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記憶のない僕らは  作者: 青山 立
第11章 地下世界とサーシャ、リクとレイン
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(042) Area 21 Lessons Learned 地下世界

 --地下世界--#カイ


「ばあちゃん、いつもんとこに食料置いとくから。俺、ナオトの家に行ってくるから。戻ってきたらご飯作るからね」


 人にはいくつもの顔があると言うけれど、今僕の目の前にいる舵はどこからどう見ても面倒見のいい好青年だ。その真っ直ぐで優しい横顔が僕に向いた途端、簡単に人の一人や二人殺しそうな勢いで睨んでくる。


「お前は何もするな。何一つ余計なことをするんじゃないぞ」


 舵は刺すような低い声で僕に何もしないように念を押すと、床に置いてあったカバン持って、今さっき入ってきたドアのノブに手をかけた。


「舵、行ってらっしゃい」


 舵の祖母が、部屋の奥にある年代物の一人掛けのソファーに座って、出かける舵を見送っている。


「行ってきます」


 舵は僕に話す時とはまったく違う柔和な表情を浮かべながら祖母に返事をすると、ドアを勢いよくバタンと閉めて、小走りで家の前の道を駆けていった。舵の祖母は舵の姿が見えなくなるまで窓の外を眺めていた。


   ◇     ◇     ◇


 ここは倉庫の地下にある街の一角で、今僕がいるのは舵の祖母の家だ。


 僕がDA3で永薪海と呼ばれていたと伝えると、舵と柏原さんは二人で少し話をして、何も説明することなく僕をここに連れてきた。


 監禁されていた倉庫にあった隠しエレベーターに乗って地下に着くと、ほんの少し歩いただけでこの家に着いたから、ここはおそらく倉庫のほぼ真下だ。


 僕は初対面の舵の祖母の家の居間に取り残された。


 居心地が悪い。この人に話しかけていいかわからない。さっき余計なことをするなと釘を刺されたばかりだ。それを無視して自ら事を起こせば、舵を怒らせてしまうだけだろう。舵のことが怖くてたまらないと言うわけではなかったけれど、できる限りトラブルは避けたい。


 僕は黙って居間の隅に立ったまま、部屋を左から右にゆっくりと見回した。


 隠しエレベーターの中から見えたのは、コンクリートの外壁に、錆びた鉄格子のついた小さな窓ある、薄汚れた建物ばかりだった。こんなところで人が生活できるのかと思うほど殺風景で暗い世界が広がっていた。


 けれどこの部屋はまるで異世界のようだ。温かみのある古い木の家で、豪華ではないがよく手入れされた家具や調度品がそろい、床には凝った柄の絨毯が敷かれている。ペルシャ絨毯だろうか? 詳しいことはわからない。どうも僕はインテリアには疎いらしい。自分のことを知るには、やっぱりもっと世の中を見てみないといけないようだ。


 ゆったりとした服を着た舵の祖母は、物腰もその装いと同じく、焦る様子やイラ立つ様子がまったくない。この人の周りには、どこか柔らかで不思議な空気が漂っていて、まるで魔法でも使えるんじゃないかと僕は思った。


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