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ナデシコ転生!~軍艦擬人化美少女無双物語~  作者: 881374
第0章、【先行公開お試し版】※本編は第1章からです。
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第8話、デストロイヤー転生!【シロクマさんと響ちゃん編】後編

「確かに連邦軍の最前線は、ここエイジア東北部の『マンジュウ』ではありますが、この先には愚かなことにも、連邦の革命思想に毒された、人間ヒューマン族の暴徒が大勢待ち構えていることでしょう。そのような人間ヒューマンでありながら、獣人族ケダモノである『紅きシロクマ』の下僕と成り下がった者どもから、清く正しき鬼人族や人間ヒューマン族を守れるのは、あなたたち帝国陸軍兵士しかいないのですよ?」




「……わかった、申し訳ないが、ご厚意に甘えさせていただこう。──貴君の、武運の長久をお祈りする!」




「できれば、張原ヴァルハラ神社でまたお会いしましょう──と、言いたいところですが、自分のほうは無理でしょうね。では、ご武運を、お祈りいたしております!」


 そのようにして、お互いに敬礼を交わして別れる、帝国陸軍中尉殿と、自称帝国海軍の軍属の少女ですが、ここに及んでようやく、連邦軍の隊長格のシロクマさんのほうも、我へと返ったようです。


「──あっ、待て、何をどさくさに紛れて、逃げてやがる!」


「まあ、隊長さんのほうこそ、待ちなって。君たちの相手は、僕がしてあげるから」


「ケッ、おまえのような小娘が、俺たちシロクマ兵士の相手が務まるものか! ──それとも、何か特殊なテクニックなんかを、持っているとでも言うつもりなのか?」


「ああ、ご満足いただけるかはわからないけど、それなりのテクニックは持っているよ? ──君たち全員を、一度でお相手できるくらいにはね」


「……何だと?」


 思わぬ言葉に訝しげな表情となるシロクマ隊長をよそに、大きく両手を広げて、すべての連邦軍兵士へと語りかける、水兵服の少女。




「さあ、まどろむがいい、──太古の神々の、淫夢ユメの中で」




 ──その瞬間、世界が一変しました。




 たった今までは、視界のすべてが純白の大雪原だったというのに、一瞬にして禍々しいまでに、『赤黒く』染め変えられてしまったのです。




 ──そう、あたかも、巨大な怪物の体内にでも、くわえ込まれてしまったかのように。





「うわあああああっ⁉」


「よせっ、近寄るな!」


「やめろっ、やめてくれ!」


「許してくれ、俺が悪かった!」




 次々と、屈強なる獣人シロクマ兵士たちの、悲鳴のような叫び声が聞こえてきます。


 何とこの『異変』は、無数に立ち並ぶ、戦車の中にも及んでいたのです。


 そのほとんどが鋼鉄でできているはずの、砲塔や操縦席が、赤黒い肉体に変わったかと思えば、みるみるうちに多数の女性の、一糸まとわぬ肢体が現れたのでした。




 ──そのすべては、兵士たちがなぶり殺しにした、鬼人族や人間ヒューマン族の女たちでした。




『ウフフフフフフ』


『アハハハハハハ』


『クスクスクスクス』


『近寄るな、ですって?』


『やめろ、ですって?』


『許してくれ、ですって?』




『『『私たちが、泣き叫びながら、そう言った時、あなたたちは聞き届けてくれたかしら?』』』




「「「く、来るな、やめろ、こっちに来るんじゃない!」」」




『『『──さあ、私の胎内なかで、果て逝きなさい』』』




「「「うわああああああああああああああああああああ!!!」」」




 ──その刹那、周囲の景色が元通りの大雪原となるとともに、無数の爆音が轟き渡り、至る所で爆炎が燃え上がりました。




 なぜなら驚いたことに、連邦軍の戦車部隊が、味方同士で砲撃し始めたのです。




 次々に、ただの鉄くずの塊と成り果てる、連邦軍戦車群。


 それをただ冷ややかな瞳で見つめ続ける、水兵服の少女。


 辺り一帯が燃えさかる炎と立ちのぼる黒煙とに覆い隠されるとともに、すべての音が鳴り止んで、静寂に包み込まれました。




「……おや、まさか生き残りがいるとは、驚いたな」




 ようやくすぐ目と鼻の先までに迫ってきたところで、彼女は初めて、十数名ほどのシロクマ兵たちの、雪を踏みしめる音に気がつきました。


「それは、こちらの台詞だよ、お嬢ちゃん。まさかこんなところで、『同胞』に会えるとはね」


 そのように、意味深な言葉を発するとともに、くだんの隊長格のむき出しの肉体から、すべての火傷が一斉に消え去ったのでした。


「……同胞だって? ふん、『紛い物』が、のぼせ上がらないでくれないか?」


「ほう、するってえと、おまえさんのほうは、『天然物』なのかよ⁉ まさか先史文明時代から、生き続けていた個体がいたとはな!」


「そっちこそ、まさか本当に連邦が、私たち『ショゴス』の欠片を人体に埋め込むことによって、人造『不定形兵士』の開発に成功していたなんてね。道理で、さっき『太古の神々(クトルゥフ)の夢』を見せても、あんたたちにだけは効かなかったわけだ」


