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遊星からの物体XYZ ~ラヴ(クラフト)コメ☆だぞ★~

ノリで楽しんで頂けたら幸いです。

 私、遊星より子! 聖ミスカトニック大学付属高校ケンタウリα一年生! 憧れの内庵斗(ないあーと)先輩に絶賛片思い中! 朝ごはん(名状しがたい物質)を食べながらよそ見して走ってたらナニカと衝突しちゃった!

 時転車(時空転移車)でよそ見運転はだめだぞ☆



 事故って目を回してる間に私は近くの星に墜落したみたい。スマホ(スペースMAXホニャララ)で位置情報を確認してみたら……。


「げっ! ここ地球じゃん! ヤバイじゃん!」


 そう、夏休み前にも歴史の授業で教わったんだ。むかーしむかし、私たちの祖先が住んでたんだけど、なんか使役用の動物に反乱起こされるわ、作った都市がことごとく水没したり氷漬けになったりするわと、あんまりにも散々だったから、植民地だった地球の開拓を放棄していったらしいんだよね。先生も「あの時ゃワシも若かった」とか言って、名誉の勲章みたいな感じの傷を触手で触りながら涙拭ってた位だし。私生きて帰れるのかな……。


 とりあえず、時転車に付いてる発信器を起動したけど、助けが来るまで何光年かかるだろ。お父さんもお母さんも、ここ数世紀は寝たまんまだし、誰か気付いてくれるといいんだけど。


 とりあえず発信器は動かせたけど、時転車自体はほぼ大破してて、多分この星から出るのもやばいと思う。仕方ないから墜落した山の中にあった洞窟にニョロニョロ隠していたら、何やら生き物の気配がっ!


――えっどうしよう。最近の地球の生物とか全然分かんないんだけど! なんだっけ恐竜!?


 なんか不時着したら問答無用で燃やされたこともあるとかで、マジヤバイらしいし。とりあえず隠れて様子見なきゃ。


「本当にここなのか」

「じっちゃんが見たらしいよ、隕石」

「落下跡も無いし、見間違いじゃねーの」


 あーあれは二足歩行型哺乳類だ。鳴き声は結構発達してるから、頑張れば意思の疎通が可能なのかも。えっと、見た目を真似して、あれとかこれとか隠して……こっちの触手はなんか頭から垂らして……ヨシッ!


「ah、アノ……スミマセン」

「誰だ!」


 なんか長い筒みたいなのを構えてる。確かあれ、私たちの分子破壊銃みたいな武器ぽいなぁ。とりあえず敵意は無いことを示さないと。


「あ、あー。げふんごほん。私、怪しい人チガウあるよ。とりあえず何も見てないどすよ」

「怪しいやつだ」

「こんな山奥にこんな可愛い女の子がいるわけない」

「ちょっと警察に連れてこうぜ」


 私は速攻で連行されちゃいました。ヤバス。まじヤバス。




「つまり迷子な上に、記憶喪失ってことかな? お嬢さん」

「はいそうなんですよ。もうなにがなんだか分からなくて困ってしまいましてー」


 とりあえず出された食物らしきものを、もさもさしながら、話を合わせる。動物性たんぱく質――プライスレス。

 そういえば家を出る前に名状しがたい物を食べかけてから、何も食べてなかったなぁ。帰れたらちょっとこの動物性たんぱくの塊再現してみよ。黄色と白と茶色ね。よし覚えた。オヤコードゥンとか言うらしいよ。


 さてさて擬態の方はかなり上手くいっていたらしく、地球の哺乳類の雌にきちんと見えていたみたい。よかたよかた。怪しまれたけど、いきなり攻撃はされなかった。むしろ食事まで出して貰えるなんて、地球いい所じゃない? 地球寄ってく? とか流行りそうだよ。

 というか、かなり生物進化してるし、文化的だし。誰よ。危険半端ないって言ったの。


「そうか……。ここ何年か山奥から怪しげな声が聴こえたり、急に地形が変わったり、海無し県なのに磯の香りがしたりしてて、みんな気が立ってるんだ。とりあえず後で泊まれる所に案内しよう」

「怪しげな声?」


 宿泊もさせてくれるとか、最早観光じゃーんと、思いながら話をとりあえず繋いだけど、その答えを聞いて私は髪の毛(なんか頭から生えるんだって不思議だね)にしてる触手から危うく緑の液体を垂れ流すところだった。


