白猫くんは撫でられたい 改定1
息を殺して気配も殺してー。
楽しく会話をしているチュンチュンに狙いを定めてー。
そして一気にガオー!
「で、出たぁー! 白い悪魔だぁー!」
「警告、警告! シロが出現! 直ちに逃げろー!」
遅れた一匹にすかさず飛びかかってー。
一気に首をガブリ!
「う、うわぁー! 助けてぇぇ!」
「タロー!」
「バカ、構っている暇はないだろ!」
「だ、だけどタローが!」
「シロに勝てんのか!? とにかく逃げるぞ!」
ニッヒッヒッ。チュンチュンを仕留めた!
僕って天才! いい感じに急所をかじれたし、気配も殺せたし!
あ、でも他のチュンチュンは逃げちゃったな。兄ちゃんなら逃げられる前に全部狩っていたかも。そう考えると僕はまだまだだなぁー。
まあいいやっ。とにかくチュンチュン捕まえることできたし、これはこれでいいかも!
「あ、そういえば」
そろそろあの子がいるかな。ギラギラがすっごく高いところまで昇っているし、もしかしたら会えるかも!
じゃあこのチュンチュンをプレゼントしよ! この前のチューチューはすっごく喜んでくれたし、同じぐらい美味しいチュンチュンも喜んでくれるかも!
よぉーし、そうと決まったら早く会いにいこうっと。えっと、これ確か言葉があったんだっけ? なんだったかな? おっきい奴らが言ってたのを聞いたんだけど、うーん……。
あ、思い出した! ペンはかわせだった!
よぉーし、ペンはかわせだ。急いであの子のところに行くぞー!
「るんるんるーんっ」
喜んでくれるかなぁー?
遊んでくれるかなぁー?
いつもなら笑ってくれるし、あと頭も撫でてくれるし!
気持ちいいんだよね、撫で撫で。もぉー気持ちよすぎてうっとりしちゃうし、ついついゴロってしちゃうし。ああ、早く会いたいなぁー。
あ、でももしかしたら変な奴らに匂いがつけられているかも。ふ、ふーんだ。あの子は僕のものだもんっ。絶対に渡さいないもん! だから上書きしてやるんだもん!
と、とにかく! あの子は僕のもの! だから絶対にチュンチュンは喜んでくれるし、僕の頭も撫でてくれるし、問題ないもん!
「ふんふふーんっ」
あ、そろそろだ。ここを右に曲がればあの子がいるかも。
今日はどんな風に喜んでくれるかなぁー?
『くぉらぁー! また来おったな、ドラ猫がぁぁ!』
って、うわぁぁぁぁぁ!
ヨボヨボがいる! なんでこんな時間にいるんだよ! いつもなら畑のほうにいるじゃん!
に、逃げなきゃ。逃げなきゃまた横腹を蹴られる!
『おじいちゃーん、ご飯だよー』
『ちょっと待ってろ、すぐ行く!』
あ、あの子の声だ。じゃあこの先にあの子がいるんだ。
なら逃げるわけにはいかないぞっ。チュンチュンを咥えているから、牙は使えないけどこの爪でお前を倒してやるぅー!
「喰らえ、必殺ツメツメアタック!」
『いたっ! やりやがったな、ドラ猫!』
よ、よし! ヨボヨボは僕の動きについてこられないみたいだ。
ツメツメアタックは手に当たっちゃったけど、これならイケる! 今度は確実にその首を取ってやる!
「覚悟、ヨボヨボ!」
『調子に乗るなっ』
僕が大きく飛んでヨボヨボの首に攻撃しようとした瞬間だった。
突然、横腹にとんでもない衝撃が走ったんだ。何が起きたかわからなくて、あまりの痛さに咥えていたチュンチュンを落としちゃうほどすごかった。
おそらく蹴られたんだ。だけど僕は執念で立ち上がった、けど上手く呼吸ができない。しかもすっごい蹴りを食らったせいか足がガクガクした。
「うぅ、痛いぃー」
『クックックッ、年貢の納め時だな』
や、やばい。このままじゃあやられる。
ここまで来たのに、くそぉー!
『おじいちゃん!』
『うおっ! なんだ、お前か』
『なんだじゃないよ! ほら、ご飯冷めちゃうから早く早く!』
『待て! 今そこのドラ猫を始末するところ――』
『猫いじめちゃダメでしょ! ほら、手だって引っかかれているし!』
『あいつが先に手を出してきたんだ! ワシャ悪くないわ!』
『いつもいじめているからでしょ! とにかく帰るよ!』
た、助かった? いや、助けてくれたのかな?
よ、よかった。あのままじゃあ僕は確実にやられたよ。
『あ、また君かぁ。ダメだよ、おじいちゃんに襲いかかったら』
「チュンチュン持ってきた! あと、助けてくれてありがとー!」
『あ、スズメだ。うーん、この子は死んじゃっているなぁ。ダメだよ、無駄な殺生は』
「褒めて褒めて! あと頭撫でてー!」
『お墓を作らなきゃ。君も早く帰って、身体を休めるんだよ』
今日も僕は頭を撫でてもらった。
どうやらチュンチュンのプレゼントはよかったみたい。よぉーし、またチュンチュンを狩って持っていくぞー!