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第9話 公爵令嬢は魔術で無双する

2019年9月16日 大改稿。

アリスティア視点の一人称から三人称に変更し、加筆しました。

2019年12月9日 若干の修正と体裁の変更。

2020年7月20日 若干の改訂。



誤字報告、ありがとうございます!

大変助かります!



ブックマーク、評価、感想、レビューなど、いつも応援ありがとうございます♪


 

 

 皇宮へ登城し、皇太子殿下の執務室に出仕(?)した初日。

 アリスティアは皇太子から、その日の予定を聞いた。

 午前中は、皇太子は帝王学を学ぶらしい。

 アリスティアが公爵家で学んでいた勉強は、教師がすぐに手配出来なかったから、今日はお休みだという。そのかわり、皇太子の教師に彼女が今まで学んでいた勉強の内容を、教材や教科書替わりの本を見せ、進捗を確認する事になった。

 それで、彼女が今までやって来たところは教科書の何ページ目か伝え、そこまでの復習として皇太子の教師に質問をされたから、それに答えていったのだが。

 途中から皇太子も教師も真顔になり、最後には驚愕の表情を浮かべていた。

 確認されたのは、歴史、数学、文学、魔法学、魔術学、薬学、経済学、マナー、言語学三ヶ国語、文化史、政治学、ダンス。

 今考えると凄く多岐に渡っていたんだなぁ、とアリスティアはのんびりと考える。

 公爵家の長女として恥にならないようにしなければならない、と言われて育ったのだから、頑張らざるを得なかったのだ。

 何歳から習っていたかと聞かれたから「多分三歳?」とアリスティアが答えたら、なぜかドン引きされた。

 皇太子が口に掌を当てて顔が赤くなっていたけどアリスティアは「風邪でもひいたのかしら?」と考えていた。

 ついでとばかりに皇太子からも質問されたのだが、それにも答えたらやっぱり皇太子は驚愕していた。


「バークランド公爵は、こっそり準備してたのか」


 と皇太子が言ったら、エルナードが「父上は万が一を考えていたに過ぎません」と即座に返していた。皇太子はそれを聞いて真顔になっていた。


(でも万が一って何だろう? 教師の人には、五歳でここまで進んでいるのは凄い事だと褒められたけど。普段は滅多に褒められないから、とっても嬉しい!)


「でもわたくし、魔法学と魔術学を学んでいるけれども、実技は習っていないから、せっかくだから実技を学びたいのですわ」


 アリスティアは試しに言ってみた。だが、双子の兄たちも皇太子も、実技は危ないからダメだとアリスティアを止めた。

 そこへ遊びに来た風の精霊王エアリエルから、


「愛し子アリスティアは素晴らしい才能を持ってて、既に相当の魔術を使えるよ」


と言われたからか、午後からはエルナードと風の精霊王エアリエルと、急遽呼ばれた宮廷魔術師筆頭補佐に伴われ、魔術師団の練習場に行き、そこでアリスティアがどれほど魔術を使えるのか見てもらう事になった。

 ちなみに風の精霊王エアリエルが現れたら、教師が驚愕しすぎて気絶した。宮廷魔術師筆頭補佐も吃驚していたけど、どちらかと言うと興奮していた様だった。

 ただ、エアリエルたち精霊王は愛し子以外から話しかけられても無視するから、宮廷魔術師筆頭補佐は、興奮してはいてもエアリエルに話しかけるという不作法はしなかった。

 皇太子は、午後からの執務を放り投げてアリスティアの魔法と魔術を見たがったが、執務を放り投げるのはダメ、とアリスティアが言ったら渋々執務を処理する方に全力をかける事にした様だった。クリストファーは青くなっていたが。


 そして今、魔術師団の練習場にいて、エアリエルが結界が弱すぎると言ってガチガチに固めたのだが、宮廷魔術師筆頭補佐はそれを見てがっくりきていた。なんでも、皇宮の結界は、現行で最も堅いものらしい。

 そしてエアリエルに促されて、アリスティアはとりあえず今使える最高の魔法と魔術を使用する事になった。

 簡単な魔術を披露する。


水の竜巻(トゥルボ・アクアエ)


「は⁉ 上級魔術だと⁉ しかも詠唱破棄だと⁉」


(詠唱破棄って何だろう? できそうだから頭に浮かんだ事象を言葉にしただけなんだけどな)


 アリスティアはそんな事を考えながら、次の魔術を発動する。


炎の(トゥルビーネ・)竜巻(フランマエ)