「なんだかね、てけりりーって聴こえるらしいんだ」

「ヤバス! いえ、あのそれ、絶対近寄ったらあかんやつです」


 思わず叫んでしまった。いや、それ、私たちを一番殺戮しにくるショゴスという昔の使役動物じゃん。殺意MAX。やる気充分ですがな。この世界の武器で倒せるの……あれ。




 柔らかい白い塊に包まれて、程好い眠りについた翌朝、悲鳴が聞こえて目が覚めた。なによ――2世紀位寝てたかったのに。


「山田の家がやられたらしい」

「熊か」

「いや……なんも残ってないらしい……」

「山田はちょうど用を足しに外に出たら、なにやら声がしたと思ったら、家が消えたと……」


 慌てて駆け付ける皆様と一緒に向かうと、建物ごと空白地帯が出来ていた。あらまきれー。あらまやべー。


 ――完全にあかん……。


 暴走してるじゃん元使役動物。鞄に入れたまんまの護身用の分子破壊銃も、そもそもが群体な「アレ」に勝てるのかどうか。てか、鞄車に置いてきてた。取りに戻んないと。

 ざわざわする中、山の上の方から鳴き声が木霊する。


『テ・ケリリ』

『テケリ・リ』


 妖怪だ、いや天狗だとか、なんかあれこれ言ってるけど、アレ、噂のショゴスちゃんだわ……。 私はそっとその場を離れようとして、腕を掴まれる。


「あんたが呼んだんか」

「へ?」

「あんたが来てから……」

「こんな娘がそんなん関係ないんじゃね?」

「そういえば昨日の隕石が……」


――いや、昨日の今日だから! そもそも私は関係ない! 多分……。ざわざわと、なんだか良くない村人たちの気配の中、また山の上からあの声が聞こえてくる。


『テケリリテケリリテケリリテケリリテケリリ』


 その声を聞いて何人かが泡を吹きながら倒れてガクガクしてる。私は平気だけどあの鳴き声自体、かなーり人間(この種族だって)にはまずい。私はちょっとだけ本気を出すと、掴まれた手を払って山に走った。


「おい嬢ちゃん危ないぞ! 行くんじゃない!」

「みんな山には来ないでね! 危ないからー! 絶対だからねー」


 時転車まで行ければきっとどうにかなると擬態を解除。寸胴の体の下の方からヌラヌラした体液が出てくるけど、摩擦をこれで無くして一気に向かう。いやーやっぱ速いわー。

 そして、私を明らかに狙うテケリリテケリリの合唱。

 昔はこれを音声で制御してたらしいけど、古代クトゥルー語は私は授業寝てたから覚えてないよ! 文法の授業面倒くさかったんだもん!

 一応今の私の言葉で問い掛けてみるけど、敵意だけが返って来る感じ。そして、来ないでといったのに、村人たちの気配まであるし。


「あーもう!」


 洞窟までたどり着いて時転車を漁ると、防犯ブザーと防衛用の分子破壊銃が見つかる。弾が入ってるのを確認していると、後ろに人間の気配が。


「化け物だ! 撃て! 焼け!」


 うわっ問答無用でなんか発射してきた。でも私の皮膚でボヨーンと跳ね返ってそこら辺に落ちる。中々危ない武器だなぁ。暴徒鎮圧用かな。なんか火が出るのはやばそうだけど、逃げなきゃ。巻き込まれちゃうよ「アレ」に。

 洞窟の奥に逃げ込もうとしたら、目の前の壁が綺麗に消えた。


「え?」

「テ、ケ、リリ?」


 霧みたいな物が固まって、私の見た目になる。――擬態までするの!? でも無表情なそれは当たり前のように私の首を切ろうと触手を振るってくる。慌てて私はまた人間に擬態して、洞窟の入り口へ。さっきの人間たちに必死で叫ぶ。


「あ、あれ、早く燃やして!」

「うわっ嬢ちゃん! なんでこんなところに。おい! 奥からなんか出てきたぞ! 」


 私の本来の姿に擬態したソレは、威嚇しようとしたところをすごい勢いで燃やされていく。でも、量が少し減ったけど霧に拡散したそれは、洞窟の入り口に殺到する。パニックになって棒立ちの人間たち。まるっと消されちゃうよ! 仕方ない! ええい!


【伏せて後退せよ!】


 強引に脳内に命令。みんな素直に従ってくれる。でも、外に向かった霧は、山を下って行っちゃう。ヤバイ。分子破壊銃を乱射するけど、練習なんてしてないからほっとんど当たってない。――あ、やば山が削れた……。そして弾切れ。


「うそーん!」


 思わずショックで私が落とした防犯ブザーが高音域で作動したその時だった。


「アオーン」


 削り取られた山肌が120度以内の角度になった時、次元の狭間を通り抜けてやってきたそれは、辺りに青い黒い煙を立ち上らせて現れた。――ああ、その姿は……!


「ポチ!」


 我が家のペットの、ティンダロス種の血統書付きの犬(?)のポチだ! ポチは、私の匂いを嗅いだ後、尻尾を振ってアレの群れに突っ込んで行った。噛み付き呑み込み、空中を自在に走ると全てを平らげていった。流石だわーポチ~。




   ***




「うちの娘がご迷惑おかけしました」


 山を降りたら、なんか私の擬態に雰囲気似てる人が私を迎えに来ていた。念波で分かる。お母さんだ!


