとか。わからないとか。

 悲しいことや嫌な思い出はね、覚えてる方がずっと辛いよ。

 人の心なんて、見えたって何もできないよ。

 痛みが見えたら、癒えることもないよ。


 忘れられなかったら、

 ずっと胸が痛いまま、

 後悔してもしても、しきれないの。


 カイさ、人殺したことある?

 人ってさ、言葉で死んじゃうんだよ。

 私はそんなつもりなかった。

 ただ守りたかっただけなのに"


   ◇     ◇     ◇

  

「リク、大丈夫?」


 カイの声がする。まだ夢の中にいるのかな?


 どうせなら、もっと楽しい夢が見たい。


 ここにはもう、居たくない。


 目も開けたくない。


「——大丈夫だよ——親のこと思い出しただけ……」


  ◇     ◇     ◇

 

 目覚めたくなんてないのに、瞼が開いて光が瞳を刺す。眩しい。


「リク、聞こえる?」

 目の前にカイが現れた。

「カイ⁈ 無事だったのね」

「リクこそ、事情を話そうとしたのに突然気を失うから、どうしようかと焦ったよ。さっきまで、うなされてるみたいだったし……」


 そっか、私はあの倉庫で気を失ったのか。それより事情って何?


 私はカイの顔から目線を外す。ここ、どこ?


 倉庫の中じゃない。窓もないし、天井も低くて、ひどく閉塞感を感じる。一見すると家具が揃った普通の部屋だけれど、外から光がまったく入らず、まるで洞窟の中に作られた空間のようだ。


「私たち、どこにいるの?」

「さっきいた倉庫の地下にある家だよ」

「私、寝ぼけてるの? これは夢の中なの?」

「現実だよ。レインもここにいるよ」


 カイが指さした先には皮張りのソファーがあり、そのソファーの上でレインがクッションにもたれて丸くなっている。すっかりくつろいでいるようだ。


「これが現実なら、カイは連れ去られたんじゃなかったの?」

 訳がわからない。カイは拘束されていないし、自由過ごしているように見える。


「これからちゃんと話すから、まず、水分を取って落ち着いて」

 カイが水の入ったペットボトルを渡してきた。


「ありがとう」

 ひどく喉が渇いていたけれど、水分を飲む余裕がない。


「博士は大丈夫なの?」

 私の問いにカイの表情が曇る。困惑しているようだ。


「博士もいたの? やっぱり僕にはまだわからないことが多すぎる。博士はここにはいないよ」

 カイは何をどこまで知っているのだろう。


「博士に電話で逃げるように言われたから、もしかしたら、博士も捕まってしまったのかと思ったの」

「ごめんねリク、僕には博士のことはわからない」

「カイ、一体何がどうなってるの? カイは連れ去られたんじゃないの?」


 部屋の外から物音がする。


「他に誰かいるの?」


 私は音のした方を見て身構えたが、カイは外に他の人がいるのを知っていたのだろう、焦る様子もなく私の隣に来ると、耳元でささやいた。


「リクを巻き込んでごめんね。他の人が入ってきたら、辛いかもしれないけど目を合わせてその人の記憶を読み取ってもらってもいいかな?

 リクの能力については誰にも言ってないし、今後も隠したままでいたほうがいいと思うけど、これから来る人たちのことは信用しきれないから、協力してほしいんだ」


「外にいる人たちが、カイを連れ去ってきた人たちなの?」


「うん」


 ドアノブが回る。カイは鋭い目線でドアを見つめた。


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