 宮廷魔術師筆頭補佐の驚愕が深くなって、目が零れそうになっていた。


土壁(ルト・ムロス)


 土属性の巨大な壁を作る魔術。練習場の端から端まで行き渡っている。


(フェルム・)(イン・ヴェントゥム)


 風属性の巨大鎌鼬(かまいたち)。土壁を切り裂いた。

 エルナードがびっくりし過ぎたのか、半眼になっていた。

 アリスティアはなんだか楽しくなってきた。


氷の投擲槍(ハスタム・グラチェイ)


 氷でできた槍は、練習用の的に全部突き刺さった。


「上級魔術だ……」


 宮廷魔術師筆頭補佐は、ぽかんとして呟く。


保存庫(ブクスム・レポーノ)


 この魔術は亜空間を区切った保存空間だ。以前作ったものの出入り口を出しただけだが、宮廷魔術師筆頭補佐は、時空魔術だと呆然として呟いた。だが、アリスティアが中から、以前に公爵家の料理長に頼んで作って保存したシャーベットを出したら更に驚いていた。


「物の状態保存が出来るのは特級魔術なのに……」


 宮廷魔術師筆頭補佐は、またしても呆然と呟く。


「そうなんですの? 便利ですので使っていますの」

「特級魔術を、便利だからって軽々と扱われても……」

「でも食べ物を保存できるなら、万が一の場合でも生き延びられますでしょう?」

「バークランド公爵令嬢は、一体何の万が一を考えておいでなのです⁉」

「戦争とか、魔物のスタンピードとか? サバイバルにも対応できますわ!」

「サバイバルなど有り得ません! 魔物への対応は、軍と魔術師団の仕事です!」


 なんだか別の意味で興奮しだした宮廷魔術師筆頭補佐を放置し、アリスティアは次の魔術を発動させた。


光の(スクートゥム・)(ルミニス)


 光で出来た物理的な盾である。

 アリスティアは宮廷魔術師筆頭補佐に、最高の攻撃魔術を使って貰った。

 彼が発動したのは上級魔術であった。


「其は堅き石、束の間の槍、短き時を飛び(うつつ)に表れ、大いなる空より出でし雨。今や破壊の時来たれり──石の雨(ラピス・ア・プルビア)


(あれ? 詠唱してる? あれが普通なのね。

 でも、上級魔術だという石の雨を受けても、光の盾はびくともしなかったわ! むしろ、コンコンといい音を出して弾いていたわね!)


 雨、と詠唱で唱えていたので、アリスティアは多いかな、と思いつつ光の盾を一〇枚に増やして周囲に隙間なく展開したのだが、石の雨はそこまで多くはなかった。

 そんなアリスティアの魔術を見て、宮廷魔術師筆頭補佐が、泣きそうな顔をしていた。

「わ、私とて次期宮廷魔術師筆頭と言われてるのに、魔力量だって今の魔術師団の中でも一番多いのに……」

 宮廷魔術師筆頭補佐が涙目で呟くのがアリスティアの耳に聞こえてきた。

「それなのに、こんな(いとけな)い幼女が私より魔術の才能があるなんて……」

 横目で見ると、大の男が涙目でブツブツと呟いており、それがアリスティアには少し不気味に映った。

 だが、アリスティアはそんな彼に対して残酷な現実を突きつける。


闇の(ダークネス)(・レイン)


 闇属性、広範囲の状態異常を起こす雨である。


「暗闇・麻痺・幻覚を引き起こしますわ」


 どんな魔術かと訝しむ周囲にアリスティアが説明したのだが、普通は一種類だと引き攣った顔で返された。


「状態異常を掛けるなら纏めてかけた方が魔力消費が少なくて効率的でしょう?」


 彼女がそう答えたらドン引きされた。なぜなのだろうか、とアリスティアは疑問に思う。効率的な方がいいに決まっている。

 内心でそんな事を思いながら、アリスティアは「次を見せてあげた方がいいですわね」と呟いた。


重力(グラヴィタス)障壁(・オービチェイ)


 重力障壁は、使い方によっては相手は死ぬ。重力なのだから際限なく加重すれば圧し潰される。


「重力障壁は、特級魔術だぞ……なぜ幼女が使える……」


 もはや宮廷魔術師筆頭補佐の顔色はかなり悪い。

 