「ほんと、こんな所に来て~おのぼりさんなんだからこの娘は」

『数世紀ぶりに目が覚めたらびっくりしたわよ。ポチの跡を追ったからいいものの』


 音声と脳内と、同時に会話しながら、集落に別れとお礼を言って、私たちは人間から見えないようにお母さんの時動車(時空移動車)で宇宙へと抜け出す。


「ビックリしたわよー。内庵斗君からあなたが学校に来てないって連絡来て、慌てて探したらこんなところにいるじゃない? ポチをいっぱい可愛がるのよ」


 ポチは青い液体を車内に撒き散らしながらお腹を出してる。いつも散歩させてて良かったと触手で撫でてやりつつ、内庵斗先輩が心配してくれるとか、ちょっと脈ありじゃない?とか思いながら、私は地球を後にしたのだった。

 地球、また観光で来ようかなー。今度は先輩も誘っちゃったりして☆

「お母さん、これ地球で食べたオヤコードゥン。食べてみて!」

「……いあいあ……かなり名状しがたいお味ね。だーいぶ材料が違うと思うわよ?」



(*^-^)/\(*^-^*)/\(^-^*)(*^-^)/\(*^-^*)/\(^-^*)(*^-^)/\(*^-^*)/\(^-^*)(*^-^)/\(*^-^*)/\(^-^*)


ネタがもっと分かったら面白かったろうにぃ!

という嘆きにお応えして、補足の資料です。

より子ちゃんの歴史のノートから抜粋しましたよ( *・ω・)ノ


・昔、地球を植民地にしていた。

旧支配者と呼ばれ、人間どころか生物が生まれるかどうか位の遥か古代に君臨していたと言われる種族。動物園と植物の特性を持っている(ミスカトニック大学調べ)


「ショゴス」と呼ばれる何にでも形態変化出来る生物を生み出して、何かと便利に利用していたのだけど、知恵をつけられてしまい大反乱! 全面戦争になり、最終的に地球から離脱しています。


後、やっぱり、宇宙から襲来した「ミ・ゴ」という蟹とかみたいな甲殻類みたいな奴らとも戦って、完全に地球が嫌になった模様。


作っていた都市は水の中(水没)だったり、南極の狂気の山脈(当時はまだ暖かい頃。ふるすぎぃ!)と呼ばれる遥かな場所に今もある~ということになっています。


・名状しがたい

まともに見ると人類は発狂してしまう物をだいたい指しています。ヤバス!


・ないあーと先輩

ニャルラトホテップ等とも呼ばれる邪神の一柱。基本見ただけで人間はヤバス! 旧支配者よりも、さらに前に地球にいたらしいです。


・ティンダロスの猟犬

時間も空間も飛び越えて、定めた獲物を必ず襲うという恐ろしいもの。実際には犬でもなくて、なんかこう色々と匂いを放ちながら青い液体を垂らしながらドバァって出てくる奴です。逃げるには、球にした部屋に閉じ籠るしかなく、それも部屋に影が出来たとかだけでそこから入ってきます。ヤバス!


・ショゴス

旧支配者が生み出した動物(?)

何にでも変身、変形するし、幾らでも増えるし、知恵もつけるし、かなり厄介。自動で増えるバイオロボみたいな感じです。

初代はテレパシーで操ってたのが、後期型は音声認識で操作(便利!)。

でも、反乱起こして、旧支配者の首を狩りまくるヤバイのになりました。鳴き声は「テ・ケリリ」とか「テケ・リリ」とか、聴こえたら逃げて!


・分子破壊銃

旧支配者たちの技術力は世界一ィィィイ!

なんと、分子ごと破壊してるする銃だそうで、喰らったら細胞ごと崩壊します! ヤバス!



・聖ミスカトニック大学

だいたいクトゥルフ絡みのことを調べてるのは何故かここの大学。南極にまで人を派遣してたりと、やたらと財力あるざます。



・昔燃やされた

一応生物である旧支配者は、酸素が薄くても寒くても暑くても平気という万能種族なんですが、やたらよく燃えるそうです。

遊星からの物体Xという作品では、分裂(ショゴスぽい)したものも、ことごとく炎上しています。

炎上って怖いね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] よーし!カート・ラッセルさんを呼ぼう!(^ω^) 時空間よそ見運転は……やめようね!(^ω^) 名状しがたい朝食ほんと好き❤(^ω^) ゴ・ミかな?(失礼すぎる) テケ・リ・リ!を退散させ…
[良い点]  かなりのドタバタに笑いました。  末尾の解説なくても十分おもしろかったです!
[良い点] 判りやすくクトゥルフ系を網羅した感じですね! [一言] こういう作品も、キチンとクトゥルフ神話に列挙していいと思うようになった自分。すまんラヴクラフト。 地球には好みのメンズは居なかった…
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