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記憶のない僕らは  作者: 青山 立
第7章 人の記憶を読み取れる女性と博士
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(064) Area 15 Everybody hurts 休息

 --休息-- #カイ


「ただいまー」

 よく響く声がとともに、リクが、両手に袋を下げて帰ってきた。

「あー重かった」

 リクが買い物袋を床に置くと、レインは尻尾を思いっきり振りながらその袋に鼻を突っ込んだ。

「食べちゃダメだよ」


 一通り嗅ぎ終わると満足したのか、レインは博士の秘密基地(へや)の片隅に走っていった。そこにはレインの寝床と思われる空間があり、安楽椅子にブランケットが敷かれている。そしてその脇には深めのボールが二つ並んで置いてある。レインはそのうち片方のボール入った水を勢い良く飲み、満足すると寝床でくつろぎ始めた。


「雨は降らなかったか?」

 神作博士が買い物袋をキッチンに運び、中身を冷蔵庫にしまっている。

「雲行きはかなり怪しかったけど、ギリギリ大丈夫だったわ。それより今日は博士にお願いしていい?」

 そう言って、リクはトマト缶を博士に渡した。

「わかったよ。パスタでいいか?」

「もちろん。でもケチャップは入れないでね」


 神作博士が料理し始めると、リクがソファーに戻ってきた。


「二人はずいぶん仲がいいんですね。リクは神作さんといつから知り合いなの?」

「博士はもともと両親の知り合いで、十年くらい前から知ってるわ」

「じゃあ、神作さんはリクの家族みたいな感じ?」

「うーん、そうなのかな? あえて言うならちょっと遠い親戚って感じかな。博士はずっとこの街に住んでるけど、私は小さい頃に別の街に引っ越して、二年前にこの街に戻ってきたの。だから、別の街に住んでたときには、博士に会うのは、両親と一緒にこの街に遊びに来るときくらいで、よく知ってるって感じじゃなかった。でも私がこの街に戻ってきてからは、上のアパートを借りれるように計らってくれたり、配達の仕事を持ってきてくれたりしてて、色々面倒見てもらってるの」


 それだけ言うと、リクは横になって目をつむった。


   ◇     ◇     ◇


 その夜、三人プラス二匹で夕食をとったあと、リクは自分の家にも戻らずにソファーの上で寝てしまった。いつものことなのだろう、博士は眠ったリクを起こそうともせずに毛布をかけると、薄暗い部屋の奥を指さして言った。


「お前にも寝床が必要だな」


 指をさしたその先には山積みになった本が見えた。


「本の上で寝るんですか?」

「そんな訳ないだろう。よく見てみろ」


 目を凝らしてみると、パイプのようなものが見えた。


「あ、ベッド」

「そうだ、古いパイプベッドだ。布団は余ってるものを出してくるから、本を部屋のどこか端にでも移動させておいてくれ」

「わかりました。ありがとうございます」


 博士が布団を取りに行くとすぐに、僕は本の移動を始めた。ほとんどは古い科学雑誌のようで、よほど読み込んだのだろう、雑誌に付箋が無数に張り付けてあった。本を移動させるのには思ったより時間がかった。ひと段落して振り返ると、布団と掃除機、それに水の入ったバケツと布巾が首尾よく用意してあった。


「掃除機かけたら、音でリクさんを起こしちゃいませんか?」

「気にするな。あいつは一度寝たら朝まで起きないよ」

「そうですか」


 僕が掃除機の音を気にするのをよそに、博士が掃除機をかけ始めてしまった。かなり古い型の掃除機でノイズがひどいにも関わらず、博士の言った通り、リクはピクリとも反応せず眠り続けている。僕は布巾を手に取ると、掃除機をかけ終わった所から順に拭いていった。


 掃除を終えると、ベッドは見違えるほど綺麗になった。そこに博士が用意してくれた布団を敷くと、僕は瞬く間に眠気に襲われた。


「早速寝てるのか……」


 博士は掃除機を片付けて戻ってくると、ベッドに横たわった僕を見て、少し呆れた表情をした。


「それは夏用の布団だから、若干薄いが、ここはそんなに寒くないから一晩くらい大丈夫だろう。それでも、もし寒かったら、何か探すから呼んでくれ」


 思っていたよりも疲れているみたいだ。一度横になってしまったせいで、体を起こす気力が湧かない。僕はベッドに横たわったまま首だけ回して博士の方を向いた。


「あの、何もかもありがとうございます。それに、夕飯やベッドまですみません」

「まあ、謝るな。何もお前のせいじゃないさ……。どのみち、リクに無理やり連れてこられたんだろう?」


 瞼が重い。意識がどんどん遠くなっていく。眠くて、眠くてたまらない。神作博士は、そんな僕の様子に気がついたのか、


「まあ、ゆっくり寝ろ。今夜は寒くなるらしいから、風邪引かないように気をつけろよ」


 と言うと、カウンターに向かって歩いていった。


 博士に返事をするより早く、緊張の糸が途切れたように、僕はぱたりと眠りに落ちた。



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