「盾的使い方もありますけど、頭上から軍団の上に落として潰しますの」


 アリスティアがそう言うと、筆頭補佐は真っ青を通り越して土気色の顔色になった。


「便利でしょ?」


 首をコテンと傾げて言うアリスティアに、「ちょっと待っていて欲しい」と言うなり、宮廷魔術師筆頭補佐は何処かへ行ったかと思ったら、数分後に皇太子とクリストファーと宮廷魔術師筆頭を連れて現れた。

 そして、


「もう一度、順番に魔術を発動してくれ」


と真面目な、でも泣きそうな顔でアリスティアに頼んで来た。そんな顔でお願いされると断われないし、むしろ魔術行使が楽しいから断るつもりもない。

 なので、アリスティアは「よろしいですわよ」と了承して発動したのだが、それを見た宮廷魔術師筆頭と皇太子は驚愕した。

 クリストファーとエルナードは、最愛の妹が使う魔術に驚愕はしたのだが、何処かで納得もしていた。魔力量が皇太子よりも遥かに多いと診断された妹なのだ。何処で習ったのかは知らないが、魔術を使える様になったら天才的になると言われていたそのままの姿なのだから。だとしたら、双子がいつもと同じ様に可愛がる事で、妹が置かれる立場の重圧から解放される様にすべきだろう。

 双子は一瞬でその結論まで辿り着き、互いに目を合わせて頷きあった。

 アリスティアは驚愕している皇太子と宮廷魔術師筆頭を見つつ、次の魔術の発動をする。


空中浮遊アンチ・グラヴィティ・フローティング


 反重力浮遊、つまりは空中浮遊だ。 

 アリスティアが空中を歩いたら、風の精霊王エアリエル以外全員が驚いた。

 これは特級以上の魔術になるらしく、しかも誰も見た事がないから、彼女のオリジナル魔術になるという。


「あ。これも出来るかな? 広範囲隕石落としステラリット・メテオリテ


 隕石落とし。広範囲殲滅魔術である。


「愛し子アリスティア! それはちょっと待とうか!」


 顔を蒼くしたエアリエルにアリスティアは止められた。何故?という顔を向けると。


「流石にそれは僕一人の結界では受け止めきれないからね。多分、水・火・土・風の四大精霊王の力を合わせた位相結界じゃなきゃ無理だよ」


 エアリエルがそう言うと、皇太子も宮廷魔術師筆頭も筆頭補佐も愕然としていた。

 風の精霊王エアリエルだけの結界では無理なのか、と考え込み、閃いた。


「それなら海に落とせば被害は出ませんかしら?」


 そうアリスティアが言ったら、エアリエルは笑っていたが、皇太子以下は半眼になっていた。


「ティア、そなたの魔術は戦略的過ぎる」


 そんな事を皇太子はアリスティアにため息を吐きつつ言う。


(そこまで凄い事なのかしら? 今使える最高の魔術を使えって言われたから使ったのだけど)


「私はまだ魔法も魔術も習った事がなくて、魔術書を読んだだけですわ」


 正直にアリスティアが告白したら、皇太子も宮廷魔術師筆頭も筆頭補佐も撃沈した。

 そして、アリスティアの魔術の勉強は、オリジナルが作れるから魔術の直接的な学習よりも、魔力消費の増減と緻密な制御を習う事になった。


「ティア、余り人間をやめてくれるな」


 そんな事を皇太子に言われたのだが。


(失礼な。私は人間をやめた覚えがないのに)


 アリスティアは不満そうな顔をした。


「バークランド公爵令嬢、普通は詠唱破棄など出来ないのですよ」


 宮廷魔術師筆頭に言われたのだが。


「でもイメージ出来たら、魔術は詠唱破棄できますわよ?」


と言ったら、宮廷魔術師筆頭と筆頭補佐から「そこまで明確なイメージは普通は持てないのだ」と返された。


「想像力が低いのね」


と言ったら、なぜか宮廷魔術師筆頭も宮廷魔術師筆頭補佐もついに泣いた。

 アリスティアは吃驚である。いい大人なのに、と内心で思いつつ、


「魔術も魔法も、実技は楽しいからまたやりたいですわ!」


 そう言ったら、宮廷魔術師筆頭が、


「海辺で宮廷魔術師団を前に講師をして欲しい」


 とアリスティアに頼んで来た。

 皇太子は渋っていたが、広範囲隕石落としステラリット・メテオリテを撃ちたいからやりたいとアリスティアがお願いすると、諦めた顔で了承された。


 「ルーク兄様、ごめんなさい?」とアリスティアが執務室に戻ってから皇太子に言ったら、困ったような嬉しいような、そんな複雑な顔をしていた。


 

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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