第3話、デストロイヤー転生!【鬼ヶ島の時雨ちゃん編】(その2)
※【ご注意】今回もかなりきわどい表現が登場しますが、あくまでも本編が本格的に始まる第1章に先駆けての【試作版】に過ぎず、作者にはイデオロギー的偏見なぞ、一切ございません。
あくまでもこういった(本編とはまた違った)『別ヴァージョン』もあり得たということで、ご了承ください。
凶暴極まる白オークたちの姿を見て、すぐさま手持ちの武器を構える、俺を隊長と慕う現地人部隊であったが、我が旭光帝国陸軍お馴染みのサンパチ銃だけでは、筋骨隆々と鍛えられた肉体に、軽機関銃や自動小銃にバズーカまでをフル装備した、物量豊富な合衆国軍を前にしては、非常に心許なかった。
「……ヒューマン族のチビどもが、いっちょ前にやるつもりか?」
「いいだろう、全員挽肉にしてやるぜ!」
「みんな、誰が一番数多くの虫けらどもをひねり潰せるか、勝負しようぜ!」
「はは、そいつはいい!」
「どうせ、俺が一番だけどな!」
「──いやいや、ちょっと待ってくれよ」
「そんなんじゃ、あっさり勝負がついて、おもしろくないだろうが?」
「そうそう、せっかく今まで生き残っていた、最後の一匹の旭光の黄色い鬼子なんだ」
「せいぜい楽しまないと、もったいないじゃないか?」
「──ねえ、そうですよね、小隊長」
「……ぐふふ、そうだな、少々趣向を凝らすことにするか」
こちらの装備が取るに足りないものであるのを見て取り、絶対的優位を確信して、余裕綽々に言葉を交わしていく、十名足らずの『白きオーク』兵たち。
……出会い頭に問答無用に発砲されて、一気に片を付けようとしなかったのには助かったが、こいつらろくなことを企んでいないようだけど、一体何をするつもりだ?
くそっ、こっちは『千年以上も眠り続けていた、氷漬けの美少女』なんていう、とんでもないオーパーツを見つけてしまって、戦闘配置をとる暇もなかったというのに。
そのように、自分のすぐ真後ろにそびえ立っている、氷の柱の中で目覚めたばかりの謎の少女のほうへと、うらめしげな視線を向けるものの、なぜか『彼女』のほうは、アメリゴ兵のほうを、目を丸くしてしげしげと見つめていた。
「……何ですか、アレは? 集合的無意識での検索結果は、『オーク』と示しておりますが、まさかここは、21世紀の日本で大流行した、異世界系のWeb小説なんかでお馴染みの、剣と魔法のファンタジー世界じゃないでしょうね?」
うん? 相変わらず、『ニッポン』とか『イセカイ』とか『ウェブ』とか、妙ちきりんなことを言っているが、『オーク』のことは知っているのか?
超常的存在による、予想外のつぶやき声を耳にして、詳しく話を聞こうとした、まさにその時。
「──決めた、そこのヒューマンども、おまえらが旭光の黄色い鬼子を殺せば、命だけは助けてやろう。死にたくなければ、|旭光野郎を殺すがいいぜ《キル・ザ・ジップ》!」
「「「なっ⁉」」」
隊長格のオークによる、ある意味予想通りの外道の言葉に、一斉に凍り付く、俺以外の反乱部隊。
「──おお、それはいい!」
「さすがは、小隊長!」
「何という、慈悲深さw」
「良かったな、原住民ども?」
「おまえらが生き延びられる、最後のチャンスだぞ!」
「さあ、目の前の、旭光兵を、殺すんだ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「キル・ザ・ジップ!」
「「「──エブリバディ、キル・ザ・ジップ!!!」」」
まさしく惨めな敗残兵である俺たちのことを嘲るようにして連呼し続ける、アメリゴ兵たち。
それに対して、ついに堪えきれなくなった一人の青年の現地兵が、勇敢にも怒鳴り返した。
「ふ、ふざけるな! この侵略者どもが! オニヅカ隊長は、我々島民にとっての大恩人なんだ! たとえ殺されようが、隊長に銃を向けたりするものか!」
そう言い終えるとともに、サンパチ歩兵銃を構えようとしたところ、
「──だったら、死ね」
こちらの旧態依然とした小銃とは違って、ボルトアクションなぞ必要としない、ケルビン自動小銃の引き金をさも無造作に引き絞るや、ヒューマン兵をあっさりと蜂の巣にしまう、オーク兵。
「ビルマ⁉」
「き、きさまっ!」
「よくも、ビルマを!」
それを見るや、一斉に気色張り、おのおののサンパチをオークたちのほうへとに向ける、ヒューマン兵たち。
しかし相変わらず圧倒的優位な状況のアメリゴ側は、微塵も動ずることなく、へらへらと下卑た笑みを浮かべるばかりであった。
「おっと、無駄無駄、おまえらがその時代遅れの歩兵銃で、ちんたらとボルトアクションをやっている間に、こっちのケルビンが火を噴くだけだぜえ? 今お手本を見せてやったばかりだというのに、おつむの足りないやつらだな?」
「安心しろ、まだ『ゲーム』は有効だ」
「今からでも、そっちの旭光兵を殺せば、他のやつは全員見逃してやるぜ?」
そう言いながら、こちらへと銃口を向ける、白きオークの熟練兵たち。
もちろん彼らの最新型ケルビン自動小銃は、ボルトアクションなぞ必要とはせず、ただ軽く引き金を引くだけで、俺たち全員を蹂躙することができるのだ。
──くそう、万事休すか。
「……村長」
「──駄目です! 同じことを、何度も言わせないでください!」
「そうですよ、隊長!」
「ここには、隊長をオークどもに売ってまで、生き延びようとするやつなんて、一人もいませんぜ?」
「そうでさ、ここは仲良く、あの世に参りましょうや!」
「きっとこことは別の世界では、旭光帝国が全世界を支配して、すべての種族が仲良く平等に暮らしている、そんな夢のようなファンタジーワールドもありますよ!」
そのように、もはや覚悟を決めて、むしろほがらかな笑みすら浮かべながら言ってくる、俺にとって何よりも大切な『仲間』たち。
「……そうか、そうだな。俺もできるなら、一度だけでもいいから、そんな平和な世界を、この目で見てみたかったよな」
そのように、つい帝国軍人らしくもない、『心からの本心』をこぼすや、島民たちと息を合わせて、間違いなく先に撃たれてしまうのを覚悟の上で、銃のボルトを起こそうとしたところ。
「──提督の命令を確認、これより自律行動を開始いたします」
は?
突然聞こえてきた意味不明の言葉に、思わず振り向いたところ。
「──なっ⁉」
真後ろの氷塊の中で、謎の少女の裸身が光り輝きだして、更には氷の表面ではこれまで以上に、漢字やひらがなやカタカナや英数字が乱舞し始めていたのだ。
「──集合的無意識との、緊急アクセスを要求。大日本帝国海軍所属白露型駆逐艦2番艦、『時雨』、抜錨!」
※今回もお読みくださり、誠にありがとうございます。
前回に引き続いてまたしても、いかにも『旧日本軍賛美』&『アメリカ軍sage』な作風になっておりますが、作者にはけしてイデオロギー的な偏見なぞありませんので、どうぞ誤解の無きように。
あくまでも娯楽作品として、「旧日本軍がどこかの遺跡で、先史文明のオーパーツであるところの、軍艦擬人化美少女のプロトタイプを発見したりしたら、面白いんじゃないか?」という発想を基に作成しただけですので、悪しからず。