第6話、デストロイヤー転生!【鬼ヶ島の時雨ちゃん編】(その5)
※【ご注意】今回は、これまで以上に大変きわどい表現が登場しますが、あくまでもこの作品が舞台としているのは、過去の時代なぞではなく、ファンタジー異世界なのであり、現在合衆国は悪いオークたちに支配されており、人間は奴隷にされていると言った、ディストピア的世界観となっておりまして、人類側としたら、悪いオークたちを武力を用いて殲滅してでも、自由を取り戻さなければならないのです!
けして、某第二次世界大戦等の、史実とはまったく関係は無いのです!
もちろん実在の『某合衆国』や『某西海岸都市』とも、一切関わりはありませんので、悪しからず。
──天使たちの街。
私が元いた世界では、この都市のことを、そう呼んでいた。
しかし、この世界においては、すべての生きとし生けるものの、『原罪と退廃』の象徴として、『失楽園』と呼ばれていた。
──とは言っても、街並みの景観自体は、世界一の資本主義国家だけあって、まさしく『自由』と『豊かさ』に満ちあふれており、この戦時下にあって、商店の軒先には物品が山積みとなっていて、繁華街を闊歩する市民たちは皆笑顔で、道路では最新型のオートモービルが行き交い、見るからに活況を呈していた。
何せ、現在列強諸国のほぼすべてがしのぎを削っている、地獄そのままの激戦地帯である、ガリア大陸とも、エイジア大陸の東部や南部とも、海を隔てて独立した大陸に立地しているのである。
さすがに夜間の灯火管制は実施されてはいるものの、その他の人々の暮らしぶりや各企業の経済活動等は、平時同然──否、むしろ戦時景気のお陰もあって、より一層活力に溢れているほどであった。
──あたかも、他の種族の屍肉を貪る、ハイエナであるかのように。
……それでも、これが元いた世界のように、教養があり信心深く、倫理や規律もちゃんと重んじる、白色人種の人類であれば、まだましであったろう。
確かに彼らは、他民族に対する差別意識は高かったが、その一方で、遵法精神や社会通念のほうも、十分に備えていたゆえに、
天下の往来で、他の種族の者を、鎖で繋いで引き回したり、特に理由も無いのに暴力を振るったり、場合によってはレイプしたりなぶり殺したりすることなんて、断じて行わなかったであろう。
──そう、まさに今私の目の前で、ヒューマン族を始めとする他の種族の者たちを、奴隷や商品として扱っている、この国の主である、オークたちのように。
「──おいっ、のろのろするな!」
「……あ、あぐっ……ご、御主人様、お……おやめ……ください」
「このっ、奴隷の分際で、口答えするつもりか⁉」
「──ぎゃっ⁉ す、すみません! 御主人様、お許しを!」
とても満足に食事を与えているとは思えない、痩せ細った褐色の肌をした、ヒューマン族の幼い女の子を、首輪から伸びた無骨な鎖で引きずり回しておきながら、とうとう力尽きて道路に倒れ込んで動けなくなった途端、殴る蹴るの暴行を加え始める、『持ち主』と思しき、見るからに恰幅のいいオーク族の中年男。
この国においても指折りの大都会の往来で、このような暴挙に及べば、本来なら衆目を集めて、官憲や良識ある者が止め立てするところであろうが、彼女と同じ年頃の女の子がいる家族連れを始めとする通行人たちは、端からまったくの無関心だし、警察官と思われる制服姿のオークに至っては、ニヤニヤと笑みすら浮かべながら、中年オークの暴力行為を静観するばかりであった。
……その時、ふとこちらを向いた、彼女の生気のまったく無い瞳が、語りかけてきた。
──もう、いっそのこと、殺してくれ、と。
──こんな地獄そのままの、狂った世界で、これ以上生き続けたくはない、と。
だから私は、何の躊躇もなく、『作戦』を遂行することにしたのだ。
「──おい、こんなところに、ヒューマン族の小娘がいるぞ?」
「何だかオークにしてはやけに小柄で、フードなんか被って顔を隠しているから、怪しいと思っていたら、さては不法移民か逃亡奴隷だな?」
「……ぐへへ、持ち主が同伴していないヒューマンは、殺そうが強姦しようが、構わないんだよな、おまわりさん?」
「ああ、もちろんだ。──ただし、何か危険が無いか確認するために、順番は本官が一番だ、いいな?」
「──ちぇっ、きったねえの」
そのように、正体を現した私のほうへと、オークならではの、ゲスの極みの台詞を口にしながら迫り来る、雄豚ども。
その一方で、雌のオークどもと言えば、ただ顔をしかめて幼い我が子の目を塞ぐばかりで、同胞の雄豚を止め立てする者なぞ、一匹たりとていなかった。
──というわけで、アメリゴ大陸、『浄化作戦』、開始!
「……集合的無意識とのアクセスを要請、大日本帝国海軍所属白露型駆逐艦2番艦、『時雨』の兵装情報のインストールを開始」
「──おい、何だ、このヒューマンは⁉」
「み、右腕が、まるで大砲のようになりやがったぞ!」
「まさか、旭光の犬か、東南エイジアのゲリラ兵なのか⁉」
「動くな! それ以上おかしな真似をすれば、本官のマグナムが──」
「──主砲127ミリ砲、発射」
そして、盛大なる『屠殺ショウ』が、始まった。
※今回もお読みくださり、誠にありがとうございます。
これまで5回にわたって、かなりきわどい内容の作品をお送りしてきましたが、これ以上続けると、何だか取り返しのつかないことになりそうですので、一応今回で一区切りつけさせていただこうかと存じます。
なお、かねてよりお伝えしております、本物の『本編』である第1章については、来週中には連載開始する予定です。
とりあえず次回については、某合衆国の次はもちろん、かつての某『紅い連邦共和国』を敵に回して、某軍艦擬人化美少女が大立ち回りを演じるという、【特別編】をお送りいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします♡