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記憶のない僕らは  作者: 青山 立
第9章 妹の記憶を壊された兄と一番の被害者
54/108

(054) Area 18 Deliberately 倉庫

 --倉庫-- #カイ


 暗い。ここ、どこだ?


 錆びた鉄のような匂いがする。工場? いや、資材置き場か何かだろうか?


 目を開くと、高い天井にぶら下がる電球の放つオレンジ色の光が揺れて見えた。背中が冷たい。着ていたコートは奪われたようだ。僕はコンクリートの床の上に横たわっている。


 リクのアパートにいたはずなのに、どうしてこんなところにいるんだろう?


 そうだ、レインを探してキッチンに入ったら、突然目の前が真っ暗になって……。その後、どうなったんだっけ?


 誰かにここに運ばれてきたのは間違いなさそうだけど、ここがどこなのか、まったく見当がつかない。頭がクラクラする。もしかして、睡眠薬でも嗅がされたのだろうか?


 突然知らない場所で目覚めた僕は、視界がぼやけて、自分の置かれた状況が正確には掴めずにいた。



 カチャ。



 少し離れた場所で、鍵の開く音がする。


 ぼんやりとした僕の視界の中に、背の高い黒い服を着た男の姿が入ってきた。


「やっとお目覚めかい?」


 男が振り返り、覗き込むようにカイに近寄ってきた。だが、まだ気を失った時に嗅がされた薬が切れていないせいか、焦点が上手く合わず、男の表情までは読めない。僕は状況が飲み込めないまま、男に問いかけた。


「あなたは、誰なんですか?」


 ここはどこで、この男は何者なんだろう?


「言わなくてもわかると思ったんだがな?」


 男の声は低く、物怖じしない芯の強さのようなものを感じた。


「一体どういうことですか?」


 僕は自分でも信じられないほど落ち着いた声で、男に問いかけた。


 まるで、自分の中にいる過去の『本当の自分』が目を覚ましたかのようだ。


「今回が初めてじゃないだろう?」

「初めてじゃない?」


 僕は過去にも連れ去られているのか? 男は僕のことを知っているようだし、どうも無作為に連れ去ってきたのではないようだ。人違いで連れ去られたのではない限り、男は記憶を失う前の僕を知っている!


「まさか忘れたって言うんじゃねぇだろうな」


 男は何もかも気に入らないといった様子で、鋭い刃物を突き刺すように言葉を放つ。


「恨みたきゃ、生まれた境遇やあんたのお偉い家族を恨むんだな」

「家族……」


 僕には男の話の内容も、言いたいことが何なのかも、まったくわからない。


 男の素性に心当たりはないが、今の僕の状態を理解していない男を責めてもどうにもならないし、過去の僕を知っているかもしれない人間を、これ以上怒らせたくはなかった。


 それでも、男は僕の態度が気に入らない様子で、舌打ちをすると、何かを投げてきた。


「それより、これでも飲んで大人しくしてるんだな」

「これ、何ですか?」

「見た通り、ただの水だよ。大切な人質に死なれちゃ困るんでね」


 確かに、渡されたのは何の変哲もない未開封のスプリングウォーターと書かれたペットボトルだ。


「拘束されていないからって、逃げるような真似をすればどうなるかわかってるな?」


 男は威圧するような物言いで僕を睨みつけている。


「あの、要求は何ですか」

「しらを切りたきゃ切ればいいさ」


 男は僕の問いに苛立ちを抑え切れない様子で、吐き捨てるようにそう言うと、倉庫の奥にあるドアの向こうに消えていった。


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