「しかもお陰さんで、戦車砲の直撃なんかだと、さすがに耐えきれないものの、これくらいの全身火傷だったら、自力で治癒できるってわけさ」


「そいつは、とんだ『バケモノ』になったものだね?」


「お互い様だろ、『天然物』さんよ?」


「……それで、どうするつもりだい? 見るところ、十二、三名ほど生き残っているようだけど、どうせ全員共が、『人造ショゴス兵』なんだろう?」




「もちろん、バケモノ同士の殺し合い(せんそう)の、始まりってわけさ。──集合的無意識とのアクセスを申請! 『Tー34』の車体構造情報(データ)を、緊急インストール!」




 そのように宙空に向かって言い放つや、これまで二足歩行で直立していたシロクマならではの巨体を、四つん這いにさせる隊長さん。


 ──すると何と、横っ腹に『Tー34』という文字が黒々と浮かび上がると同時に、その身体が急激に変形メタモルフォーゼしていったのです。


 そしてそこに現れたのは、十数台もの、連邦軍ご自慢の主力戦車、『Tー34ー85型』でした。


『ぐはははは、いくらオリジナルのショゴスだろうと、85ミリの戦車砲を、十数発も同時に食らえば、木っ端微塵だよな!』


 全身が戦車と化していながら、どこに発声器官があるのかは謎ですが、とにかくすでに勝った気になって高らかと言い放つ、隊長さんの耳障りな胴間声。


『──全車、主砲BT砲、斉射!』


 その途端、爆音が鳴り響き、少女の小さな身体はたちまちのうちに、爆炎に覆い隠されてしまいました。


 ──しかし、




「……やれやれ、問答無用に発砲するなんて、ひどいじゃないか?」




 何と黒煙が晴れた後には、かすり傷一つついていない、自称『帝国海軍の軍属』が、まったく同じ場所にたたずんでいたのです。


『な、何で、戦車砲の集中砲火を浴びておいて、まったくの無傷でいられるんだ⁉』


「そりゃあ『駆逐艦』が、戦車砲ごときで、ビクともするもんか」


「……駆逐、艦?」




「──集合的無意識とのアクセスを要請、大日本帝国海軍所属、特Ⅲあかつき型駆逐艦2番艦、『ひびき』の兵装情報(データ)を、インストール開始!」




 何やら少女が宙空に向かってつぶやくや、何と言うことでしょう、その華奢な右腕が、禍々しき大砲へと変化メタモルフォーゼしたのです。




「主砲、50口径127ミリ砲、発射!」




『『『──うわあああああああっ、駆逐艦の艦砲射撃を、陸戦に持ち込むなんて、反則だろうがあああああああ⁉』』』




 それから後は、まったくのワンサイドゲームに終始して、不可侵条約破りの恥ずべき侵略者であるシロクマたちは、みんな退治されてしまいました。




 ──だって、いかにTー34戦車が優秀であろうと、本来海上において、たった一回の海戦で国家の命運を左右しかねない、総力戦を常に闘い続けている、歴戦の軍艦に対して、たかが陸専用の一般兵器が、攻守共に太刀打ちできるはずが無かったのですから。




 ……ちなみに、戦争自体は残念ながら、鬼ヶ島の敗戦で終わってしまい、戦後賠償の一環として、一応は戦勝国である紅いシロクマ連邦共和国に、一隻の駆逐艦が渡されることになったのですが、それこそが鬼ヶ島における名称『響』であり、のちの連邦軍所属軍艦『ヴェールヌイ』でした。




 ──つまり、『彼女』は、あの日連邦軍を食い止める代わりに、自分自身を差し出すという約束を、ちゃんと守ってあげたのです。

※今回(第7話と第8話の前後編)もお読みくださり、誠にありがとうございます。


 前々回までの【某合衆国編】に引き続き、かなりきわどい表現が登場しますが、あくまでも本編が本格的に始まる第1章に先駆けての【試作版プロトタイプ】に過ぎず、作者にはイデオロギー的偏見なぞ、一切ございません。(むしろ、共産趣味、万歳ハラショー!)


 なお、本物の『本編』である第1章については、今週中には連載開始する予定です。

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